最終話

 次の日。休みだというのに五十嵐が汗疹に良いと塗り薬を持ってきた。


「汗疹、まだ良くならないですね」


「ん?もう痒くないけど」


「なんか赤いプツプツが何箇所か」


 アキラは首を傾げるがすぐ分かった。昨日のヒナタとの傷の舐め合いしてるときに付けられたキスマークの跡である。アキラは顔を赤らめる。それに意識しすぎたのか五十嵐が来てからしどろもどろである。


「ふふふ。あ、僕ちょっと出かけますので五十嵐さん、ごゆっくり」


「は、はい……じゃあお言葉に甘えて」


 ヒナタはアキラの耳元で囁く。


「頑張って」


「な、なにがだよ」


「あれ? ちょっとしたチャンスなのに。この度胸なし」


 ヒナタは根に持ちやすい、アキラは苦笑いした。五十嵐がアキラの背中に薬を塗る。


「大きな背中。でも傷だらけ……。古い傷だから色々と大変だったわね」


 優しく薬を伸ばしながら撫でる。アキラの過去を知っている彼女は優しく優しく、温かい手で。

 こんな優しく撫でてくれる人がヒナタ以外に現れるとは、とアキラは微笑む。


「あのさ、五十嵐さん……」


 終

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さよなら、小さい罪 麻木香豆 @hacchi3dayo

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