第5話

どういうこと?どうしてここにアルダが。なんでワクチンを持っているの?


混乱していると、イヤホン越しにサニエルから指令が入った。


「僕の部屋に来てくれ」


バタバタと走ってくるサンタ一族の人たちの流れに逆らって、指示された通りにサニエルの部屋へ向かう。


「やあ、クルム。直接会うのは初めてだね。早く入って」


そう言ってサニエルはわたしを迎え入れた。


「きみのデジタルコンタクトレンズ越しで状況は把握したよ。まさか先客がいたとはね」


両目につけているデジタルコンタクトレンズを通して、わたしの視界はサニエルとユピテに共有されていた。


「…あの女の人、わたしの上司なの。アルダっていう世界郵便局本部のG地区長」


「…郵便局員…」


少し考え込むようにしていたサニエルがはっとしたように顔を上げた。


「そういうことか」


「何かわかったの?」


「ああ。俺たちはサンタ一族の一部の人間が企んで世界を掌握しようとしていると思い込んでいたが、そいつらを裏で動かしてたのは郵便局本部だったってことだ」


「サンタ一族が郵便局側に脅されていたってこと?」


「おそらくな。いつから癒着していたのかはわからないが、何かしらの弱みを握られていると考えるのが妥当だろう。世界がこんなになるずっと前から、サンタ一族の人間はみんな、世界中の子どもたちに幸せを届けるっている自分たちの仕事にプライドを持ってきたはずなんだ。僕も、ワクチンを隠し持つなんてサンタクロースの信条に反することを一族の人間がするんだろうかと違和感は何度も感じていた。堕ちるところまで堕ちてしまったと思っていたが、第三者に動かされていたと考えれば説明がつく。」


サニエルが服の上から手早く消音機能付き透明スーツを着てそう言った。


「アルダたちは一体何のためにそんなことを…」


「世界中の配達員とサンタ一族を取り込めれば、それこそ外の世界を一握できる。全世界を網羅する配達員と情報を所持しているとなれば、全世界を支配することだって難しくない。ワクチンが本部の手に渡るまでに取り戻さないと大変なことになる」


サニエルが顔を険しくする。


「わたし、そんな人たちのためにこれまで働いてきたのか…」


心に黒く大きな穴が空いた気分だ。信じたくないという気持ちを置き去りにして、これが現実なんだということは脳みそが冷酷にも理解していた。


「サンタ一族としては、人手不足で24日に子どもたちにプレゼントを配り切れなくなってしまう事態はなんとしても避けたかったはずだ。そこで郵便局本部は、郵便局員を派遣する代わりにワクチンの在り処を教えるよう迫ったというところなんだろう。サンタ一族が後継者不足で弱体化してきているこのタイミングを狙ったんだ。向こうが混乱に乗じてワクチンを奪ったのだから、僕らも反撃するなら相手の隙をつける今しかない。急ぐぞ」


その時、ユピテから指令が入った。


「こっちは準備できた。君たちは早くアルダの後を追ってくれ」


「了解」

「わかった!」


わたしとサニエルはそう答えて部屋を飛び出した。


*


「あっちだ!」


裏門に向かうアルダの背中を見つけたサニエルが指さした。赤い服のサンタ一族の人間に囲まれて歩いている。


「待って、アルダ!」


その背中に向かってわたしは叫んだ。透明スーツを脱ぎ捨てる。周りのサンタ一族の人間が振り返って目を見開く。


「誰だ?!」「侵入者だ!」


どよめく彼らには目もくれず、ゆっくり振り返ったアルダがわたしの顔を見つめた。


「クルム…どうしてここに」


わたしはアルダの目を睨んで手を差し出した。


「…アルダ、そのワクチン返して」


「それはできないわ。これ本部に持ち帰ることが今回のわたしの任務なのよ」


「…昇進のため?」


アルダはわたしの質問には答えず、そのまま歩き出そうとする。


「待ってよ!」


わたしはとっさに後ろからアルダの背中をつかんだ。


「わかってるでしょう?これがあれば世の中の人が100年前と同じように家から出て普通に生活できるんだよ。自分たちの権力とか私益を守るためだけに隠し続けるなんて、絶対に許されることじゃない。目を覚ましてよ!」


