リング・オブ・アップル 完全版

渋谷かな

第1話 アップル1

 開成高校の偉い開成賢者様が言いました。

「魔王が現れたのなら、勇者様を呼び出せばいいのでは?」

 荒川区役所を魔王の手下の荒川区長に乗っ取られ、荒川区民は東京メトロの千住検車区に逃げ隠れしていました。

「いでよ! 勇者様!」

 魔法陣を書いて元荒川区長と開成賢者は勇者を召喚します。

「私、リンゴ大好きアップル! これでも救世主なの! よろしくね!」

 勇者アップルが現れた。


「おお! よく来た! 勇者アップルよ!」

 王様の代わりは荒川区長。

「あなた誰?」

「私は荒川区長だ。」

「私は開成賢者。」

 今回の荒川区の主要な人物達である。

「勇者アップルよ! 魔王に支配された23区を救ってくれ!」

「はい。分かりました。がんばります。でも私には何の力もありません。」

「そこは任せて下さい。」

 開成賢者がしゃしゃり出る。

「この世界では装備するリングによって、勇者のレベルが上がります。」

「リングで!? スゴイ!」

 この23区はリングで強さが変わる、リング方式。

「さあ、この3つの中から好きなリングを選んでくれたまえ。」

 剣士見習いのリング、魔法使い見習いのリング、スライムのリング。

「う~ん。どれも選びたくないな。ダサいから。」 

「ガーン!? ショック・・・・・・。」

 落ち込む開成賢者。

「では、勇者アップルよ。どうやって魔王と戦うのだ?」

「う~ん。どうしよう?」

 アップルたちは困ってしまいました。


 その日の夜。

「あ、流れ星。どうか、かっこいいリングが手に入りますように。かっこいいリングが欲しい。かっこいいリングを寄こせ。」

 アップルは星に長い事を3回しました。

「あ、かっこいいリング!」

 夜空からキラキラ金色に光リングが舞い降りてきました。

「私のための指輪だ!」

 アップルは星のリングを手に入れました。


 注意書き! 良い子は真面目にチュートリアル通りゲームを楽しんでね。


「いいでしょう?」

 アップルは星のリングを見せびらかす。

「どこでそんなものを!?」

「いいでしょ?」

「ちゃんと設定通り遊んでくれ!?」

 元荒川区長と開成賢者は喜んでいる様な、悔しがっている様な。

「おじさんたちじゃ絵面が汚いから、マスコットキャラクターみたいのはいないの?」

「ガーン!? 絵面が汚い・・・・・・。」

「おじさんで悪かったな!?」

 落ち込むおじさんたち。

「ガオー!」

 そこにアザラシが現れた。

「アザラシのアラちゃんをお供に授けよう!」

「無理。だって荒川区に荒川は流れてないもの。」

「ガーン!?」

 事実。荒川区に流れているのは墨田川。

「犬か猫ならいいのか?」

「いいえ! 私が欲しいのは・・・・・・星の精霊!」

「星の精霊!?」

 一同はアップルの発言に驚く。

「だって、星のリングの使い方が分からないんだもの。」

 時を戻そう。


 昨夜の夜。

「お星さまに願い事をした純粋なお嬢様には星のリングを与えましょう。」

「あなたは?」

「私は星の精霊キラキラです。」

 星のリングと共に星の精霊が現れた。

「あなたは星のリングに選ばれたのです。」

「さすが私! だてに救世主をやってないわ!」

 アップルは運だけは良かった。


 再びお城。

「救世主アップル参上!」

「初めまして! 星の精霊キラキラちゃんです!」

 時を戻したら二人で登場した。

「おお! よくぞ来た! 救世主アップルよ!」

 元荒川区長は笑顔でテイク2に応じる。

「じゃあ、そういうことで。」

「こらー! 元区長を無視するな!」

 アップルは区長を無視して去ろうと思った。

「要らんのか? 最初の軍資金1万円。」

「何!? 1万円!?」

 立ち止まりお金に食いつくアップル。

「王様! 大臣! 失礼しました! 私は荒川王様の忠実な僕です。私の救世主としての活躍は王様と大臣のご指導の賜物です! きっと区民も王様を称えるでしょう!」

「尻尾の振り方が半端ない!? それでも救世主か!?」

 星の精霊も人間不信に陥りそうだった。

「やったー! 軍資金ゲットだぜー!」

 アップルは旅の準備を始めることにした。


「やって来ました! ララテラス南千住! いっぱいお買い物するんだ!」

 救世主アップルは軍資金を得て、冒険に出かけるための初期装備を買いに来た。

「大丈夫よ。あなたはお買い物しなくても。」

「え? どういうこと?」

 お買い物を止める星の精霊キラキラ。

「あなたは星のリングに選ばれし者。いざ戦闘となれば、星の剣、星の鎧、星の盾、星の兜と星のシリーズが、あなたを守ってくれるわ。」

 レアアイテム、星のリングのおかげである。

「ということで私の装備品を買いに行きましょう。」

「ええー!? そんな!? ガックシ・・・・・・。」

 肩を落とすアップル。


 1時間後。

「装備も整ったし、いざ! 冒険の旅へ!」

 アップルたちは冒険の旅に出る。

「でも、どこに行けばいいの?」

「荒川区役所は最後でしょ。とりあえずJR山手線の日暮里駅か、西日暮里駅にでもいってみようかしら。」

「一気に魔王のいる皇居まで行って倒しちゃおう!」

「おお!」

 アップルはやる気満々だった。


 日暮里駅。駅員と会話。

「すいません。現在、魔王がバリアを張っていて他の区に移動することができません。運航は荒川区内だけでお願い致します。」

 魔王がバリアを張っていて他の区に移動ができない。

「こうなったら魔王の手下の荒川区長を倒すしかないわね。待ってろ! 魔王の手下め!」

