30話　青空ひなたのまったり雑談配信 - コミュ障ぼっちなわたしが、イマジナリーフレンドと一緒に最高のVTuberになるお話。（円谷忍）

前のエピソード――29話　夕陽と陽向

「こんばんわんこ！　みんなの心の青空になりたい青空ひなたです。今日は久しぶりにまったり雑談していこうと思います。なんかマネージャーさんから、わたしがコラボ配信の度に問題を起こすから、頼むからたまには一人で大人しく雑談でもしてくれって言われちゃった。ちょうど、みんなに話したい事がいっぱい貯まってたから、今日はたくさんお話しするね」

:こんばんわんこ！

:疫病神扱いされてて草

:マネさん心臓もたなかったんだろうな

:確かにひなたのコラボが無事に済んだ試しがない。

:毎回、伝説を作ってるよな

:つかさチャレンジの生みの親

:雑談助かる

:誕生記念配信がずっとトラウマ……

:ゆうちゃんいなくなったのは辛すぎた

:初配信が一番好き

:コラボ配信は何度も見返してる

:切り抜きだけじゃなくて全部見てる

「……なんかごめんね。みんなにもたくさん心配かけちゃったと思う。でも、今日は普通の雑談だから、大丈夫だよ……たぶんね。まず、なんの話からしようかな…………あ、夏休み明けにね、久しぶりに学校に行ったんだけど、その時ルカちゃんからもらったコンタクトレンズを初めて試してみたの。新学期だから気分も変えてみたくて。コンタクトの付け方もルカちゃんが教えてくれたの。眼鏡がないのすっごく新鮮だったよ。ルカちゃんが髪方もヘアピンを使って整えてくれてね、鏡見て自分でもびっくりしたよ、眼鏡の時と全然印象が違うの！　ちょっとゆうちゃんにも似てたかな……それでね、一緒に学校に行ったんだけど、教室に入ったら、なんかクラスメイトの人たちに転校生だと勘違いされてね、もう大勢に囲まれて質問責めになったんだよ。男子からも女子からもrain教えてって言われちゃって、でもrainやったことなかったから、困っちゃったよ。それに急に人に囲まれちゃったから、コミュ障の発作が起きちゃってね。ルカちゃんが助けてくれなかったら、気絶しちゃってたと思う。……えっと、それでね、教室から抜け出した時にコンタクトが外れちゃったから、また眼鏡を掛けて教室戻ったら、誰もわたしに見向きもしなくなっててびっくりしたよ。そんなに見た目違うのかな？　それからは、ルカちゃんから学校ではコンタクト絶対禁止って言われちゃって……えっとね、しばらく学校で幻の転校生の噂が流れたんだよ」

:ひなた、rainやってないんだ……

:あっ（察し）

:眼鏡外したら美人だったんだろうな

:クラスメイトが羨ましい

:いや、美人は眼鏡してても可愛いだろ

:てかルカと同じ学校なの？

:二人は王立フロレンティア学園に通っているって設定

:ルカはお姫様なの隠して生活してるんだよな

:そんで初めて心を開いたのがひなたらしい

:つかさは違う学校なの？

「あ、そうだよ。ルカちゃんとは同じ学校なの。フロレンティア学園だっけ？　そう、マネージャーさんがそんな設定だって言ってたよ。残念だけどつかさちゃんは別の学校なの。女子校なんだって。すっごいお嬢様学校で、校則が厳しいって言ってた。携帯とかゲームを持ち込んだら没収されちゃうらしいの、だからつかさちゃんいつもダミーのゲーム機を持っていってるんだって。それとね、その学校面白い制度があってね、姉妹制度って言うんだけど、上級生が下級生のお姉さんになって面倒をみてあげるんだって。血が繋がってないけど、ちゃんとお姉様って呼ばないといけないらしいの。だからねつかさちゃん学校ではお姉さんがいるんだよ、ちょっと羨ましいなあって思っちゃった……だけどつかさちゃん、僕の先輩はポンコツだからいつも揶揄って遊んでるって言ってた。つかさちゃんゲームとかでも容赦ないからお姉さんがちょっと心配なの……はっ、でもわたしも後輩できたらいじめられるかもしれない。そうそう、これからテレライブ四期生の募集が始まるみたい。わたしももうすぐ先輩になるんだよ！　えっへん」

