悲しみも出会いも繰り返す

捻くれているので、途中まで鶴の恩返しと雪女の話のパロディと見せかけて、猫又か火車を踏襲したようなどんでん返しがあるのでは……とやたら警戒して読んでしまいましたが、とても優しく切ないお話でしたね。
異類婚姻譚による「見るなのタブー」が、この作品では霊媒師の御札がそれにあたります。正体を知られてしまってはもう一緒にはいられないという離別によって、大抵の異類婚姻譚は完成します。
ただ、ここが一番唸ったところですが、この「猫の母の恩返し」では、冒頭の描写を物語終盤でリフレインしています。自分の元から去ってしまった女と、一緒にいることはできなかった猫の妻。男の悲しみは繰り返し、そうしてまた出会いの福音は繰り返す。
切ないながらも、希望のある読後感でした。

読み合い企画にご参加いただきましてありがとうございました!