アルダの深い黒色の目に訴える。アルダはわたしを一瞥してすぐに目をそらして静かに言った。


「力の強いものが頂点に立つのは自然界の摂理よ。弱肉強食ってそういうことでしょう。弱いものは、強者が作り上げた世界で自分が弱者とも気が付かずに一生を終えていくの。この100年間で、戦争やテロは起きなかったじゃない。みんながみんな等しく不便で不都合な世の中なら、争いや問題は起きないの。」


「そんなの絶対おかしい。みんなの自由はどうなるの!」


わたしが叫ぶと、アルダは表情一つ変えずに言った。


「正しい人間が上に立っているおかげで、何も知らないまぬけで幸せな民衆たちは守られて生きていけるのよ」


曇りなき黒く澄んだ瞳。アルダにわたしの言葉は届いていない。


「…じゃあ民衆が歯向かってきたら?」


ふと隣でサニエルがそうアルダに聞いた。


「そんなばかなことあるわけないでしょう」


アルダが鼻で笑ったそのとき、耳をつんざくサイレンの音が屋敷中に鳴り響いた。


『緊急事態発生!緊急事態発生!民衆が屋敷の周りを包囲。警備班、直ちに出動せよ』


その放送を聞いてアルダとその周りのサンタ一族たちは窓際に駆け寄った。


数百もの人々が屋敷の周りを囲んでいた。数多の目がこちらを睨んでいる。その中にユニとキコもいた。


二人とも、来てくれたんだ。


キコやユニだけじゃない。わたしの配達先のお客さんたちがみんな集まってくれていた。目頭が熱くなる。


アルダたちにユピテとサニエルとわたしの3人だけで真っ向勝負をしても勝ち目はない。そんなことは端からわかっていた。


だから、わたしはこの1年間、仲間を作って信頼関係を深めることに尽力してきた。今日という日に、一緒に戦ってくれる仲間をつくるために。


とはいえ、正直不安だった。


ウイルスブロッカーを身に着ければウイルスに感染する危険性はなくなる。でも、いくらユピテの技術力の高さが本物とはいえ、今まで一歩も外へ出たことのない人がその言葉を信じることはとても難しかったはずだ。


外に出たら空気感染で死ぬかもしれない。そんな風に教わってきた彼らにとって、わたしたちの言葉を信じて危険な世界に飛びこむことはどれほど恐ろしかっただろう。


それでも、私たちを信じてそのはじめの一歩を踏み出してくれた。全人類の自由を取り戻すために。


そう、これは、自由を取り戻すための革命だ。


「なんで…あんたたち死ぬわよ!」


アルダが窓から彼らを見下ろして叫んだ。


「心配無用!」


群衆の中から、ユピテが現れて声高らかに言った。


「あれは元技術開発局長のユピテ殿!」「どうしてあんなところに」


サンタ一族サイドが再びどよめく。


「彼らは僕の開発したウイルスを無効化するウイルスブロッカーを所持している。これがある限り、彼らが感染することはない」


隣のユニが腰に巻き着けたウイルスブロッカーの装置を指さし、ユピテが声を張り上げた。


「ばかな…警護班、さっさとこいつらを捕らえて!」


アルダが命令した。彼女の指示を受け、警備班と思われる大柄な赤服の男たちがみんなを取り囲もうとする。だけど、この100年間、屋敷の警備なんてろくにやってきていないであろう彼らの動きは統制がとれていないと素人目に見てもわかった。


「アルダ。今の立場や権力を守りたいなら、あんまり乱暴なことは考えないほうが良いよ。」


わたしはアルダにそっと耳打ちした。


「今、わたしの視界はユピテの技術によって世界中にリアルタイムでシェアされてる。政府や企業のお偉いさんたちもくぎ付けになって見てるはずだよ。アルダがわたしたちに攻撃なんかしたら、彼らどう思うかな。」