 アップルは魔王の手先の荒川区長を倒しに行くことにした。

「でも私、戦闘もしたことないけど、いきなり魔王の手下の現荒川区長を倒せるのかしら?」

 戦いが不安なアップル。

「大丈夫よ。なんたってあなたは星のリングに選ばれた救世主なんですから。アハッ!」

「そっか。私は救世主だもんね。私が荒川区を取り戻して見せる!」

「その調子よ。アップル。」

 星の精霊のおかげで不安がなくなった救世主ガール。

「いざ! 荒川区役所へ!」

 アップルはボスの元に進む。


「面白くない!」

 救世主アップルは何かに気がついた。

「どうしたの?」

 星の精霊キラキラが問う。

「私一人スーパーなヒロインがいても面白くない。やっぱり比較できるキャラクターがいないと。」

「ダメキャラね。それは物語が面白くなっていいわね。」

 時を戻そう。

「アップルは星のリングに選ばれた者なの。時間を戻せてもなんら問題はないわ。」

 星の流れが逆回転していく。


 荒川検車庫。

「いでよ! 救世主!」

 元荒川区長と開成賢者が魔法陣を光らせて救世主を召喚している。

「どうも! 救世主のアップルです! アハッ!」

 二度目なのでリハーサル済みのアップルが召喚された。

「ここはどこだ!? おまえたちは何者だ!?」

 もう一人、救世主が現れたが戸惑っている。

「おお! よく来た! 救世主たちよ!」

「はい。王様。早く軍資金くれ。」

「え・・・・・・。」

 アップルは物語の流れに精通している。

「こらー! 元荒川区長に失礼だぞ!」

「おまえみたいに学があっても役に立たなかったら意味がないんだよ。バーカ。」

「ガーン!? 開成の私がバカにされた!?」

 アップルの前に敵はない。

「ちょっッと待て!? だからここは何なんだ!?」

 もう一人はまだ自体が呑み込めていない。


「よく来た! 救世主! 二人。」

「あ、名前を省略された。」

「仕方がないだろう。救世主が二人なんだから。」

「しまった!? 救世主を二人にすると私の出番が減るのか!?」

 アップルは引き立て役を呼んだことを後悔した。

「分かった。分かった。改めて言い直してやろう。よく来た! 救世主! アップルとオレンジよ!」

「え!? おまえ名前がミカンなの? 私と果物被りじゃん。改名しろよ。」

「人に求めるな! 自分が改名しろ!」

 オレンジは真っ直ぐな性格だった。


「魔王と戦うためにリングを与えよう。この中から好きなのを選べ。」

 3つの指輪を出す王様。

「じゃあ、剣士見習いのリングを頂きます。」

 オレンジは剣士見習いのリングを手に入れた。

「ん? アップルは選ばないのか?」

「フッフッフッ。私は既に持っているのだよ。星のリングを。」

 キラっと星のリングを見せびらかすアップル。

「なんだ。安物のおもちゃの指輪か。」

「こらー! 安物とはなんだ! 星のリングは時間すら超えていけるスゴイ指輪なんだぞ! だから私はこのくだりは2回目なのだ!」

「そういうことか。だからおまえの行動は先をいっていたのか。どうりでおかしいと思った。」

 オレンジは謎が解けた。


「そういえば、キラキラがいないわね?」

 アップルは星の精霊キラキラを思い出した。

「私ならいるわよ! 私は星のリングと共にあるのよ!」

「なら星の指輪を壊したら、キラキラ、あなた死んじゃうのね。ニヤッ。」

「救世主が悪いことを考えるな!」

 星の精霊キラキラが現れた。

「なんなんだ!? こいつらは!?」

 オレンジは戸惑うしかなかった。

「開成賢者よ。我々が召喚したのは本当に救世主なのかのう?」

「はい。間違いありません。あれでも救世主です・・・・・・。」

 王様と賢者は救世主に震えた。


「さあ! 王様! 軍資金を寄こしなさい!」

「ええー!?」

「救世主様!? あなたは強盗ですか!?」

「何よ? 軍資金1万円くれる設定でしょ。」

 さすが2回目のアップル。

「残念! 今、救世主を始めた方は3万円開始キャンペーン中です!」

「なんですって!? やられた!? 2万円損した・・・・・・。」

「勝った! 私の勝利だ!」

「やりましたね! 王様!」

 王様と賢者は大いに喜んだ。


「いざ! 決戦の地! ララテラス南千住へ!」

「え? 初期装備を整えるだけじゃないの?」

「行ってみなさい。3万円なんてABCマートでナイキのスニーカーしか買えないから。その間に私たちはくら寿司でランチしてるから、後は別行動で。」

「つ、冷たい・・・・・・。」

 一人取り残されるオレンジ。


「気を取り直して買い物だ!」

 気合を入れる初心者救世主のオレンジ。

「まずは歩いても疲れないようにナイキの靴を1万円で購入!」

 オレンジは靴を手に入れた。

「次にユニクロでダウンジャケットとジーパンをゲットだぜ!」

 1万5千円のお買い物。

「はあ!? しまった!? 私は剣士見習いなのに剣がない!? 三菱重工は何処にあるんだ!?」

 自衛隊御用達である。

「ていうか、武器屋がないんだけど、どうすればいいんだ!?」

 ララテラス南千住に武器屋などない。

「仕方がないからQBハウスに行って髪型でもきれいにしておくか。身だしなみは大切だ。」

 こうして無駄遣いの限りを尽くしたオレンジはオシャレさんになった。


 そのころ、くら寿司では。

「あの! 注文した海鮮ラーメンがまだ来ないんですけど!」

「完全なクレーマーね。」

 救世主アップルの冒険はつづく。

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