■ 学習（ガクシュウ）コンテンツ

　※ 伏字（フセジ）の漢字（カンジ）は、❶（イチ）～（カラ）❻（ロク）は（ワ）小１（ショウイチ）～（カラ）小６（ショウロク）で、❼（ナナ）は（ワ）中学（チュウガク）で覚（オボ）える常用（ジョウヨウ）漢字（カンジ）です。

　※ 日本（ニホン）で暮（ク）らす全（スベ）ての人（ヒト）は、すべからくこれらの常用（ジョウヨウ）漢字（カンジ）を知（シ）っておくべきとされています。

　※ 読（ヨ）み仮名（ガナ）で漢字（『カンジ』）（『カンジ』）の様（ヨウ）に括弧（カッコ）の付（ツ）いた漢字（カンジ）は原書（ゲンショ）で読（ヨ）み仮名（ガナ）が付（つ）いている漢字（カンジ）です。

　※ 伏字（フセジ）になっていない漢字（カンジ）は常用（ジョウヨウ）漢字（カンジ）外（ガイ）、若（モ）しくは原書（ゲンショ）（底本（テイホン））で読（ヨ）み仮名（ガナ）の振（フ）られていた漢字（カンジ）です

❷❸（サクヒン）❶（メイ）：❶本（ニホン）❶❸（ブンカ）と❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）

著❸（チョシャ）❶（メイ）：❶❷（イシワラ）❻（アツシ）

　❹々（シュジュ）の❶❺（ガクジュツ）の❶（ナカ）で❷❶（カガク）、❹（トク）に❷❶（スウガク）や❷❹（シゼン）❷❶（カガク）は（ワ）❻❼（ジュンスイ）に❸❹❹（キャッカンテキ）なものであり、したがって❹（モット）も❷❺❹（コクサイテキ）なものとして❷（カンガ）えられてきたのは（ワ）ほとんど❷❹（トウゼン）と❶（ミ）なされていたにもかかわらず、ひとたびドイツ（ドイツ）においてナチス（ナチス）❺❹（セイジ）がはじめられるにおよんで、その❷❼（キョウレツ）な❷❼（コクスイ）❸❺（シュギ）の❸❺（ジツゲン）とともに、ユダヤ（ユダヤ）❷❸（シソウ）の❼❼（ハイゲキ）が❷（オコナ）われ、ついに❷❶（カガク）の❹❸❺（ミンゾクセイ）の❸❺（シュチョウ）が❼（サケ）ばれ、ドイツ（ドイツ）❷❶（スウガク）やドイツ（ドイツ）❸❷❶（ブツリガク）のごときが❷❸（キョウチョウ）せられるに❻（イタ）ったのは（ワ）、❸❸（セカイ）における一（ヒト）つの❼（オドロ）くべき❷❸❹（シソウテキ）❻❹（イヘン）といわねばならない。

　ところで❷❼（コクスイ）❸❺（シュギ）のしょうどうは（ワ）❶本（ニホン）においても❷❷（キンジ）いちじるしく❻（サカ）んであるのは（ワ）、あたかもドイツ（ドイツ）に❺（ニ）ているともいわれるであろう。たとえここにはかのごとき❺❹❹（セイジテキ）❷❺（キョウアツ）は（ワ）❷（オコナ）われていないとは（ワ）いっても、❶（クチ）に❶本（ニホン）❺❸（セイシン）を❼（タタ）えないものは（ワ）あたかも❺（ヒ）❷❹（コクミン）であるかのごとくに❶（ミ）なされるばかりである。まことに❼（オソ）ろしい❸（ヨ）の❶（ナカ）であるといわねばならない。だが、しかしわれわれは（ワ）どこまでも❹❹（レイセイ）にこの❶本（ニホン）❺❸（セイシン）なるものの❷❺（ナイヨウ）を❺❻（ケントウ）してゆくことを❻（ワス）れては（ワ）ならない。そこには（ワ）われわれが❷❶（コンニチ）ぜひとも❹❹（ヒツヨウ）とする❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）がどれほど❼（フク）まれているのであるか。もしこれが❶❷（ジュウブン）でないとするならば、それは（ワ）そもいかなる❸❺（ジジョウ）に❸❷（ユライ）するのであるか。これらに関（カン）する❸本❹（コンポンテキ）な❷❹（コウサツ）は（ワ）、われわれの❶本（ニホン）❶❸（ブンカ）を❻❷（ショウライ）において❶（タダ）しく❺（ミチビ）くために❺❸（ゼッタイ）に❹❹（ヒツヨウ）であって、かような❷❼（コウリョ）なしに❹（タン）に❷❼（コクスイ）❸❺（シュギ）を❹❼（コシュウ）するのは（ワ）むしろはなはだ❻❺（キケン）な❷❸（シソウ）❹（テキ）❼❸（ケイコウ）であるとせねばならないであろう。

　❻（ワタシ）の❶（ミ）るところでは（ワ）、❶本（ニホン）❺❸（セイシン）といえども、その❶（ナカ）には（ワ）❹❸（ミンゾク）に❹❸（コユウ）な、いわば❶❶❹（センテンテキ）な❹❺（ヨウソ）もあり❺（エ）るであろうが、しかし❷❷（ドウジ）に❺❺❹（レキシテキ）に❶本（ニホン）❶❸（ブンカ）が❷❷（カタチヅク）られて❷（キ）た❺❺（カテイ）における❼❺（カンキョウ）によって❺❸（シハイ）された❷（オオ）くの❹❺（ヨウソ）をも❼（フク）んでいるのである。それ❺（ユエ）にすでに❼❺（カンキョウ）の❻（コト）なる❸❸（アリサマ）に❼❹（トウタツ）した❶（ウエ）では（ワ）、われわれは（ワ）むしろここに❺❺（テキオウ）する❺❸（セイシン）❷❺（ナイヨウ）を❶❷（ジュウブン）に❸❹（ハッタツ）させねばならないのであって、そうでなくては（ワ）❷❷（コッカ）や❹❸（ミンゾク）の❸❻（ハッテン）も❸（キ）し❺（エ）られないのは（ワ）、これこそ❸❸（シンカ）❶（ガク）の❼❼❹（フヘンテキ）❷❷（ゲンリ）である。❼❺（カンキョウ）のいかんにかかわらず、❻❷（ジュウライ）の❺❸（セイシン）❷❸（シソウ）を❹（タン）にそのままに❹❸（コシュ）することを❷❷（ゲンリ）とするごとき❷❼（コクスイ）❸❺（シュギ）は（ワ）、それの❼❼（ヘンキョウ）❺（セイ）と❺❺（ドクダン）❺（セイ）とによって、やがてそれ❷❸（ジシン）を❼❼（スイメツ）せしめるであろうことは（ワ）、❼（オソ）らく❷❶❹（カガクテキ）に❸❺（ジッショウ）されるのである。すなわち❷❼（コクスイ）❸❺（シュギ）は（ワ）それの❺❸（セイシン）❷❺（ナイヨウ）が❺❸（ゲンジツ）の❼❺（カンキョウ）にどこまで❺❺（テキオウ）するか❻（イナ）かをつまびらかに❺❻（ケントウ）した❶（ウエ）で、はじめてその❺❻（カチ）を❺❺（ハンダン）し❺（エ）るのであって、これを欠（カ）いて❹（タン）にそれに❷（ハシ）ることは（ワ）、あたかも❺❼（ダンガイ）にむかって❼❶❹（モウモクテキ）に❼❸（トッシン）すると❷❸（ドウヨウ）の❻❺❺（キケンセイ）をさえ❹❻（ホウゾウ）すると❷（カンガ）えられる。

　❻（ワタシ）は（ワ）❻❷（ジュウライ）の❶本（ニホン）❶❸（ブンカ）が❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）においてきわめて❺❻（ヒンコン）であったことをいいたかったのである。❶本（ニホン）のみでなく❺❼（シナ）やインド（インド）を❼（フク）む❷❸（トウヨウ）において❷❺（ナゼ）に❷❹（シゼン）❷❶（カガク）が❺（オコ）らなかったかとい（ユ）うことについては（ワ）❹❼（シュウトウ）な❺❻（ケントウ）を❹（ヨウ）すると❷（オモ）う。これをもって❹（タン）に❷❸（トウヨウ）❺❸（セイシン）のなかに❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）が欠（カ）けているとい（ユ）うことに❷（キ）するだけでは（ワ）❷（ナニ）の❺❻（カチ）もない。それは（ワ）❺（タシ）かな❸❸（ジジツ）であるには（ワ）ちがいないが、この❸❸（ジジツ）を❹❹（ケッカ）せしめねばならなかったところの❺❸（カコ）の❺❺❹（レキシテキ）❼❺（カンキョウ）がどんなものであったかを、われわれは（ワ）❷❼（ブンセキ）❷❸（コウキュウ）しなくては（ワ）いけない。その❶（ウエ）ではじめて❹❸❹（ミンゾクテキ）本❺（ホンシツ）の❻（スガタ）が❸（シン）に闡明（『センメイ』）せられるのであって、だからこそ❻（ワタシ）は（ワ）一❸（イッテイ）の❼❺（カンキョウ）のもとにのみあらわれた❺❸（カコ）の❺❸（セイシン）❷❺（ナイヨウ）をただちにわれわれに❹❸（コユウ）なものと❷惟（シイ）するのを❻（アヤマ）っているとするので、これについても❸（シン）に❷❶❹（カガクテキ）な❷❷（シンリ）❷❹（コウサツ）を❹（ヨウ）すると❷（カンガ）えるのである。