「そんなまさか」


アルダが慌ててわたしの目を覆おうとするけど、地区ナンバーワンの飛行能力を持つわたしの反射神経を舐めないでほしい。彼女の手を簡単にかわして言ってやる。


「もう遅いよ。…まあ、ワクチンを隠してた郵便局本部の立場や権力なんてとっくにどこにもないと思うけどね」


アルダが顔をゆがめて歯噛みした。警備班の動きを制す。


「じゃあ、ワクチン渡してくれるよね」


そう言うと、アルダは黙ってワクチンを差し出した。


この先を生きていく中で、自分にとって有益となるのはどちらか。郵便局本部のトップからの指令と世界中からの視線を天秤にかけて、とっさに判断したんだろう。驚きの変わり身の早さだけど、さすがの判断力というのは認めざるを得ない。


50本ほどの小瓶の重みがどしりと腕に伝わる。ここに人類の未来が託されていると思うと、無意識に手のひらに力がこもる。


するとアルダは小さくこう言った。


「このままだとわたしたちだけが悪者みたいじゃない。ちゃんと説明させてくれなきゃ納得できないわ」


わたしの両目を睨みつけて彼女はつづけた。


「そもそも、百年前世界中を恐怖に陥れたウイルスの発端はサンタ一族だったのよ。クリスマスイブの日、ある一人のサンタクロースが偶然、運悪くウイルスを持ち込んでしまったの。そして、彼がプレゼントを届けた家の人々から全世界中にあっという間に感染が広がってしまった。サンタ一族の人間はサンタクロースが感染源になっているという事実を隠したがった。」


初めて聞く話だったのか、サンタ一族の取り巻きたちが驚いた様子を見せた。アルダは続けた。


「その事実に気づいたのが世界郵便局本部の人間だったの。郵便局本部は、事実を黙認する代わりに、世界を外と内で分断させ、外側の世界の管理に手を貸すように求めた。全世界に急激に広がるウイルスの感染拡大を食い止めるためには人とのつながりを隔てる必要があったため、サンタ一族はこの提案に乗った。一方で、この感染を根本的に食い止める責務があると考えたサンタ一族は、ワクチン開発局を立ち上げ、短期間でワクチンを作り上げた。彼らは早急にそのワクチンを全世界に配布すべきだと主張した。外の世界を管理することで力を強めたいと考えていた郵便局本部はこれに反対した。結局、サンタ一族はわたしたちにワクチンを決して譲ろうとしなかった。」


最後に彼女は目を伏せた。


「郵便局本部もサンタ一族もどちらが悪いなんてことはなくて、どちらにも反省しないといけない点があった。人類の未来のためを思っていたのはどちらも一緒よ。ただ目指す方向が違っただけなの。」


世界郵便局本部側の面子を完全にはつぶさず、サンタ一族およびわたしのコンタクトレンズの向こう側にいる人々に自分たちだけが極悪非道な人間なわけではないとアピールする。とっさのこの状況の中でも立ち回り方がうまい。


だけど、これ以上アルダの言い訳めいた戯言に耳を傾ける気はなかった。いくら偉くて賢い人が上に立って世界を平和に導いているっていっても、勝手に人々の自由を奪うなんてことが許されるわけない。


早くユピテにワクチンを渡さなきゃ。それで、世界中の人に届けられるように大量生産してもらおう。


ワクチンを胸にしっかり抱え、走りだそうとしたその時、足先に引っ掛かりを感じた。


え?


目の前に地面が迫ってきているのを見て、自分の体が前に倒れかけていると気づいた。とっさに片手で全身の体重を支えた。


次の瞬間、ガラスの割れるいやな音が響いた。


見ると、左手に抱えた小瓶のうち半分ほどが割れ、中身が床にこぼれ出ていた。


割れた小瓶の隣に黒いエナメルのパンプスがあった。


「あなたは昔から詰めが甘いのよ。こうしていれば、あなたの視界には割れたワクチンと床しか映らないでしょう。あなたが勝手に転んだように見えるわ」


頭上からアルダの声が降ってきた。彼女が手で私の頭を押さえつけている。


アルダが足をひっかけてわたしを転ばせたんだ。さっき観念したように見えていたのはパフォーマンスだったのか。


信じられない。怒りで頭に血が集まってきているのを感じる。


「クルム!大丈夫か」


駆け寄ってくるサニエルの足音と声が聞こえた。


「ワクチンが無くなれば、誰も郵便局本部には逆らえない。サンタ一族の人間にばれないように本部で破壊する予定だったけどまあいいわ。ワクチンを失ったサンタ一族なんて怖くないもの」