:つかさちゃんお嬢様学校なのか

:お姉様にも夜の忍法使ってるんだろうな

:後輩によるひな虐が楽しみ

:四期生か、もう募集始まるのか

:テレライブ勢いすごいからな

:ひなたが先輩とか信じられん

:俺オーディション応募するわ

「そうだ！　つかさちゃんで思い出したんだけど、活動休止してる時にルカちゃんがわたしのために曲を作ってくれた話は前にしたよね。あの曲をオルガンでも弾いてくれてね、とっても良い曲なんだけど、気付いたことがるの。あの曲ね、一番の歌詞はゆうちゃんのことで、二番はわたしのことを歌詞にしてくれたんだ。でも、よく聞いてみると曲の長さと歌詞の分量が合ってないの。歌詞から作ったって言ってたから、曲があるってことは、たぶんルカちゃん三番まで歌詞を作ってたんじゃないかなって思う。でも、そのことを訊いても、ルカちゃん全然教えてくれないんだ。きっとね、三番はつかさちゃんのことを歌詞にしたんじゃないかって気がするの。つかさちゃんも三期生の仲間だから、ルカちゃんはきっとつかさちゃんへの気持ちも歌ってたと思う」

:幻の三番か

:あの曲、頼んでも歌ってくれないんだよな

:恥ずかしがってるルカが可愛い

:ルカの自作曲気になる

:てぇてぇ

:でもルカとつかさは犬猿の仲じゃね？

:つかさの歌詞は書かないだろ

:不仲説あるよな

「あのね、二人は配信中も時々喧嘩してるけど、本当はすっごく仲良しさんなんだよ！　これはゆうちゃんから聞いたんだけどね、この前二人でお出掛けしてたんだって。わたしには内緒でだよ。一緒に買い物して、楽しそうにお話してたってゆうちゃん言ってた。それにね、二人がディスコでお話ししてるのも隣の部屋からよく聞こえるよ。ルカちゃん、つかさちゃんと通話した後はいつもご機嫌なの。だから三期生の不仲説はね、もうなくなったと思うな」

蔭山つかさ:ひなた、余計な事言うと後でお仕置きだからね

姫崎ルカ:ひなた、おやつのどら焼きもう買ってこないわよ

:二人とも怒ってて草

:隠し事がバレて焦ってんだろうな

:実際三期生は仲良しだから

:四人で一つって感じ

:結束強いよな

:先輩たちが入る隙ないよな

:ミロクも三期生になかなか混ざれなくて悔しがってた

「あ、でも三期生だけじゃなくてね、一期生、二期生の先輩とか、これからできる四期生の後輩とも仲良くしたいって思ってるよ。————そうだ、今日一番したかった話をまだしてなかったよ。その四期生のことなんだけどね。わたしが活動休止していた時、マネージャーさんが一枚のファンレターを持ってきてくれたの。リスナーさんからお手紙を貰うとね、すっごく嬉しくて元気が出るんだけど、その手紙は今までで一番嬉しかったな。……みんな覚えてるかな？　わたしの初配信の時、悲しいコメントを書いてた人がいたよね。その子からの手紙だったの。手紙をくれた彼女はちょうどその時ね、とても辛いことがあったらしくて、それでつい魔がさしてあんなコメントを書き込んじゃったんだって。手紙でもそのことを謝ってくれたんだ。わたし、別にあのコメントに怒ってたわけじゃないよ。ただずっとその人のことが気掛かりだったから、手紙が来て本当に安心したんだ。彼女ね、それからわたしの配信をずっと見てくれているらしいの。VTuberの中でわたしが一番好きだって書いてくれた。今日の配信も観てくれてるのかな？　ファンになってくれたのはもちろんだけど、彼女がまだ生きていてくれたことが何より嬉しかった。別にわたしがいなくても、結果は変わらなかったと思うけど、それでも良かったなって思うよ。彼女ね、わたしが活動休止するって聞いて、いてもたってもいられなくなってお手紙を書いてくれたらしいの。ごめんね、今度はわたしが心配させちゃったよね。お手紙をくれてありがとう。あなたの手紙のおかげで、VTuberを続ける勇気が湧いてきたの。みんなも、いつもたくさんコメントしてくれて本当にありがとう。みんなのおかげでわたしはわたしでいられたと思うから…………あ、手紙に書いてあったのはそれだけじゃないの！　彼女ね、次のテレライブのオーディションに応募するんだって！　だからもしかしたら、彼女がわたしの後輩になるかもしれないの！　わたしみたいな最高のVTuberになりたいんだって……えへへ、そこまで言われるとさすがに照れちゃうよね。…………わたし、まだ全然コミュ障で、頼りなくて、ダメダメだけど、この先VTuberの先輩や後輩と仲良くなって、リスナーさんたちともたくさん友達になれれば、きっと本当に最高のVTuberにだってなれるはずだよね？」

:さあね、それはあんたのこれからの頑張り次第じゃないかな。

「……きっと大丈夫、だってわたしには最高の親友が付いてるんだもん！」

「夕陽と陽向」おわり