落とし物を探して
平中なごん
一
昨夜はだいぶ酒を飲んでしまったようだ……いや、酒に飲まれてしまったと言った方が正しいのかもしれない。
仲間内と三次会に行ったところまでは憶えているのだが、そこから朝起きるまでの記憶がごっそりと抜け落ちている……どうやってこのアパートに帰って来たのかすら憶えていないくらいだ。
幸い一人暮らしなので家族に迷惑をかけるようなことはなかったが、反面、消失した記憶を補完してくれる人間がいないのもまた困りものだ。
しかも、今回の酒での失敗は、その記憶の補完のできないことが僕を大いに困らせることとなった。
今朝、ふと目が覚め、朦朧とした意識のまま顔でも洗おうかと洗面所へ立った時だ。
……え? あれ!? な、ない! 嘘だろ!?
僕はそこで、大切な
どうやら泥酔している間にどこかへ落として来てしまったらしい……。
困ったな……どうしよう……。
ひどく動揺し、困惑する僕であったが、どうするも何も探し出すしかない……。
それがないとひどく不自由で、目も耳も利かないし、日常生活にも支障をきたしてしまうのだ。
その不自由な状態で探しに行くのもまた一苦労なのであるが、こうなってはそんなワガママも言ってはいられないであろう。
僕はパーカを羽織るとフードを目深にかぶり、ネックウォーマーやらマフラーやらサングラスやらマスクやらでこの見た目をなんとかして、二日酔いの気怠い身体に鞭打って探しに出かけた。
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