　すでに一❼（イッパン）に❷（シ）られているとおりに、❶本（ニホン）❶❸（ブンカ）の❹❺（トクシツ）は（ワ）、いつも❸❺❹（グショウテキ）な❷❹❹（チョッカンテキ）な❸❸（ジブツ）❷❹（コウサツ）においてあらわれ、しかもそれが❸（ホカ）に❺（ヒ）❹（ルイ）を❶（ミ）ないほどな❼❻（チミツ）❷❼（サイビ）の❻（イキ）に❼❹（トウタツ）しているのである。❷一（ドウイツ）の❸（イ）の❷❷（ゲンゴ）の❸❺（ヒョウゲン）❸❸（ヨウシキ）がきわめて❷❹❹（タシュルイ）にわたるとい（ユ）うわが❷❷（コクゴ）の❹❻❺（トクイセイ）や、❶本（ニホン）❶❶（ブンガク）および❸（ホカ）の❹❺（ゲイジュツ）における❺❼（ジョウシュ）❹（テキ）❸❹（カンカク）の一❹（イッシュ）の❷❺（フウカク）やいわゆる❻（ショ）❹❷（ゲイドウ）の❺❷❹（ドクジテキ）な❸❹（ハッタツ）のごときは（ワ）、ことごとくこれに❺（ゾク）するものである。ところがこれに❸（カエ）して❼❺❹（チュウショウテキ）な❻❷❹（ロンリテキ）な❷❷（シコウ）に❻（イタ）っては（ワ）その❶（ミ）るべきものがきわめて稀（『マレ』）であるとい（ユ）うことは（ワ）、❸（ジツ）に❼（オドロ）くばかりである。だが、しかしこの❸（コト）によってただちにわが❶本（ニホン）❹❸（ミンゾク）には（ワ）かような❼❺（チュウショウ）❹（テキ）❻❷❹（ロンリテキ）❷❷（シコウ）が❶❶❹（センテンテキ）に欠如（『ケツジョ』）していると❸❺（ソクダン）しては（ワ）いけない。むしろ❷❶（タネン）の❺❺❹（レキシテキ）❼❺（カンキョウ）がわれわれをしてかくあらしめたと❷（カンガ）えることができるからである。

　❻（ワタシ）は（ワ）しかしここに❸❶（チュウモク）すべき一（ヒト）つの❸❸（ジジツ）を捉（『トラ』）えることができるように❷（オモ）う。❶本❶（ニホンジン）が❸❺❹（グショウテキ）な❷❹❹（チョッカンテキ）な❸❸（ジブツ）❷❹（コウサツ）のみを❷（オコナ）っていたとい（ユ）うことは（ワ）、❼（アタ）えられた❷❹❹（シゼンテキ）❼❺（カンキョウ）のなかに❹❶（マンゾク）をもとめていたのを❸❸（イミ）するのである。たといその❷❶（コクド）が❹❷（カクジ）の❶❷（セイカツ）に❸（タイ）して❼（メグ）まれたものであったとしても、それ❹❶（イジョウ）❷（オオ）くを❹（モト）めることにあえて❸（スス）まなかったとい（ユ）うのは（ワ）、❺（タシ）かにそれだけ❷❶❹（ラクテンテキ）もしくは（ワ）諦念（『テイネン』）❹（テキ）であったゆえでは（ワ）ないであろうか。❷❼❶（セイオウジン）がむしろ❼❼（インサン）❸❻（シンコク）な❺❺（セイジョウ）をもっているのにくらべて、❶本❶（ニホンジン）は（ワ）かえって安❼（アンタイ）明❻（メイロウ）である。❺❼（シナ）において❺❷（ブッキョウ）が著（イチジル）しく厭❸❹（エンセイテキ）❻❸❹（ヒテイテキ）であるのにくらべてさえ、❶本（ニホン）に❹❷（デンライ）しては（ワ）❺（タシ）かにその❼❸（ケイコウ）を❼（ウス）くしている。もしかようなものがわれわれの❹❸❹（ミンゾクテキ）❹❺（トクシツ）であるとするなら、それは（ワ）ややもすればわれわれを偸安（『トウアン』）❹（テキ）に❺（ミチビ）くものとして❶（オオ）いに戒（『イマシ』）めねばならないと❷（オモ）われる。

　しかしこれとても❼和（オンワ）な❸（ウツク）しい❷❶（フウド）に❼（メグ）まれたとともに、❻❷（ジュウライ）❶本（ニホン）が❷❺❹（コクサイテキ）❼❶（コリツ）の❼❺（カンキョウ）に❹（オ）かれて、❷❻（ガイテキ）を❼（ウレ）えることをほとんど❹（ヨウ）しなかったような❷❶（タネン）の❺❺（レキシ）が❷❹（コクミン）にかような❸❺（シュウセイ）を❷❷（カタチヅク）るに❻（イタ）らしめたと❶（ミ）ることがおそらく❶（タダ）しいのであって、❹（タン）に❼❺❹（チュウショウテキ）にこの❺❺❹（レキシテキ）❷❷❹（チリテキ）❼❺（カンキョウ）から❷（ヒ）き❼（ハナ）して❹❸❺（ミンゾクセイ）を❷（カンガ）えることは（ワ）❶❷（ニンゲン）❷❷（シンリ）の❸❻（ハッテン）❺❺（カテイ）を❹❻（ムシ）したものであろう。

　ともかくこのようにして❷❸（トウヨウ）の❶❺（ガクジュツ）は（ワ）ほとんど❸❺❹（グショウテキ）❷❹❹（チョッカンテキ）❷❷（シコウ）の❶（ウエ）に❹（ナ）り❶（タ）っている。❷❹（シゼン）❷❶❹（カガクテキ）なものとしては（ワ）、わずかに❼❶（レキガク）や❸❷（カンポウ）❸❶（イガク）や本草（『ホンゾウ』）❶（ガク）のごときがあるに❺（ス）ぎないが、それらがまったく❷❹❹（チョッカンテキ）❺❹（ケイケン）の❶（ウエ）にのみ❷❷（カタチヅク）られ、一❷（イッポ）も❼❺❹（チュウショウテキ）に❸（スス）まなかったのは（ワ）、むしろ顕著（『ケンチョ』）な❹（カン）を❼（テイ）している。❷（オオ）くの❸❷❹（ジツヨウテキ）な❻（ショ）❺❺（ギジュツ）のまた❷❸（ドウヨウ）であったのも❸❶（チュウモク）されねばならない。

　ところがこの❷（アイダ）にあってひとり❷❶（スウガク）がはなはだ❼❺❹（チュウショウテキ）に❸（スス）んだのは（ワ）一❶（イッケン）❼❻（キイ）の❸（カン）がある。すなわち和算（『ワザン』）と❼（ショウ）せられるものは（ワ）❹❹（サイショ）は（ワ）❺❼（シナ）の算❹（サンポウ）から❸❻（ハッテン）したものであるが、❶❶（ジュウナナ）❸❺（セイキ）❹後（イゴ）❶（オオ）いに❸（スス）み、関孝和（『セキタカカズ』）（一❶❶❶（センロッピャクヨンジュウニネン）―（カラ）一❶〇❶（センナナヒャクハチネン））に❻（イタ）っては（ワ）、❸算（ヒッサン）❸（シキ）❸❷❶（ダイスウガク）の❻❹（ソウアン）をはじめとし、❷❺❸（ホウテイシキ）❻（ロン）、❷❸（ギョウレツ）❸（シキ）❻（ロン）、❹❺（ムゲン）❸❷（キュウスウ）、❹❶（キョクダイ）❹❶（キョクショウ）の❸❸（モンダイ）、❸❷（セイスウ）❻（ロン）、❶❷（サンカク）❺（ジュツ）❸（ナド）に関（カン）する❷❸（コウトウ）❷❶（スウガク）をとりあつかい、その著（イチジル）しい❸❹（ハッタツ）を❸❺（ジツゲン）せしめたことは（ワ）、❸（ジツ）に❼（オドロ）くに❶（タ）りる。爾後（『ジゴ』）明❹（メイジ）の❹❶（ショネン）に❻（イタ）るまで❷（オオ）くの和算❷（ワサンカ）が❼❶（ハイシュツ）したが、この一❸（イチジ）は（ワ）❶本❶（ニホンジン）においてもまた❼❺❹（チュウショウテキ）❻❷❹（ロンリテキ）❺❶（ノウリョク）が❸（ケッ）して欠（カ）けているものでないことを❺（シメ）す一（ヒト）つの❸❺（ジッショウ）として、われわれの❶（オオ）いに❸（イ）を❷（ツヨ）うするに❶（タ）りるものである。だがしかもそれは（ワ）一❼（イッパン）にいえばかえってあまりにも❼❺❹（チュウショウテキ）に❺（ス）ぎるものであった。つまり、これらの和算❷（ワサンカ）のとりあつかった❸❸（モンダイ）は（ワ）すべてそれ❷❸（ジシン）❷❺❹（チノウテキ）❺❺（ギジュツ）を❼❺（コジ）するものでしかなかった。それは（ワ）あたかも❼（ゴ）、❻❼（ショウギ）のような❷❺（チノウ）❹（テキ）❸❼（ユウギ）と❷❸（ドウトウ）の❹（カン）さえある。しかも❷❷（トウジ）の❼❹❹（ホウケンテキ）❷❷（シャカイ）にあって、これらの❷❺（チシキ）は（ワ）いたずらに❻❹（ヒデン）として❼❺（カクゼツ）せられて、一❼❹（イッパンテキ）❼❼（フキュウ）の❹❷（キカイ）を❹（ウシナ）うとともに、この❼❺❹（チュウショウテキ）❷❷（シコウ）を❸（ホカ）の❸❷❹（グタイテキ）❸❸（ジブツ）の❶（ウエ）に❹❷（リヨウ）することがまったく❷（オコナ）われなかった。

