第20話 エピローグ

 オリンピックは終わったけれど残暑は厳しい。

俺と優美ちゃんは、例の施設で大会用に作成したファイルを整理している。

「先輩、私たち優勝しましたよね?なんだか夢見たいです」

「そうだね。シナリオも機器の操作も全部うまくいったね」

「副賞の青い石がはめ込まれた小さな機械、何でしょう?この石は宝石でもないようだし?何か知ってますか?」

「本選で使用した機材の部品らしいよ」

「私がもらっていいですか?」

「どうぞご自由に」

この装置が遠い未来に、再び使用されることを今は誰も知らない。


キーの音だけが静かな部屋に響いている。


「ところで全然関係ないですけど、先輩の忠告通り、彼氏と別れちゃいました。

引き止めもしないで〝後悔するぞ〟だって…どこまで上から目線なんだか」

「そうなの」

「ん?反応薄いですね」

「別に…」

「…」

優美ちゃんが背後から覗き込んで、笑いながら話しかける。

「先輩、さっきからやたらと間違えてますけど?」

「ゴメン!」

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久遠の彼方からの操演 柊 悠里 @dica_onima

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