第2話
「おまえ、N高の古平だろ」
真牡蠣が今、気づいたように、表情を
パッと明るくした。
「オレ、おまえのファンだったんだ」
真牡蠣がズボンの横で自分の手
を拭き始めた。
「握手してくれ」
真牡蠣が右手を差し出した。
「それじゃあ、雇ってくれるんですね」
古平が瞳を輝かす。
「それとこれとは話が別だ」
真牡蠣は厳しく言い放った。
「人には適所適材ってもんがある。自分に
合っていない職場で働いても、いつか上手く
いかなくなるだけさ」
真牡蠣がそういうと、古平はガックリと
肩を落とした。
「まあ、そうガッカリするな。オレもおまえの
次の仕事探しに協力するから」
真牡蠣が付け加えた。
「なるたけカタギの仕事を探せよ。元高校
球児にはマスコミも世間も手厳しいからな」
真牡蠣が笑った。
あの輝きをもう一度(短篇集参) @uwm54213
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