　関（セキ）孝和（タカカズ）がニュートン（ニュートン）（一❶❶❶（センロッピャクヨンジュウニネン）―（カラ）一❶❶❶（センナナヒャクニジュウナナネン））と❷❶（ドウネン）に❶（ウマ）れていることは（ワ）、❺❺❹（レキシテキ）に❶（オオ）いにわれわれの❺❸（キョウミ）をひくところであるが、ニュートン（ニュートン）が❷❸（バンユウ）❷❶（インリョク）の❸❸（モンダイ）を❺（ト）くために❼❹❷（ビセキブン）❶（ガク）を❸明（ハツメイ）したのに❸（カエ）して、関（セキ）孝和（タカカズ）が❻❼（ジュンスイ）に❼❺❹（チュウショウテキ）に❹々（シュジュ）の❷❶❹（スウガクテキ）関❸（カンケイ）を❺（ミチビ）き❶（ダ）したとい（ユ）う❷（テン）において、たとい❷❶（スウガク）❶（ジョウ）の❹❺（コウセキ）に関（カン）して❷（オオ）く❹（サ）❸（ナド）を❻（ロン）じないとしても、それの一❼（イッパン）❶❺❹（ガクジュツテキ）❺❹（コウカ）に❸（タイ）する❸❶（ジュウダイ）な❹❹（サベツ）が❶（ショウ）じたのであった。これについては（ワ）❼❺（キジュツ）のごとく❷❷❹（シャカイテキ）❼❺（カンキョウ）が❶（オオ）いに❷❷（サヨウ）しているのは（ワ）もちろんであるが、ともかくニュートン（ニュートン）❹後（イゴ）❷❸（セイヨウ）においてあれほどすばらしく❷❹（シゼン）❷❶（カガク）が❸❹（ハッタツ）しきたったとい（ユ）う❸❸（ジジツ）と、わが❷（クニ）においてそれの❼❷（ビサイ）な萌芽（『ホウガ』）さえも❶（ミ）られなかったことを❸❺（タイヒ）して、われわれは（ワ）いまさらに❸❸（リョウシャ）の著（イチジル）しい❸❼（ソウイ）に❼（オドロ）かないわけには（ワ）ゆかないであろう。

　❷❸（セイヨウ）の❷❹（シゼン）❷❶（カガク）がわが❷（クニ）に❺❶（ユニュウ）されて、❷❶（キョウ）では（ワ）ともかく❷❸（ドウトウ）な❷❶（カガク）❹（テキ）❷❺（チシキ）を❼❺（カクトク）するに❻（イタ）ったのは（ワ）、❸❼（コウケイ）に❻（アタ）いする。だが、❻（ワタシ）のとくに❸❸（チュウイ）したいことは（ワ）、❷❺（チシキ）は（ワ）一❷（イッチョウ）にして❶（マナ）び❺（エ）るものでは（ワ）あっても、これが❸本（ネモト）をなすところの❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）の涵養（『カンヨウ』）は（ワ）けっしてさほど❺❺（ヨウイ）では（ワ）ないとい（ユ）う❷（テン）である。❷❶（キョウ）までの❶本（ニホン）❶❸（ブンカ）においてこの❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）を欠（『カ』）いていたのは（ワ）、一（イチ）に❻❷（ジュウライ）の❼❺（カンキョウ）によるのであると❺（ホグ）したところで、さて❼❺（カンキョウ）の❹❸（ヘンカ）が❹❸（ミンゾク）❷❸（シソウ）に❸❷❹（グタイテキ）な❼❼（エイキョウ）を❸❷（モチキタ）さしめるまでには（ワ）、❸（ジツ）にその❷（アイダ）における❷❶（タダイ）の❹❶（ドリョク）と❻❼（フンレイ）とを❹❹（ヒツヨウ）としなければならない。❷❶（キョウ）もとより❷❷（コッカ）❻❶（ソンリツ）の❸❶❺（ジュウダイセイ）について❶❷（ジュウブン）に❺（メ）ざめているものにとって、この❻❺（イジョウ）な❸❸（ケツイ）の❼❷（スイコウ）の❺❺❺（カノウセイ）を❻（ウタガ）うべきでは（ワ）ないとしても、われわれは（ワ）なおそこに一抹（『イチマツ』）の❼❼（ユウリョ）を❸（ケ）し❸（サ）るわけには（ワ）ゆかないのである。

　わが❷（クニ）の❷❶❹（カガクテキ）❸❸（ケンキュウ）においてなお❻❸❹（ソウイテキ）なるもののはなはだとぼしいのは（ワ）❺（ゲン）に❻❸（ヒテイ）せられない❸❸（ジジツ）である。これは（ワ）一❸（イチメン）において❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）の涵養（『カンヨウ』）の❹❶（フソク）をものがたると❹（トモ）に、❸❸（タメン）においては（ワ）❶❺（ジョウジュツ）の❷❶（タネン）の偸安（『トウアン』）❹（テキ）な❸❺（シュウセイ）が❺（ワザワ）いしているのでは（ワ）ないかと❷（カンガ）えられる。この❸（コト）をもって、ドイツ（ドイツ）❶（ジン）が❸❷（ユライ）❸❸（セカイ）において❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）に❹（モット）も❷（チョウ）じているのと❸❺（タイヒ）するならば、いたずらに❸❸❹（ヒョウメンテキ）にのみドイツ（ドイツ）❷❼（コクスイ）❸❺（シュギ）を❻❼（モホウ）することの❻❺❺（キケンセイ）を明（アキ）らかにすることができるであろう。❷一（ドウイツ）の❷❼（コクスイ）❸❺（シュギ）の❶❶（メイモク）のもとに、だがドイツ（ドイツ）❷❶（カガク）に❸❺（タイヒ）するどんな❶本（ニホン）❷❶（カガク）があり❺（エ）るのであるか。しかも❷❶（コンニチ）は（ワ）❷❶（カガク）の❸❹（ウム）こそ❷❷（コッカ）の❸❸（ウンメイ）を❸❸（ケッテイ）する❹❶（サイダイ）の❹❺（ヨウソ）であることは（ワ）❻（ウタガ）うべくもない。それ❺（ユエ）に❶本（ニホン）❶❸（ブンカ）を❻❷（ショウライ）において一❻（イッソウ）❻（サカ）んならしめるために❻（ワタシ）は（ワ）❷（ナニ）をおいても❷❶❹（カガクテキ）❷❸（シソウ）の涵養（カンヨウ）こそ❹（モット）も❸❹（ジュウヨウ）であるとしないわけにゆかないのである。

■ コンテンツ（こんてんつ）

作品（サクヒン）名（メイ）：日本（ニホン）文化（ブンカ）と（ト）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）

