第2話

 "死神"と名乗るやつから呪いをかけられた俺は数日後、両親と面会することとなった。

あれから、少し容態はよくなった。

まともに歩くことは難しいが数日でこれは回復力がとてつもないらしい。


…これも、呪いの副作用か。


昼過ぎ、病院の質素な昼食を食べ終わった頃、両親が会いに訪ねてきてくれた。


「さとしっ!怪我はどう?」


父さんも一緒かと思ったけど、母さんだけだった。


「だいぶよくなったよ。父さんは仕事で来れなかったの?」


母さんは少し目を腫らしていた。

安心して少し涙ぐんでいたのだろう。

心配をかけてしまった。


「ごめんね母さん心配かけて」


少し涙ぐみながら母さんは笑顔を作り話す。


「こんな23歳なんかで死んだら親不孝もんだからね!でも本当に生きててよかった…。」


こういう母の優しさが俺は昔から大好きだった。


「今、好きと思ったな?。」


その瞬間、どこからともなく死神が現れた。

黒の服装を纏い血の気がなく、表情のない死神が。


「ちなみに俺の姿はお前以外には見えないから安心しろよ〜」


「どうしたの、悟司?具合悪いの?」


俺は一瞬ポカンとしてたらしい。

こんなこと話しても母さんは信じないだろう。


「いや、なんにもないよ! この調子なら2週間ぐらいで退院できるって先生が言ってたよ!」


病院のベッドで元気だよってポーズで腕こぶしを作り笑顔を作って見せた。


「そう?ならいいんだけどほんと気をつけてね!何か欲しいものとかない?あっそうだ飲み物買ってくるわね!ちょっと待ってて!」


そう言うと母さんは少し早歩きで病室を出て飲み物を買いに行った。


「今、お前の寿命を1年貰ったぞ、残りの寿命は29年だ。大切に使えよ、さ・と・し・く・ん笑」


バカにしてるのかこの"死神"は。


「うっせぇ。恋愛対象だけじゃなく好意も対象なんて聞いてねーぞ、この悪徳詐欺師め。」


腹立つ気持ちと残り29年という年数に長いという気持ちと短いという気持ちで複雑な心境だ。


正直、恋愛対象が呪いの発動条件なのであれば女性に極力接触しなければいいと思っていたのだが、人に対する好意も対象になるなら話は別だ。


「お前が話しかけてくるのは別だが、返事を返すのは周りに誰もいない時だけだ。」


死神は、相変わらずその表情一つ崩さず話を続ける。


「俺がかけた短寿の呪いには他にもいくつかルールがあるんだが、まぁその度教えてやるよ。」


タチの悪い死神だ。

これに加えて隠しルールがあるなんて聞いてないぞ。ますますこいつが詐欺師に見えてきた。


「もうすぐ母さんが帰ってくる。お前は黙ってろ詐欺師め。」


死神は、何も言わずに霧のように消えていく。

去り際に、あの不敵な笑みを浮かべ。



柏原 悟史 寿命残り 29年0ヶ月24日

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好きの数だけ僕は死に近づく 牧多 -maki- @kasam

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