最終話 親愛なるパパへ
親愛なるパパへ
ホーリー王国に留学してから、そろそろ半年が過ぎます。
これまでたくさんお手紙を書きましたけれど、パパはそんなにたくさんお返事をくれなくて大丈夫です。
なんで週に二通も三通も返してくるのかしら。
パパは、娘離れするべきだと思います!
あ、そう書いたら、ママがそれは言いすぎだって。
パパが泣いちゃうっていうからやめます。
ゴメンね、パパ。
最近のことを書きます。
ショコラは、ホーリー王国で色々勉強しています。
歴史とか、数学とか、文学とか。
この間、数学の試験で満点を取りました!
ショコラはとっても優秀だって先生が褒めてくれます。
それから、魔法の勉強もしています。
こっちは、ボップさんやチリーノ兄さんほどすごい人がいないので、ショコラが教えたりすることもあるくらいです。
魔法といえば、アドリア姉さんやチロルちゃんはどれだけ上手くなりましたか?
今度会うのが楽しみです!
パパからのお手紙だと、キルシュが何をしたか、どれだけ大きくなったのかが毎回書かれてて、会ってないのに姿が目に見えるようです。
でも、会いたいなー。
キルシュはショコラお姉さんを恋しがって、泣いてたりしないですか?
ママを恋しがったりしてないですか?
それとも、パパに似て変わり者なのかな?
会いたいなあ。
ここまで書いて、私はふうっとため息をつきました。
書きたいことがいっぱいある。
あり過ぎて、整理できないなあ。
私はパパみたいに、いっぱい手紙は出さないって決めている。
一ヶ月に一通。
だから、ちゃんと書くことを考えて、しっかり選んで書くんだ。
でも、難しい。
あれもこれも、全部書きたいなあ。
「あら、ショコラ。今日もお手紙はできあがらないの?」
「ママ! 聞いて聞いて。パパったら、キルシュがパパの真似して、『ふははははー』って笑ってるって書いてくるの! そんなの見たいに決まってるじゃないのね!」
「ふふふ、そうね。でもキルシュはママが好きだから、パパはきっと苦労してるんじゃないかな。だから、パパ流のやり方でキルシュを楽しませてるのかも」
「そうかなあ……。あ、そうだママ! あのね、昨日ね、ゼニゲーバ王国から留学生が来ててね? 年下の子なんだけど、私に『ボクチンのつまになれ!』とか言ってくるの。えーって思っちゃった」
「……その喋り方、聞いたことがある」
「ぷくぷくしたお子ちゃまだし、なんか偉そうでめんどそうだなーって。私、『お断りよ! 私より強くない人はだめ!』って言ったの。そしたら」
「そうしたら?」
「泣いちゃった」
「あらら」
笑うママ。
「だってそうでしょー。私、パパとかボップさんとか、チロルちゃんのパパとか、ちゃんとした人をいっぱい見てるもん。ゼニゲーバ王国って大きいとこでしょ? でもそれで偉そうにしてるのって、なんかヤなんだよね!」
「そうだねえ。ショコラは、チリーノさんみたいに頑張ってすごい人になる男の子の方が好きだもんね」
「うん! ……じゃ、じゃないよー! なにゆってるのママー!!」
私、慌てて立ち上がり、ママの肩をポカポカ叩いた。
私のパンチって、石壁に穴を開けたりするんだけど、ママには全然通用しない。
なので安心して甘えられるのだ。
「うふふ、ショコラはチリーノさんが大好きだもんねー」
「ちーがーうーよー!!」
私は叫んだ。
多分、顔が真っ赤になってると思う。
「そうであるぞ!!」
そしたら、すっごく聞き覚えがある声がした。
えっ、えーっ!?
「パパは許さぬぞ!! まだ、まだショコラにははやーい!!」
「パパ!?」
いつの間にか、家の入口にパパが立っていて、すっごく真面目な顔をしてるの。
パパの上にはキルシュが肩車されてて、私とママにぶんぶん手を振っている。
「ショコラ、パパやキルシュに会いたいって手紙に書かなかった?」
「……書いた」
「だから来たんだね、二人とも」
「えー。だって、お手紙だよ? まだ出してないのに!」
「お手紙に書いたら本気にしちゃう人たちだから。さあ、ホーリー王国が賑やかになるぞお」
ママったら、困った困った、みたいに言いながらも笑顔なんだもん。
パパに会えるのが嬉しいのかな?
キルシュとも久しぶりだもんね。
「ショコラー! パパは、パパはー!」
あーあ、仕方ないなあ。
私はママの後を追う。
パパったら、本当に世話が焼けるんだから。
まるで、おっきな赤ちゃんみたい。
最強魔王のドラゴン赤ちゃん育児戦記 ~おわり~
最強魔王のドラゴン赤ちゃん育児戦記 あけちともあき @nyankoteacher7
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