著者（チョシャ）名（メイ）：石原（イシワラ）純（アツシ）

　種々（シュジュ）の（ノ）学術（ガクジュツ）の（ノ）中（ナカ）で（デ）科学（カガク）、特（トク）に（ニ）数学（スウガク）や（ヤ）自然（シゼン）科学（カガク）は（ワ）純粋（ジュンスイ）に（ニ）客観的（キャッカンテキ）な（ナ）もの（モノ）で（デ）あり（アリ）、したがって（シタガッテ）最（モット）も（モ）国際的（コクサイテキ）な（ナ）もの（モノ）として（トシテ）考（カンガ）え（エ）られて（ラレテ）きた（キタ）の（ノ）は（ワ）ほとんど（ホトンド）当然（トウゼン）と（ト）見（ミ）な（ナ）されて（サレテ）いた（イタ）にも（ニモ）かかわらず（カカワラズ）、ひとたび（ヒトタビ）ドイツ（ドイツ）において（ニオイテ）ナチス（ナチス）政治（セイジ）が（ガ）はじめ（ハジメ）られる（ラレル）に（ニ）およんで（オヨンデ）、その（ソノ）強烈（キョウレツ）な（ナ）国粋（コクスイ）主義（シュギ）の（ノ）実現（ジツゲン）とともに（トトモニ）、ユダヤ（ユダヤ）思想（シソウ）の（ノ）排撃（ハイゲキ）が（ガ）行（オコナ）われ（ワレ）、ついに（ツイニ）科学（カガク）の（ノ）民族性（ミンゾクセイ）の（ノ）主張（シュチョウ）が（ガ）叫（サケ）ばれ（バレ）、ドイツ（ドイツ）数学（スウガク）や（ヤ）ドイツ（ドイツ）物理学（ブツリガク）の（ノ）ごとき（ゴトキ）が（ガ）強調（キョウチョウ）せ（セ）られる（ラレル）に（ニ）至（イタ）った（ッタ）の（ノ）は（ワ）、世界（セカイ）に（ニ）おける（オケル）一（ヒト）つ（ツ）の（ノ）驚（オドロ）く（ク）べき（ベキ）思想的（シソウテキ）異変（イヘン）と（ト）いわ（イワ）ねば（ネバ）ならない（ナラナイ）。

　ところで（トコロデ）国粋（コクスイ）主義（シュギ）の（ノ）しょうどう（ショウドウ）は（ワ）日本（ニホン）において（ニオイテ）も（モ）近時（キンジ）いちじるしく（イチジルシク）盛（サカ）ん（ン）である（デアル）の（ノ）は（ワ）、あたかも（アタカモ）ドイツ（ドイツ）に（ニ）似（ニ）て（テ）いる（イル）とも（トモ）いわれる（イワレル）で（デ）あろう（アロウ）。たとえ（タトエ）ここ（ココ）には（ニハ）かの（カノ）ごとき（ゴトキ）政治的（セイジテキ）強圧（キョウアツ）は（ワ）行（オコナ）われ（ワレ）て（テ）いない（イナイ）と（ト）は（ワ）いっても（イッテモ）、口（クチ）に（ニ）日本（ニホン）精神（セイシン）を（ヲ）称（タタ）え（エ）ない（ナイ）もの（モノ）は（ワ）あたかも（アタカモ）非（ヒ）国民（コクミン）で（デ）ある（アル）かの（カノ）ごとく（ゴトク）に（ニ）見（ミ）な（ナ）される（サレル）ばかり（バカリ）である（デアル）。まこと（マコト）に（ニ）恐（オソ）ろしい（ロシイ）世（ヨ）の（ノ）中（ナカ）で（デ）ある（アル）と（ト）いわねば（イワネバ）ならない（ナラナイ）。だが（ダガ）、しかし（シカシ）われわれ（ワレワレ）は（ワ）どこまで（ドコマデ）も（モ）冷静（レイセイ）に（ニ）この（コノ）日本（ニホン）精神（セイシン）なる（ナル）もの（モノ）の（ノ）内容（ナイヨウ）を（ヲ）検討（ケントウ）して（シテ）ゆく（ユク）こと（コト）を（ヲ）忘（ワス）れて（レテ）は（ワ）ならない（ナラナイ）。そこ（ソコ）に（ニ）は（ワ）われわれ（ワレワレ）が（ガ）今日（コンニチ）ぜひとも（ゼヒトモ）必要（ヒツヨウ）と（ト）する（スル）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）が（ガ）どれほど（ドレホド）含（フク）まれて（マレテ）いる（イル）ので（ノデ）ある（アル）か（カ）。もし（モシ）これ（コレ）が（ガ）十分（ジュウブン）で（デ）ない（ナイ）と（ト）する（スル）ならば（ナラバ）、それ（ソレ）は（ワ）そも（ソモ）いかなる（イカナル）事情（ジジョウ）に（ニ）由来（ユライ）する（スル）ので（ノデ）ある（アル）か（カ）。これら（コレラ）に（ニ）関（カン）する（スル）根本的（コンポンテキ）な（ナ）考察（コウサツ）は（ワ）、われわれ（ワレワレ）の（ノ）日本（ニホン）文化（ブンカ）を（ヲ）将来（ショウライ）において（ニオイテ）正（タダ）しく（シク）導（ミチビ）く（ク）ため（タメ）に（ニ）絶対（ゼッタイ）に（ニ）必要（ヒツヨウ）で（デ）あって（アッテ）、かよう（カヨウ）な（ナ）考慮（コウリョ）なし（ナシ）に（ニ）単（タン）に（ニ）国粋（コクスイ）主義（シュギ）を（ヲ）固執（コシュウ）する（スル）の（ノ）は（ワ）むしろ（ムシロ）はなはだ（ハナハダ）危険（キケン）な（ナ）思想（シソウ）的（テキ）傾向（ケイコウ）で（デ）ある（アル）と（ト）せねば（セネバ）なら（ナラ）ない（ナイ）で（デ）あろう（アロウ）。

　私（ワタシ）の（ノ）見（ミ）る（ル）ところ（トコロ）で（デ）は（ワ）、日本（ニホン）精神（セイシン）と（ト）いえども（イエドモ）、その（ソノ）中（ナカ）に（ニ）は（ワ）民族（ミンゾク）に（ニ）固有（コユウ）な（ナ）、いわば（イワバ）先天的（センテンテキ）な（ナ）要素（ヨウソ）も（モ）あり（アリ）得（エ）る（ル）で（デ）あろう（アロウ）が（ガ）、しかし（シカシ）同時（ドウジ）に（ニ）歴史的（レキシテキ）に（ニ）日本（ニホン）文化（ブンカ）が（ガ）形作（カタチヅク）られ（ラレ）て（テ）来（キ）た（タ）過程（カテイ）における（ニオケル）環境（カンキョウ）によって（ニヨッテ）支配（シハイ）された（サレタ）多（オオ）く（ク）の（ノ）要素（ヨウソ）をも（ヲモ）含（フク）んで（ンデ）いる（イル）の（ノ）で（デ）ある（アル）。それ（ソレ）故（ユエ）に（ニ）すでに（スデニ）環境（カンキョウ）の（ノ）異（コト）なる（ナル）有様（アリサマ）に（ニ）到達（トウタツ）した（シタ）上（ウエ）で（デ）は（ワ）、われわれ（ワレワレ）は（ワ）むしろ（ムシロ）ここ（ココ）に（ニ）適応（テキオウ）する（スル）精神（セイシン）内容（ナイヨウ）を（ヲ）十分（ジュウブン）に（ニ）発達（ハッタツ）させ（サセ）ねば（ネバ）なら（ナラ）ない（ナイ）ので（ノデ）あって（アッテ）、そうで（ソウデ）なくて（ナクテ）は（ワ）国家（コッカ）や（ヤ）民族（ミンゾク）の（ノ）発展（ハッテン）も（モ）期（キ）し（シ）得（エ）られ（ラレ）ない（ナイ）の（ノ）は（ワ）、これ（コレ）こそ（コソ）進化（シンカ）学（ガク）の（ノ）普遍的（フヘンテキ）原理（ゲンリ）で（デ）ある（アル）。環境（カンキョウ）の（ノ）いかん（イカン）に（ニ）かかわらず（カカワラズ）、従来（ジュウライ）の（ノ）精神（セイシン）思想（シソウ）を（ヲ）単（タン）に（ニ）そのまま（ソノママ）に（ニ）固守（コシュ）する（スル）こと（コト）を（ヲ）原理（ゲンリ）と（ト）する（スル）ごとき（ゴトキ）国粋（コクスイ）主義（シュギ）は（ワ）、それ（ソレ）の（ノ）偏狭（ヘンキョウ）性（セイ）と（ト）独断（ドクダン）性（セイ）と（ト）によって（ニヨッテ）、やがて（ヤガテ）それ（ソレ）自身（ジシン）を（ヲ）衰滅（スイメツ）せしめる（セシメル）で（デ）あろう（アロウ）こと（コト）は（ワ）、恐（オソ）らく（ラク）科学的（カガクテキ）に（ニ）実証（ジッショウ）される（サレル）の（ノ）で（デ）ある（アル）。すなわち（スナワチ）国粋（コクスイ）主義（シュギ）は（ワ）それ（ソレ）の（ノ）精神（セイシン）内容（ナイヨウ）が（ガ）現実（ゲンジツ）の（ノ）環境（カンキョウ）に（ニ）どこ（ドコ）まで（マデ）適応（テキオウ）する（スル）か（カ）否（イナ）か（カ）を（ヲ）つまびらか（ツマビラカ）に（ニ）検討（ケントウ）した（シタ）上（ウエ）で（デ）、はじめて（ハジメテ）その（ソノ）価値（カチ）を（ヲ）判断（ハンダン）し（シ）得（エ）る（ル）ので（ノデ）あって（アッテ）、これ（コレ）を（ヲ）欠（カ）いて（イテ）単（タン）に（ニ）それ（ソレ）に（ニ）走（ハシ）る（ル）こと（コト）は（ワ）、あたかも（アタカモ）断崖（ダンガイ）に（ニ）むかって（ムカッテ）盲目的（モウモクテキ）に（ニ）突進（トッシン）する（スル）と（ト）同様（ドウヨウ）の（ノ）危険性（キケンセイ）を（ヲ）さえ（サエ）包蔵（ホウゾウ）する（スル）と（ト）考（カンガ）え（エ）られる（ラレル）。