アルダが無事だった小瓶にハイヒールのかかとを乗せた。私の目の前で、ぱきりと音を立て、小瓶が割れた。


「…!」


信じられない。アルダがここまで自分本位な人間だったなんて。

悔しくて涙が出てきた。視界がぼやける。


これじゃ向こうの思うつぼだ。


唇をかみしめたその時、


「いい加減にしろ!!」


怒号が響いた。


頭の上に乗っていたアルダの手がびくりと動いた隙に顔をあげると、取り巻きのサンタ一族のうちの一人、長く白いひげを蓄えたおじいさんが青筋を立てていた。


「アルダ殿、もういい加減にしないか。わからんか、もうあなたたちの時代は終わったのじゃ」


白髭のおじいさんの言葉に合わせて残りの取り巻きたちがアルダを取り囲み、動きを制した。


「パウ長老…いまさら何よ、あんたたちだって同じじゃない!」


アルダが肩を震わせて叫び返した。


「無論、我らが犯した罪は消えん。我らサンタの人間は一族の誇りをかけてこの罪を償っていく所存じゃ。我らが責任を持って全世界の人々全員に必ずワクチンを届けることを約束する」


パウ長老と呼ばれたおじいさんはわたしの両目を見つめて世界にそう呼びかけた。


「そんなこと今さら言ってどうするのよ。世界が開いたらあんたたちの立場なんて一瞬で墜落するわよ」


アルダが息を切らして叫ぶその隙にサニエルが素早く残りの小瓶を回収した。


「まだわからんか。もはやそんな小さなものに縛られる時代ではなくなったのじゃよ。このお嬢さんや、外にいる大勢の人たちによって今、世界は再び扉を開こうとしている。100年間この場に凍り付いて変われなかった我らの代わりに、世界を変えてくれたのじゃ」


パウ長老がわたしに微笑みかけた。口元にくしゃくしゃのしわが集まる。


「今後目まぐるしく変化していく世界の濁流を前に、我らなぞただの無力な人間の集合体に過ぎぬ。それであれば、せめて罪滅ぼしをさせていただきたいというのが我らの願いじゃよ。そうじゃろう?」


