「ショートショート」マスクをしないOL

ゆきじ

第1話

 私の名前はレイカよ。幼少期からバレエ、お花、ソフトボール、水泳、英会話教室、書道様々なことを学んできたわ。高校では生徒会長をして大学ではミスコンで優勝をしたの。ま、私クラスになれば、当たり前だけど。私クラスになれば副業で超美人モデルとして引っ張りダコよ。美を保つためなら、真冬でも関係なくミニスカートやシースルーを着てピンヒールはくのは当たり前。今日は三時間かけてネイルとマツエクの日。今日までのネイルは華やかなオレンジ系だったけど、もうすぐ冬だし、大人っぽいブルー系にする予定なの。その後はお肌のメンテナンス。冬は特に乾燥しやすいから今から念入りにケアしないとね。あー忙しい。

 

 私が嫌いな季節は春ね。何でかって?それは二つあるの。

 

一つ目は、

 春って関わってくる人が変わってくるじゃない。本業でもそうだけど、特にモデル業界では入れ替わりが激しいのよ。競争社会だから大変なのよ。そうすると、自然と付き合う彼氏も変わってくるじゃない。私が振るというよりも、自然と合わなくなって自然消滅してしまうのよ。彼との別れが悲しいのよね。だから毎年春はブルーな気分よ。

 

二つ目は

 単純に花粉症で、外にいる時はマスクをしないといけないからね。マスクって凄く蒸れるじゃない。後、何よりも私の美人な顔が半分も隠れるじゃない。本当にそれがあり得ない。こんなに美人なのよ。だからマスクは絶対しないの。花粉の時期は薬を飲んで乗り切っているわ。 気合よね(笑)

 そんな冬に、ウイルスのニグマンが流行ったの。

因みに、今の彼は龍也という名前でとても潔癖でいつもアルコールスプレーを持っているの。無い時は自分で作っているみたい。

 そんな彼から信じられないことを言われたの。

「僕とこれからも付き合いたいならマスクをしてほしい」


私はいった。

「え?何で(私にさしずするのね)」


彼は言った。

「何でって、ニグマンが流行っているし、レイカにはずっと健康でいてほしい。ニグマンに感染すると一ヵ月ぐらいは通院が必要になるみないだよ。」


私は言った。

「その気持ちはありがたいけど、マスクだけはね・・・どうしてもマスクだけはをしたくないの。蒸れるしお化粧も崩れちゃうから。後、私は健康だから大丈夫よ。めったに風邪も引かないしね。」


彼は言った

「そうじゃない。ウイルスと風邪は違うでしょ。しかもレイカがニグマンに感染して、僕に感染したらどうする。」


私は言った。

「結局、自分のためじゃない。私は、蒸れるしニキビも増えるし肌荒れするからマスクなんて絶対しないからね」


彼は言った。

「何だって、そんなに小さな僕の願いも聞いてくれないのか。じゃこんな時期に危機感がない人と、僕はこれからも一緒にいることはできない。別れてほしい。」


私は言った。

「何ですって、そんなわからずやだと思わなかったわ、いいわ、別れましょう。後で後悔しても知らないわよ。」

ということで、龍也と喧嘩別れした。それはそれで良かったと思っているの。

 私の唯一の天敵である「マスクをすること」を許せない男。器が小さいもの。ニグマンが例え流行っていなくても先は短かったわ。

 

 私が彼と別れたからってまた男性から私に寄ってくるから、そこまで気を落とさないわ。私の女友達が合コンを開いてくれるしね。最悪、彼ができなくても、私は天下の美人モデル。雑誌のイベントに来てくれるファンがいればそれでいいの。仕事が充実していればこれでいいの。来世で生まれ変わって美人ナースになったとしても絶対マスクはしないわ。


一週間後

 ニグマンウイルスにかかってしまって、救急車で運ばれ入院することになったの。目が覚めたら病室で酸素マスクをしていたわ。もぉ~パニック状態よ。無理に酸素マスクを取ったら呼吸ができなくなって倒れちゃった。


  さらに一時間後

 起きたら超粘着力のある接着剤で酸素マスクを外せないようにグルグルと巻き付けてあって、さすがに観念したわ。

 無事に退院したけど、帰る当日は、粘着力が強すぎて酸素マスクを外すのに一時間かかったし、顔もかなりむくんで最悪よ。退院した帰りに顔のむくみをとるエステとジム、あ、美容室も予約しないとね。

 

 また、ニグマンになってもマスクはしないわ。三日間で治るし、私の美人の顔、全てが私だからね。

  

    じゃ今日も行ってきまーす。

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