　私（ワタシ）は（ワ）従来（ジュウライ）の（ノ）日本（ニホン）文化（ブンカ）が（ガ）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）に（ニ）おいて（オイテ）きわめて（キワメテ）貧困（ヒンコン）で（デ）あった（アッタ）こと（コト）を（ヲ）いいた（イイタ）かった（カッタ）の（ノ）である（デアル）。日本（ニホン）のみ（ノミ）で（デ）なく（ナク）支那（シナ）や（ヤ）インド（インド）を（ヲ）含（フク）む（ム）東洋（トウヨウ）において（ニオイテ）何故（ナゼ）に（ニ）自然（シゼン）科学（カガク）が（ガ）興（オコ）ら（ラ）なかった（ナカッタ）か（カ）と（ト）い（ユ）う（ウ）こと（コト）について（ニツイテ）は（ワ）周到（シュウトウ）な（ナ）検討（ケントウ）を（ヲ）要（ヨウ）する（スル）と（ト）思（オモ）う（ウ）。これ（コレ）を（ヲ）もって（モッテ）単（タン）に（ニ）東洋（トウヨウ）精神（セイシン）の（ノ）なか（ナカ）に（ニ）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）が（ガ）欠（カ）けて（ケテ）いる（イル）と（ト）い（ユ）う（ウ）こと（コト）に（ニ）帰（キ）する（スル）だけ（ダケ）で（デ）は（ワ）何（ナニ）の（ノ）価値（カチ）も（モ）ない（ナイ）。それ（ソレ）は（ワ）確（タシ）か（カ）な（ナ）事実（ジジツ）で（デ）ある（アル）に（ニ）は（ワ）ちがい（チガイ）ない（ナイ）が（ガ）、この（コノ）事実（ジジツ）を（ヲ）結果（ケッカ）せしめ（セシメ）ね（ネ）ば（バ）なら（ナラ）なかった（ナカッタ）ところ（トコロ）の（ノ）過去（カコ）の（ノ）歴史的（レキシテキ）環境（カンキョウ）が（ガ）どんな（ドンナ）もの（モノ）で（デ）あった（アッタ）かを（カヲ）、われわれ（ワレワレ）は（ワ）分析（ブンセキ）考究（コウキュウ）し（シ）なくて（ナクテ）は（ワ）いけない（イケナイ）。その（ソノ）上（ウエ）で（デ）はじめて（ハジメテ）民族的（ミンゾクテキ）本質（ホンシツ）の（ノ）姿（スガタ）が（ガ）真（シン）に（ニ）闡明（センメイ）せ（セ）られる（ラレル）の（ノ）で（デ）あって（アッテ）、だから（ダカラ）こそ（コソ）私（ワタシ）は（ワ）一定（イッテイ）の（ノ）環境（カンキョウ）の（ノ）もと（モト）に（ニ）のみ（ノミ）あらわれた（アラワレタ）過去（カコ）の（ノ）精神（セイシン）内容（ナイヨウ）を（ヲ）ただちに（タダチニ）われわれ（ワレワレ）に（ニ）固有（コユウ）な（ナ）もの（モノ）と（ト）思惟（シイ）する（スル）のを（ノヲ）誤（アヤマ）って（ッテ）いる（イル）と（ト）する（スル）ので（ノデ）、これ（コレ）に（ニ）ついても（ツイテモ）真（シン）に（ニ）科学的（カガクテキ）な（ナ）心理（シンリ）考察（コウサツ）を（ヲ）要（ヨウ）する（スル）と（ト）考（カンガ）える（エル）ので（ノデ）ある（アル）。

　すでに（スデニ）一般（イッパン）に（ニ）知（シ）られて（ラレテ）いる（イル）とおり（トオリ）に（ニ）、日本（ニホン）文化（ブンカ）の（ノ）特質（トクシツ）は（ワ）、いつも（イツモ）具象的（グショウテキ）な（ナ）直観的（チョッカンテキ）な（ナ）事物（ジブツ）考察（コウサツ）において（ニオイテ）あらわれ（アラワレ）、しかも（シカモ）それ（ソレ）が（ガ）他（ホカ）に（ニ）比（ヒ）類（ルイ）を（ヲ）見（ミ）ない（ナイ）ほど（ホド）な（ナ）緻密（チミツ）細微（サイビ）の（ノ）域（イキ）に（ニ）到達（トウタツ）して（シテ）いる（イル）ので（ノデ）ある（アル）。同一（ドウイツ）の（ノ）意（イ）の（ノ）言語（ゲンゴ）の（ノ）表現（ヒョウゲン）様式（ヨウシキ）が（ガ）きわめて（キワメテ）多種類（タシュルイ）に（ニ）わたる（ワタル）と（ト）い（ユ）う（ウ）わが（ワガ）国語（コクゴ）の（ノ）特異性（トクイセイ）や（ヤ）、日本（ニホン）文学（ブンガク）および（オヨビ）他（ホカ）の（ノ）芸術（ゲイジュツ）における（ニオケル）情趣（ジョウシュ）的（テキ）感覚（カンカク）の（ノ）一種（イッシュ）の（ノ）風格（フウカク）や（ヤ）いわゆる（イワユル）諸（ショ）芸道（ゲイドウ）の（ノ）独自的（ドクジテキ）な（ナ）発達（ハッタツ）の（ノ）ごとき（ゴトキ）は（ワ）、ことごとく（コトゴトク）これ（コレ）に（ニ）属（ゾク）する（スル）もの（モノ）で（デ）ある（アル）。ところが（トコロガ）これ（コレ）に（ニ）反（カエ）し（シ）て（テ）抽象的（チュウショウテキ）な（ナ）論理的（ロンリテキ）な（ナ）思考（シコウ）に（ニ）至（イタ）って（ッテ）は（ワ）その（ソノ）見（ミ）る（ル）べき（ベキ）もの（モノ）が（ガ）きわめて（キワメテ）稀（マレ）で（デ）ある（アル）と（ト）い（ユ）う（ウ）こと（コト）は（ワ）、実（ジツ）に（ニ）驚（オドロ）く（ク）ばかり（バカリ）で（デ）ある（アル）。だが（ダガ）、しかし（シカシ）この（コノ）事（コト）によって（ニヨッテ）ただち（タダチ）に（ニ）わが（ワガ）日本（ニホン）民族（ミンゾク）に（ニ）は（ワ）かよう（カヨウ）な（ナ）抽象（チュウショウ）的（テキ）論理的（ロンリテキ）思考（シコウ）が（ガ）先天的（センテンテキ）に（ニ）欠如（ケツジョ）して（シテ）いる（イル）と（ト）速断（ソクダン）して（シテ）は（ワ）いけない（イケナイ）。むしろ（ムシロ）多年（タネン）の（ノ）歴史的（レキシテキ）環境（カンキョウ）が（ガ）われわれ（ワレワレ）を（ヲ）して（シテ）かく（カク）あらしめた（アラシメタ）と（ト）考（カンガ）える（エル）こと（コト）が（ガ）できる（デキル）から（カラ）で（デ）ある（アル）。