パウ長老がそう呼びかけると、周りにいる赤い服のサンタ一族の人間たちは強くうなずいた。味方がいないことを悟ったアルダがその場に崩れ落ちた。


「みんな、急ぐのじゃ、サンタ一族をあげてワクチンの量産に取り組むぞ」


パウ長老の一言で、サンタ一族の人たちが慌ただしく動きだした。


「クルム」


小瓶を手にもったサニエルがわたしに声をかけた。


「君のおかげでサンタ一族がまだ芯までは腐ってなかったとわかった。これで僕も一族を憎まずにいられるよ。本当にありがとう」


サニエルがわたしに向かって頭を下げた。


「こちらこそありがとう。わたしもサニエルのおかげで、配達の仕事も悪くないなって思えるようになったし、たくさんのお客さんと仲良くなれたの。…あ、そうだ。」


わたしはポー王子のことを思い出して言った。


「去年のクリスマスイブ、ポー王子がサニエルにすごく会いたがってたって言ったでしょ。早くワクチン届けて、赤ちゃんの顔、ポー王子に見せに行ってあげなよ」


「はは、そうだね。会ったなかったこの2年できっとポーも大きくなってるんだろうな。その時はクルムも一緒に行こう。」


「うん」


「じゃあ、急いでワクチンを作るよ」


サニエルはそう言い残してほかのサンタ一族の人々と一緒に走り去っていった。


*


屋敷の外に出ると、キコとユニが駆け寄ってきた。


「クルム!ほんとにお疲れ様!」


「キコ、ユニ!来てくれてほんとにありがとう」


「外の世界ってこんなに寒いんだね…さっきから鼻水止まんないのよ」


両腕をさすりながらキコがそう言うと、吐いた息が白く舞い上がっていった。


「そうなの。冬の配達、ほんと死にそうなくらい寒いんだよ。上空はもっと寒くなるし。」


わたしが唇を尖らせると、


「キコが鼻水垂らしてるのって寒さだけじゃないよ。さっきここからクルムの雄姿見て感動して泣いてたんだもんね。」


とユニが言い、キコが「余計なこと言わなくていい!」とユニを小突いた。


「でも、クルムたち媒介者だけが配達員になる必要はもうなくなるんだもんね。わたしが外に出て荷物運んだっていいわけだもんね」


ユニがしみじみと噛みしめるように言った。


そうか。もう媒介者は特別でも、特殊でも、選ばれた者でも、外れくじを引いた者でもなくなるんだ。わたしも自分の好きに仕事を選べるようになるんだ。


「これからどうなってくかな」


「楽しみだね」


ユニとキコがそう言って笑った。


「てゆーか、生キコは想像の10倍きれいだった。何なのこのつるつるのお肌」


ユニがキコのほっぺたをつついた。


「ちょっと!冷たいじゃん」


二人がじゃれあうその先に、白い帽子のユピテを見つけた。奥さんと一緒だ。


「ユピテ」


わたしが声をかけると、ユピテはすぐに気づいた。


「クルム、ありがとう。本当に本当に、ありがとう」


「これで、お友達と好きな時に好きなだけ外でお茶できるようになるね」


感謝の言葉を伝える奥さんに何度も手をぶんぶんと振られながら、わたしがそう言うと、ユピテはそっとわたしを抱き寄せた。


ユピテの腕の中は暖かかった。人と触れ合うって、こんなに安心することだったんだ。


人肌のぬくもり。わたしたちはついに愛する人と抱き合う権利を手に入れたんだ。

あたりを見渡すと、人々がそれぞれ思い思いに、自由を勝ち取った喜びを噛みしめているように見えた。


*


その年の12月31日は、"媒介者"の最後の日となった。全世界の媒介者が総動員でワクチン配布に当たり、ついに一人も残すことなくワクチンを届け切ったのだ。こうして世界中の誰もが自由に家の外から出ていけるようになった今、かつて媒介者と呼ばれていたわたしたちは外の世界にちょっと詳しかったり、ちょっと空を飛べたりするただの人になった。


世界が開かれて3年。かつての世界郵便局本部は解散し、今は各国にそれぞれの郵便センターができた。一族経営を廃止したサンタ一族は、今もクリスマスイブには世界中の子どもたちにプレゼントを届けている。


サニエルは育児にかかりっきり。家の外を自由に走り回るわが子が危なっかしくて困ってるよ、とぼやくものの、めろめろみたいだ。


ユピテは開発者の手腕を買われて、新しい世界を築いていく戦略を立てる国際世界構築連合のアドバイザーに就任した。いろいろなものを作って何やらまた忙しい日々を送っているらしいけど、休日は友人とのんびり食事会を楽しんでいるそう。


ユニとキコとは相変わらず。変わったことといえば、ガールズトークを繰り広げる場がリアルなお店になって、食べ物も実際に味わえるようになったことくらいかな。


わたしはというと、この春からプロの飛行バスケットボール選手になることに決まった。飛行バスケットボールとは、飛びながら行う新スポーツだ。今のところ飛行能力に長けていた元媒介者の選手が多いけど、そうじゃない人たちからも有力選手がどんどん成長してきてるからうかうかしてられない。


今日は公式選デビュー前の最後の練習試合。さっき仲間と円陣を組んで気合を入れたばっかりだ。いつだってこの瞬間には胸が高鳴る。


笛の音が鳴った。試合開始だ。


わたしはボールを追いかけ、高く飛んだ。

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クリスマスの秘密 ~サンタクロース代行人~ オトブミ @otobumi

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