第4話 Merry Xmas_わて子.ニア.りゅう

わて子はとある病院の看護師である。

シングルマザーで生きていける昼職といえば正看護師。夜勤の預かりもしてくれるこの仕事はなかなか体力と神経がすり減る仕事だ。


「あいせんせい、クリスマスも年末年始もやすめないって信じられなくないですかあああああ?シンママなのにぃ!鈴木さんとかずるくないですか!」

わて子が今日もぐちぐちと文句を言う相手はこの病院でただひとり。


「また?婦長に嫌われてるのね」

カタカタカタカタとパソコンの音をたてながらつまらなそうに聞くその美人の姿は女医というより女優のようなオーラを放っていた。


「はい。ごちゃごちゃ言ってないで、行くわよ。」

「はぁーい」


クリスマスが終わり年が今年もあけた。

「あーあクリスマスも子供に渡せず年末も仕事。年始も仕事。子供との時間欲しいです...」


「仕方ないわ。こんな時代だもの。」


「そうですねぇ...でもあきときくん心臓の手術成功して。まさか幼馴染のかりんちゃんが...」


「...いくわよ」


あいとわて子は黙り込んで病室をまわる。


この病院では24時間シングルマザーのために子供を預かってくれる施設があった。


現代では流行病が広がり他の患者も影響を受けていた。感染拡大にともない、わて子はなるべく子供を安全な施設へ預けていた。看護師という立場柄、死に出くわすことは多々あるが流行病の命に関わる感染症となると障害児で言葉が通じない息子りゅうはマスクもできない為、用心をしてのことだ。


そんな中、1人の命が亡くなり、また1人の命が救われる。


毎日そんな日々の連続だった。


仲良くしていた患者さんが亡くなることは辛い。

この仕事は死に慣れるため、感情移入は許されない。


そういう意味ではあいは医師として完璧な人間であった。いつもどこか謎めいた変わった人だったがわて子の愚痴を聞いてくれる数少ない大切な人であった。


最近は仕事が終わるとコンビニにより

一直線に家へと帰宅する。


今日、この日もそんな日だった。

いつもと変わらない日常の中。

帰路に急ぐと、草むらで揺れる影がいた。


「なっなに...?!怖っ...幽霊?」

とつい独り言を吐く。


「にゃあにゃあ...」


草むらからこちらに向かって小さな声で泣く声が聞こえた。


「猫?にゃあ...おいで...怖くないよ?」


猫はなかなかでてこない。


まぁ無理か...と思いながらその場をあとにしようと歩き出す。


「にゃあにゃぁ...」


気になる...気になる...


わて子は悩んだ末に「猫ちゃん?でておいで」

やはり猫はでてこなかった。

やっぱりダメか。と思いながらわて子は家へとあるきだす。


自宅に到着して家の鍵をあける。

さぁご飯作ってお風呂入って寝よう。

明日も仕事...と思いながらコンビニ袋をあけお弁当をだした時、小さな黒い何かがいきなりお弁当の上に飛び乗る。

「ぎゃああああああああああ!」

わて子はひっくり返るとその黒い物体はびっくりしたかのようにTVの下へ逃げ込んだ。


「ねねねねねねずみ?」

わて子はゴキブリ退治スプレーを片手に急いでリビングへ戻るとそこにはお弁当をガリガリする子猫が1匹。お互いに目が合う。


「は?」

「にゃあ」子猫はお弁当を開けろと言わんばかりに弁当の上でガリガリと音をたててアピールした。


「あれ?さっきの猫ちゃん?お家いつはいったの?お腹空いてるの?」

「にゃあ」人間の話がわかっているというように子猫はアピールした。


どうしよう...猫..なにあげるの?とわて子はこのお弁当をあげていいのか悩んだ末に女医でありながら猫が好きなあいに電話をしていた。


プルルル

「はい。」あいが電話にでた。

「あーあいせんせい家に帰ったら子猫がいてですねそのあのお弁当の上にお腹がですね空いてるようでです」

「は?要点。」

「あっ、すいません。子猫がお腹空いてます。家にいます。どこから入ったか不明。助けてください。」

「...仕事がちょうど終わるので20分後に行きます。水道水のみ与えて」

ガチャ。と一方通行に切られたその電話。


きっかり20分後にあいは訪れた。

「猫じゃらし。猫砂。猫トイレ。猫フード。はい。」尋常じゃない荷物をもってあいがずかずかと家に入り各場所に物を設置して、猫を育てる本。よみなさい。じゃあ、お邪魔しました」

嵐のようにきてさっと帰ろうとするあいをわて子は急いで引き止める。

「まってええええええええ!!!!ここペット禁止いいいいいい!助けてええええええくださいいいどうしたらぁああああああ仕事中は?どうしたらあああああ」

「...はぁ...うちに来なさい。今日からうちが家。身支度して」

「ええええええ!いやいや息子帰ってきたらどうするんですか!!!」

「みんなで住めばいい。早くして。」

鋭いその早くしろのオーラに負けてわて子はとりあえず軽いみじたくをしてあいの家へと向かう。


つづく、

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Merry Xmas_十色の幸せ_ わて子 @ayanier73

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