　私（ワタシ）は（ワ）しかし（シカシ）ここ（ココ）に（ニ）注目（チュウモク）すべき（スベキ）一（ヒト）つ（ツ）の（ノ）事実（ジジツ）を（ヲ）捉（トラ）える（エル）こと（コト）が（ガ）できる（デキル）よう（ヨウ）に（ニ）思（オモ）う（ウ）。日本人（ニホンジン）が（ガ）具象的（グショウテキ）な（ナ）直観的（チョッカンテキ）な（ナ）事物（ジブツ）考察（コウサツ）のみ（ノミ）を（ヲ）行（オコナ）って（ッテ）いた（イタ）と（ト）い（ユ）う（ウ）こと（コト）は（ワ）、与（アタ）えられた（エラレタ）自然的（シゼンテキ）環境（カンキョウ）の（ノ）なか（ナカ）に（ニ）満足（マンゾク）を（ヲ）もとめて（モトメテ）いた（イタ）のを（ノヲ）意味（イミ）する（スル）の（ノ）である（デアル）。たとい（タトイ）その（ソノ）国土（コクド）が（ガ）各自（カクジ）の（ノ）生活（セイカツ）に（ニ）対（タイ）して（シテ）恵（メグ）まれた（マレタ）もの（モノ）で（デ）あった（アッタ）としても（トシテモ）、それ（ソレ）以上（イジョウ）多（オオ）く（ク）を（ヲ）求（モト）める（メル）こと（コト）に（ニ）あえて（アエテ）進（スス）まなかった（マナカッタ）と（ト）い（ユ）う（ウ）の（ノ）は（ワ）、確（タシ）かに（カニ）それだけ（ソレダケ）楽天的（ラクテンテキ）もしく（モシク）は（ワ）諦念（テイネン）的（テキ）で（デ）あった（アッタ）ゆえ（ユエ）で（デ）は（ワ）ない（ナイ）で（デ）あろう（アロウ）か（カ）。西欧人（セイオウジン）が（ガ）むしろ（ムシロ）陰惨（インサン）深刻（シンコク）な（ナ）性情（セイジョウ）を（ヲ）もって（モッテ）いる（イル）のに（ノニ）くらべて（クラベテ）、日本人（ニホンジン）は（ワ）かえって（カエッテ）安泰（アンタイ）明朗（メイロウ）である（デアル）。支那（シナ）において（ニオイテ）仏教（ブッキョウ）が（ガ）著（イチジル）しく（シク）厭世的（エンセイテキ）否定的（ヒテイテキ）で（デ）ある（アル）のに（ノニ）くらべて（クラベテ）さえ（サエ）、日本（ニホン）に（ニ）伝来（デンライ）して（シテ）は（ワ）確（タシ）か（カ）に（ニ）その（ソノ）傾向（ケイコウ）を（ヲ）薄（ウス）く（ク）して（シテ）いる（イル）。もし（モシ）かような（カヨウナ）もの（モノ）が（ガ）われわれ（ワレワレ）の（ノ）民族的（ミンゾクテキ）特質（トクシツ）で（デ）ある（アル）と（ト）する（スル）なら（ナラ）、それ（ソレ）は（ワ）ややも（ヤヤモ）すれば（スレバ）われわれ（ワレワレ）を（ヲ）偸安（トウアン）的（テキ）に（ニ）導（ミチビ）く（ク）もの（モノ）として（トシテ）大（オオ）いに（イニ）戒（イマシ）め（メ）ねば（ネバ）なら（ナラ）ない（ナイ）と（ト）思（オモ）われる（ワレル）。

　しかし（シカシ）これ（コレ）とても（トテモ）穏和（オンワ）な（ナ）美（ウツク）しい（シイ）風土（フウド）に（ニ）恵（メグ）まれた（マレタ）とともに（トトモニ）、従来（ジュウライ）日本（ニホン）が（ガ）国際的（コクサイテキ）孤立（コリツ）の（ノ）環境（カンキョウ）に（ニ）置（オ）かれ（カレ）て（テ）、外敵（ガイテキ）を（ヲ）憂（ウレ）える（エル）こと（コト）を（ヲ）ほとんど（ホトンド）要（ヨウ）し（シ）なかった（ナカッタ）よう（ヨウ）な（ナ）多年（タネン）の（ノ）歴史（レキシ）が（ガ）国民（コクミン）に（ニ）かよう（カヨウ）な（ナ）習性（シュウセイ）を（ヲ）形作（カタチヅク）る（ル）に（ニ）至（イタ）らしめた（ラシメタ）と（ト）見（ミ）る（ル）こと（コト）が（ガ）おそらく（オソラク）正（タダ）しい（シイ）ので（ノデ）あって（アッテ）、単（タン）に（ニ）抽象的（チュウショウテキ）に（ニ）この（コノ）歴史的（レキシテキ）地理的（チリテキ）環境（カンキョウ）から（カラ）引（ヒ）き（キ）離（ハナ）して（シテ）民族性（ミンゾクセイ）を（ヲ）考（カンガ）える（エル）こと（コト）は（ワ）人間（ニンゲン）心理（シンリ）の（ノ）発展（ハッテン）過程（カテイ）を（ヲ）無視（ムシ）した（シタ）もの（モノ）で（デ）あろう（アロウ）。

　ともかく（トモカク）この（コノ）よう（ヨウ）に（ニ）して（シテ）東洋（トウヨウ）の（ノ）学術（ガクジュツ）は（ワ）ほとんど（ホトンド）具象的（グショウテキ）直観的（チョッカンテキ）思考（シコウ）の（ノ）上（ウエ）に（ニ）成（ナ）り（リ）立（タ）って（ッテ）いる（イル）。自然（シゼン）科学的（カガクテキ）な（ナ）もの（モノ）として（トシテ）は（ワ）、わずか（ワズカ）に（ニ）暦学（レキガク）や（ヤ）漢方（カンポウ）医学（イガク）や（ヤ）本草（ホンゾウ）学（ガク）の（ノ）ごとき（ゴトキ）が（ガ）ある（アル）に（ニ）過（ス）ぎないが（ギナイガ）、それら（ソレラ）が（ガ）まったく（マッタク）直観的（チョッカンテキ）経験（ケイケン）の（ノ）上（ウエ）に（ニ）のみ（ノミ）形作（カタチヅク）られ（ラレ）、一歩（イッポ）も（モ）抽象的（チュウショウテキ）に（ニ）進（スス）ま（マ）なかった（ナカッタ）の（ノ）は（ワ）、むしろ（ムシロ）顕著（ケンチョ）な（ナ）観（カン）を（ヲ）呈（テイ）して（シテ）いる（イル）。多（オオ）く（ク）の（ノ）実用的（ジツヨウテキ）な（ナ）諸（ショ）技術（ギジュツ）の（ノ）また（マタ）同様（ドウヨウ）で（デ）あった（アッタ）のも（ノモ）注目（チュウモク）されねば（サレネバ）なら（ナラ）ない（ナイ）。

　ところが（トコロガ）この（コノ）間（アイダ）に（ニ）あって（アッテ）ひとり（ヒトリ）数学（スウガク）が（ガ）はなはだ（ハナハダ）抽象的（チュウショウテキ）に（ニ）進（スス）んだ（ンダ）の（ノ）は（ワ）一見（イッケン）奇異（キイ）の（ノ）感（カン）が（ガ）ある（アル）。すなわち（スナワチ）和算（ワザン）と（ト）称（ショウ）せ（セ）られる（ラレル）もの（モノ）は（ワ）最初（サイショ）は（ワ）支那（シナ）の（ノ）算法（サンポウ）から（カラ）発展（ハッテン）した（シタ）もの（モノ）で（デ）ある（アル）が（ガ）、十七（ジュウナナ）世紀（セイキ）以後（イゴ）大（オオ）いに（イニ）進（スス）み（ミ）、関孝和（セキタカカズ）（一六四二（センロッピャクヨンジュウニネン）―（カラ）一七〇八（センナナヒャクハチネン））に（ニ）至（イタ）って（ッテ）は（ワ）、筆算（ヒッサン）式（シキ）代数学（ダイスウガク）の（ノ）創案（ソウアン）を（ヲ）はじめ（ハジメ）とし（トシ）、方程式（ホウテイシキ）論（ロン）、行列（ギョウレツ）式（シキ）論（ロン）、無限（ムゲン）級数（キュウスウ）、極大（キョクダイ）極小（キョクショウ）の（ノ）問題（モンダイ）、整数（セイスウ）論（ロン）、三角（サンカク）術（ジュツ）等（ナド）に（ニ）関（カン）する（スル）高等（コウトウ）数学（スウガク）を（ヲ）とりあつかい（トリアツカイ）、その（ソノ）著（イチジル）しい（シイ）発達（ハッタツ）を（ヲ）実現（ジツゲン）せしめた（セシメタ）こと（コト）は（ワ）、実（ジツ）に（ニ）驚（オドロ）くに（クニ）足（タ）りる（リル）。爾後（ジゴ）明治（メイジ）の（ノ）初年（ショネン）に（ニ）至（イタ）る（ル）まで（マデ）多（オオ）く（ク）の（ノ）和算家（ワサンカ）が（ガ）輩出（ハイシュツ）した（シタ）が（ガ）、この（コノ）一事（イチジ）は（ワ）日本人（ニホンジン）において（ニオイテ）も（モ）また（マタ）抽象的（チュウショウテキ）論理的（ロンリテキ）能力（ノウリョク）が（ガ）決（ケッ）して（シテ）欠（カ）けて（ケテ）いる（イル）もの（モノ）で（デ）ない（ナイ）こと（コト）を（ヲ）示（シメ）す（ス）一（ヒト）つ（ツ）の（ノ）実証（ジッショウ）として（トシテ）、われわれ（ワレワレ）の（ノ）大（オオ）いに（イニ）意（イ）を（ヲ）強（ツヨ）う（ウ）する（スル）に（ニ）足（タ）りる（リル）もの（モノ）である（デアル）。だが（ダガ）しかも（シカモ）それ（ソレ）は（ワ）一般（イッパン）に（ニ）いえば（イエバ）かえって（カエッテ）あまりに（アマリニ）も（モ）抽象的（チュウショウテキ）に（ニ）過（ス）ぎる（ギル）もので（モノデ）あった（アッタ）。つまり（ツマリ）、これら（コレラ）の（ノ）和算家（ワサンカ）の（ノ）とりあつかった（トリアツカッタ）問題（モンダイ）は（ワ）すべて（スベテ）それ（ソレ）自身（ジシン）知能的（チノウテキ）技術（ギジュツ）を（ヲ）誇示（コジ）する（スル）もの（モノ）で（デ）しか（シカ）なかった（ナカッタ）。それ（ソレ）は（ワ）あたかも（アタカモ）碁（ゴ）、将棋（ショウギ）の（ノ）よう（ヨウ）な（ナ）知能（チノウ）的（テキ）遊戯（ユウギ）と（ト）同等（ドウトウ）の（ノ）観（カン）さえ（サエ）ある（アル）。しかも（シカモ）当時（トウジ）の（ノ）封建的（ホウケンテキ）社会（シャカイ）に（ニ）あって（アッテ）、これら（コレラ）の（ノ）知識（チシキ）は（ワ）いたずら（イタズラ）に（ニ）秘伝（ヒデン）として（トシテ）隔絶（カクゼツ）せら（セラ）れ（レ）て（テ）、一般的（イッパンテキ）普及（フキュウ）の（ノ）機会（キカイ）を（ヲ）失（ウシナ）う（ウ）と（ト）ともに（トモニ）、この（コノ）抽象的（チュウショウテキ）思考（シコウ）を（ヲ）他（ホカ）の（ノ）具体的（グタイテキ）事物（ジブツ）の（ノ）上（ウエ）に（ニ）利用（リヨウ）する（スル）こと（コト）が（ガ）まったく（マッタク）行（オコナ）われ（ワレ）なかった（ナカッタ）。

