第44話◆◆③ガンゾウと人体改造◆◆
「つまり、ソナーを打ったらそれを関知したらしい海底の奴らが浮かび上がって攻撃してきたんだな?」
ウラジミールが持ち帰った矢を見ながら聞いた。
「はい、その通りでございます。」
矢をマジマジと見る。
「ガンゾウ殿、それを私にも見せて頂けませぬか?」
と言ったのはディートヘルムだ。
「見覚えが有るのか?」
と聞きながら矢を渡す。
「はい、些か▪▪▪」
と言いながら、矢を見る。
「▪▪▪」
暫し待つ。
「▪▪▪」
まだか?
「▪▪▪」
まだなのか?
「▪▪▪」
そろそろ良いだろ?
「▪▪▪!」
「何か分かったか?」
「いえ、皆もぐづっぶふぁっ!」
ああ、ウラジミール以外に手を上げたのは初めてだな。
死んだか?
「ご主人様ぁ、微かに息が有りますが、回復させますか?」
「▪▪▪頼む▪▪▪」
ウラジミール▪ヒーリング!とか言いながら治療呪を施している。
「ウラジミール▪▪▪」
「はい、ご主人様。」
「今後、ディートヘルムに手を上げたらソッコー治せ。」
「かしこまりましたぁ!」
まったく、自己再生出来ねぇのならつまんねぇ事言ってんじゃねぇ▪▪▪
10分後、ディートヘルムは再生した。
◇◇◇
「失礼しました。いや、この矢ですが、具体的には知らないのですが、海中から射られたと言う割には、作りが当たり前過ぎるのです。」
「どういうことだ?」
「はい、普通に陸上で使われるものと構造に違いが有りません、と言うことは、海中から射たとしても、水の圧力で海面に飛び出ることさえ不可能なはずです。」
「人外の力を持つものでもか?」
「それこそ『弓』が持ちますまい。何か特別な『矢』を使っているなら『弓』も疑いますが、『矢』が普通では『弓』だけ特別なものにしても、『弓』の力に負けてしまい使い物にならないでしょう。」
なるほどな。
まあ、水中銃の様な構造であったとしても、海面に飛び出して猛スピードで上昇するクリスタに追い付くのは不可能だろうな。
「とすれば考えられることは一つだな。」
「それは?」
と聞くディートヘルムを無視して船の速度を上げた。
「ガンゾウ殿?」
「▪▪▪」
◇◇◇
「この辺りか?」
「はい、ご主人様。」
「さて、せっかく作った船を壊されちゃたまらんな。こちらから出向くか。クリスタとフロリネは留守番な。」
「ええっ!何でよ?」
クリスタがパタパタ飛び回って抗議するが、理由はある。
「俺達が居ないあいだに船を守っていて貰いたい。
いざとなりゃ海面を厚く凍らせて海に蓋をしてしまえばいい。」
「つまんないけど、わかったぁ。」
「アタシは?」
「フロリネは船に結界を張って隠してくれ。」
「はいはい。それも簡単すぎる仕事ね。」
何でこいつらは暴れたがるんだ?
ある意味俺よりも暴力的だろ?
「ガンゾウ殿?どうやって海中に?ガンゾウ殿とウラジミール殿はなんとかなっても、私は溺れてしまいます▪▪▪」
「ああ、ちょっと来い。」
と言ってディートヘルムを手招いた。
正面から喉をむんずと掴む。
ギュッと絞める。
「ぐばっ!」
ディートヘルムが呼吸を奪われる。
暴れるから喉を掴んだ左手一本で吊り上げる。
巨漢のディートヘルムの足が浮く。
ピクピク痙攣が始まった。
「ちょっと!ガンゾウ!殺しちゃうの?」
フロリネが喚く。
「そんなはず無いじゃないですか、五月蝿い淫乱デカ尻だ。」
悪態をつくウラジミールの眉間にクナイが突き立った。
おお、弓だとモーションが大きくなって交わされるからクナイか?
そんなもの持っていたのか?
ウラジミール、油断したな。
等と考えるのに0.000003秒。
いや、測ってないから分からんな。
◇◇◇
ドッボォォォンッ!
俺は完全に弛緩したディートヘルムを海に投げ入れた。
「海葬?」
復活途中のウラジミールに細かく蹴りを入れながらフロリネが聞く。
ユラリとディートヘルムが浮かび上がった。
「息は出来るか?」
俺は身動きしないディートヘルムに声をかけた。
すると、『グバッ!』という音とともに空気を吐き出したディートヘルムが水面に顔を上げた。
「はい!これは▪▪▪エラでしょうか?」
そう、俺はディートヘルムの喉に『エラ』を付けてやったのだな。
「これなら心配ねぇよな?」
「はい!魚になった気分です!」
ああ、魚と言うよりは半分魔物化した顔が、いよいよ魚人的な魔物面になってきたな。
まあ、本人が喜んで泳いでいるから良しとしよう。
異世界無頼魔人ガンゾウ 一狼 @zacapa
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