　関（セキ）孝和（タカカズ）が（ガ）ニュートン（ニュートン）（一六四二（センロッピャクヨンジュウニネン）―（カラ）一七二七（センナナヒャクニジュウナナネン））と（ト）同年（ドウネン）に（ニ）生（ウマ）れて（レテ）いる（イル）こと（コト）は（ワ）、歴史的（レキシテキ）に（ニ）大（オオ）いに（イニ）われわれ（ワレワレ）の（ノ）興味（キョウミ）を（ヲ）ひく（ヒク）ところ（トコロ）で（デ）ある（アル）が（ガ）、ニュートン（ニュートン）が（ガ）万有（バンユウ）引力（インリョク）の（ノ）問題（モンダイ）を（ヲ）解（ト）く（ク）ため（タメ）に（ニ）微積分（ビセキブン）学（ガク）を（ヲ）発明（ハツメイ）した（シタ）のに（ノニ）反（カエ）して（シテ）、関（セキ）孝和（タカカズ）が（ガ）純粋（ジュンスイ）に（ニ）抽象的（チュウショウテキ）に（ニ）種々（シュジュ）の（ノ）数学的（スウガクテキ）関係（カンケイ）を（ヲ）導（ミチビ）き（キ）出（ダ）した（シタ）と（ト）い（ユ）う（ウ）点（テン）に（ニ）おいて（オイテ）、たとい（タトイ）数学（スウガク）上（ジョウ）の（ノ）功績（コウセキ）に（ニ）関（カン）して（シテ）多（オオ）く（ク）差（サ）等（ナド）を（ヲ）論（ロン）じ（ジ）ない（ナイ）と（ト）しても（シテモ）、それ（ソレ）の（ノ）一般（イッパン）学術的（ガクジュツテキ）効果（コウカ）に（ニ）対（タイ）する（スル）重大（ジュウダイ）な（ナ）差別（サベツ）が（ガ）生（ショウ）じた（ジタ）ので（ノデ）あった（アッタ）。これ（コレ）について（ニツイテ）は（ワ）既述（キジュツ）の（ノ）ごとく（ゴトク）社会的（シャカイテキ）環境（カンキョウ）が（ガ）大（オオ）いに（イニ）作用（サヨウ）して（シテ）いる（イル）の（ノ）は（ワ）もちろん（モチロン）で（デ）あるが（アルガ）、ともかく（トモカク）ニュートン（ニュートン）以後（イゴ）西洋（セイヨウ）において（ニオイテ）あれ（アレ）ほど（ホド）すばらしく（スバラシク）自然（シゼン）科学（カガク）が（ガ）発達（ハッタツ）し（シ）きたった（キタッタ）と（ト）い（ユ）う（ウ）事実（ジジツ）と（ト）、わが（ワガ）国（クニ）において（ニオイテ）それ（ソレ）の（ノ）微細（ビサイ）な（ナ）萌芽（ホウガ）さえ（サエ）も（モ）見（ミ）られ（ラレ）なかった（ナカッタ）こと（コト）を（ヲ）対比（タイヒ）して（シテ）、われわれ（ワレワレ）は（ワ）いまさら（イマサラ）に（ニ）両者（リョウシャ）の（ノ）著（イチジル）し（シ）い（イ）相違（ソウイ）に（ニ）驚（オドロ）か（カ）ない（ナイ）わけ（ワケ）に（ニ）は（ワ）ゆか（ユカ）ない（ナイ）であろ（デアロ）う（ウ）。

　西洋（セイヨウ）の（ノ）自然（シゼン）科学（カガク）が（ガ）わが（ワガ）国（クニ）に（ニ）輸入（ユニュウ）されて（サレテ）、今日（キョウ）で（デ）は（ワ）ともかく（トモカク）同等（ドウトウ）な（ナ）科学（カガク）的（テキ）知識（チシキ）を（ヲ）獲得（カクトク）する（スル）に（ニ）至（イタ）った（ッタ）の（ノ）は（ワ）、幸慶（コウケイ）に（ニ）値（アタ）いする（イスル）。だが（ダガ）、私（ワタシ）の（ノ）とくに（トクニ）注意（チュウイ）したい（シタイ）こと（コト）は（ワ）、知識（チシキ）は（ワ）一朝（イッチョウ）にして（ニシテ）学（マナ）び（ビ）得（エ）る（ル）もの（モノ）で（デ）は（ワ）あっても（アッテモ）、これ（コレ）が（ガ）根本（ネモト）を（ヲ）なす（ナス）ところ（トコロ）の（ノ）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）の（ノ）涵養（カンヨウ）は（ワ）けっして（ケッシテ）さほど（サホド）容易（ヨウイ）で（デ）は（ワ）ない（ナイ）と（ト）い（ユ）う（ウ）点（テン）である（デアル）。今日（キョウ）まで（マデ）の（ノ）日本（ニホン）文化（ブンカ）に（ニ）おいて（オイテ）この（コノ）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）を（ヲ）欠（カ）いて（イテ）いた（イタ）の（ノ）は（ワ）、一（イチ）に（ニ）従来（ジュウライ）の（ノ）環境（カンキョウ）による（ニヨル）ので（ノデ）ある（アル）と（ト）解（ホグ）した（シタ）ところ（トコロ）で（デ）、さて（サテ）環境（カンキョウ）の（ノ）変化（ヘンカ）が（ガ）民族（ミンゾク）思想（シソウ）に（ニ）具体的（グタイテキ）な（ナ）影響（エイキョウ）を（ヲ）持来（モチキタ）さし（サシ）める（メル）まで（マデ）に（ニ）は（ワ）、実（ジツ）に（ニ）その（ソノ）間（アイダ）における（ニオケル）多大（タダイ）の（ノ）努力（ドリョク）と（ト）奮励（フンレイ）とを（トヲ）必要（ヒツヨウ）と（ト）しなければ（シナケレバ）なら（ナラ）ない（ナイ）。今日（キョウ）もと（モト）より（ヨリ）国家（コッカ）存立（ソンリツ）の（ノ）重大性（ジュウダイセイ）について（ニツイテ）十分（ジュウブン）に（ニ）眼（メ）ざめて（ザメテ）いるもの（イルモノ）に（ニ）とって（トッテ）、この（コノ）異常（イジョウ）な（ナ）決意（ケツイ）の（ノ）遂行（スイコウ）の（ノ）可能性（カノウセイ）を（ヲ）疑（ウタガ）う（ウ）べき（ベキ）で（デ）は（ワ）ない（ナイ）と（ト）しても（シテモ）、われわれ（ワレワレ）は（ワ）なお（ナオ）そこに（ソコニ）一抹（イチマツ）の（ノ）憂慮（ユウリョ）を（ヲ）消（ケ）し（シ）去（サ）る（ル）わけ（ワケ）に（ニ）は（ワ）ゆか（ユカ）ない（ナイ）の（ノ）である（デアル）。

　わが（ワガ）国（クニ）の（ノ）科学的（カガクテキ）研究（ケンキュウ）において（ニオイテ）なお（ナオ）創意的（ソウイテキ）なる（ナル）ものの（モノノ）はなはだ（ハナハダ）とぼしい（トボシイ）の（ノ）は（ワ）現（ゲン）に（ニ）否定（ヒテイ）せ（セ）られ（ラレ）ない（ナイ）事実（ジジツ）で（デ）ある（アル）。これ（コレ）は（ワ）一面（イチメン）において（ニオイテ）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）の（ノ）涵養（カンヨウ）の（ノ）不足（フソク）を（ヲ）ものがたる（モノガタル）と（ト）共（トモ）に（ニ）、他面（タメン）において（ニオイテ）は（ワ）上述（ジョウジュツ）の（ノ）多年（タネン）の（ノ）偸安（トウアン）的（テキ）な（ナ）習性（シュウセイ）が（ガ）災（ワザワ）い（イ）して（シテ）いる（イル）ので（ノデ）は（ワ）ない（ナイ）か（カ）と（ト）考（カンガ）えら（エラ）れる（レル）。この（コノ）事（コト）を（ヲ）もって（モッテ）、ドイツ（ドイツ）人（ジン）が（ガ）由来（ユライ）世界（セカイ）に（ニ）おいて（オイテ）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）に（ニ）最（モット）も（モ）長（チョウ）じて（ジテ）いる（イル）のと（ノト）対比（タイヒ）する（スル）ならば（ナラバ）、いたずらに（イタズラニ）表面的（ヒョウメンテキ）に（ニ）のみ（ノミ）ドイツ（ドイツ）国粋（コクスイ）主義（シュギ）を（ヲ）模倣（モホウ）する（スル）こと（コト）の（ノ）危険性（キケンセイ）を（ヲ）明（アキ）らか（ラカ）に（ニ）する（スル）こと（コト）が（ガ）できる（デキル）で（デ）あろう（アロウ）。同一（ドウイツ）の（ノ）国粋（コクスイ）主義（シュギ）の（ノ）名目（メイモク）の（ノ）もとに（モトニ）、だが（ダガ）ドイツ（ドイツ）科学（カガク）に（ニ）対比（タイヒ）する（スル）どんな（ドンナ）日本（ニホン）科学（カガク）が（ガ）あり（アリ）得（エ）る（ル）ので（ノデ）あるか（アルカ）。しかも（シカモ）今日（コンニチ）は（ワ）科学（カガク）の（ノ）有無（ウム）こそ（コソ）国家（コッカ）の（ノ）運命（ウンメイ）を（ヲ）決定（ケッテイ）する（スル）最大（サイダイ）の（ノ）要素（ヨウソ）で（デ）ある（アル）こと（コト）は（ワ）疑（ウタガ）う（ウ）べくも（ベクモ）ない（ナイ）。それ（ソレ）故（ユエ）に（ニ）日本（ニホン）文化（ブンカ）を（ヲ）将来（ショウライ）に（ニ）おいて（オイテ）一層（イッソウ）盛（サカ）ん（ン）なら（ナラ）しめる（シメル）ため（タメ）に（ニ）私（ワタシ）は（ワ）何（ナニ）を（ヲ）おいても（オイテモ）科学的（カガクテキ）思想（シソウ）の（ノ）涵養（カンヨウ）こそ（コソ）最（モット）も（モ）重要（ジュウヨウ）で（デ）ある（アル）と（ト）しない（シナイ）わけ（ワケ）に（ニ）ゆかない（ユカナイ）ので（ノデ）ある（アル）。

■ 原書情報（青空文庫）

図書カード：No.55750 （新字新仮名）

https://www.aozora.gr.jp/cards/001429/card55750.html

https://www.aozora.gr.jp/cards/001429/files/55750_59491.html

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★（通常（ツウジョウ）版（バン））全部（ゼンブ）の（ノ）漢字（カンジ）に（ニ）ルビ（るび）を（ヲ）振（フ）って（ッテ）みたく（ミタク）は（ハ）ありませんか（アリマセンカ）？

　　https://kakuyomu.jp/works/1177354055305889978/episodes/1177354055328903319

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★（カタカナ（かたかな）版（バン））この（コノ）クラシカル（くらしかる）な（ナ）エッセイ（えっせい）に（ニ）フリガナ（ふりがな）を（ヲ）！

　　https://kakuyomu.jp/works/1177354055324161539/episodes/1177354055381506590

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★（ローマ（ろーま）字（ジ）版（バン））こんな（コンナ）漢字（カンジ）に（ニ）ローマ（ろーま）字（ジ）が（ガ）振（フ）れる（レル）わけ（ワケ）が（ガ）ない（ナイ）！？

　　https://kakuyomu.jp/works/1177354055360859507/episodes/1177354055381578835

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https://www.aozora.gr.jp/

青空（アオゾラ）文庫（ブンコ）と（ト）は（ワ）？

　青空（アオゾラ）文庫（ブンコ）は（ワ）、誰（ダレ）に（ニ）でも（デモ）アクセス（あくせす）できる（デキル）自由（ジユウ）な（ナ）電子（デンシ）本（ホン）を（ヲ）、図書館（トショカン）の（ノ）ように（ヨウニ）インターネット（いんたーねっと）上（ジョウ）に（ニ）集（アツ）め（メ）よう（ヨウ）と（ト）する（スル）活動（カツドウ）です（デス）。

　著作（チョサク）権（ケン）の（ノ）消滅（ショウメツ）した（シタ）作品（サクヒン）と（ト）、「自由（ジユウ）に（ニ）読（ヨ）んで（ンデ）もらって（モラッテ）かまわ（カマワ）ない（ナイ）」と（ト）された（サレタ）もの（モノ）を（ヲ）、テキスト（てきすと）と（ト）Ｘ（エックス）ＨＴＭＬ（エイチティエムエル）（一部（イチブ）は（ワ）ＨＴＭＬ（エイチティエムエル））形式（ケイシキ）に（ニ）電子（デンシ）化（カ）した（シタ）上（ウエ）で（デ）揃（ソロ）えて（エテ）います（イマス）。

https://www.aozora.gr.jp/guide/aozora_bunko_faq.html

Ｑ（キュー）：青空（アオゾラ）文庫（ブンコ）って（ッテ）、何（ナニ）ですか（デスカ）？

Ａ（エー）：1997（センキュウヒャクキュウジュウナナ）年（ネン）に（ニ）始（ハジ）まった（マッタ）ボランティア（ぼらんてぃあ）活動（カツドウ）で（デ）、誰（ダレ）に（ニ）でも（デモ）アクセス（あくせす）できる（デキル）自由（ジユウ）な（ナ）電子（デンシ）本（ボン）を（ヲ）、共有（キョウユウ）可能（カノウ）な（ナ）もの（モノ）として（トシテ）図書館（トショカン）の（ノ）よう（ヨウ）に（ニ）インターネット（いんたーねっと）上（ジョウ）に（ニ）集（アツ）め（メ）よう（ヨウ）として（トシテ）おり（オリ）ます（マス）。現在（ゲンザイ）は（ワ）、日本（ニッポン）国内（コクナイ）で（デ）著作（チョサク）権（ケン）保護（ホゴ）期間（キカン）の（ノ）満了（マンリョウ）した（シタ）作品（サクヒン）を（ヲ）中心（チュウシン）に（ニ）、ボランティア（ぼらんてぃあ）の（ノ）みなさん（ミナサン）の（ノ）力（チカラ）に（ニ）よって（ヨッテ）電子（デンシ）化（カ）作業（サギョウ）を（ヲ）進（スス）めて（メテ）います（イマス）。青空（アオゾラ）文庫（ブンコ）は（ワ）そう（ソウ）いった（イッタ）電子（デンシ）化（カ）活動（カツドウ）の（ノ）ため（タメ）の（ノ）、また（マタ）その（ソノ）成果（セイカ）物（ブツ）を（ヲ）アーカイ（あーかい）ヴ（ヴ）して（シテ）おく（オク）ため（タメ）の（ノ）場（バ）でも（デモ）あり（アリ）、そこ（ソコ）から（カラ）コピー（こぴー）された（サレタ）本（ホン）の（ノ）集成（シュウセイ）や（ヤ）活用（カツヨウ）事例（ジレイ）も（モ）また（マタ）〈青空（アオゾラ）文庫（ブンコ）〉と（ト）呼（ヨ）ば（バ）れる（レル）こと（コト）が（ガ）あり（アリ）ます（マス）。詳（クワ）しく（シク）は（ワ）「青空（アオゾラ）文庫（ブンコ）の（ノ）しくみ（シクミ）」（http://www.aozora.gr.jp/aozora_bunkono_shikumi.html）を（ヲ）ご（ゴ）一読（イチドク）ください（クダサイ）。