ハーピーENDはバッドエンド

ごまみそ

第1話

「痛い」 ある人はそう悲痛に叫びながら。


「許して」 ある人はみっともなく許しを乞いながら。


「なんで」 ある人は理解出来ずに。


産まれてくる時は、みな大声で泣き叫ぶのに、死ぬ時は全く違う。


人は簡単に死ぬ。

精一杯行きた人も、自堕落に生きた人も、みな平等に死ぬ。

だけど、大抵、人は死にたくないものだ。

だから、努力して、努力して己を磨く。

それが報われなくても最後はやりきった達成感を噛み締めて死ぬ。

それが人生であり。

全てのゴールだろう。



┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈



きらりと光るものが見える。

奴にも何か思うことがあるのだろうか。

既に息は絶え絶え。

やるなら今しかないのだ。

どうせ後悔はしていない。

何故俺なんだ。

何故バレた。

そう思っているだけだ。


そう自分で解釈し、警棒を腰のベルトから抜く。

この警棒は自分で作ったお手製の警棒である。

家の裏にある古びた倉庫は、扉が錆びていたのだが、

無理矢理なんとか扉を開けて、まだ綺麗な鉄パイプにテープを巻き付け、柄の部分を作った。

先の部分は不格好だがそのまま。

これも味を出してるし、とりあえず放置している。


この警棒や、催涙ガス、ほかの装備も全て手作りである。

理由は単純明解、まだ警察には所属していないから、装備は手作りする他ないのだ。


警察。

それは幼少の頃からの夢だった。

俺はこの街を愛しているし、守りたい。そう思って警察に所属したかった。

なぜこの街が好きか、その理由も漠然とした物だが、警察官はカッコイイし、みんなの憧れだ。


警察になるためには試験を通過する必要があるのだが

その試験を受ける資格は、〈金銭の提供〉そして、 〈 犯罪者5名の確保〉。

金銭については働けばいいが、犯罪者の確保は余りにもハードルが高すぎるのだ。

だから、警察官はエリート集団ともくされているし、人気だし、給料もいいのだ。


そして、最後の5人目がこの男である。

この男を見つけたのは30分前。

「最近商品が無くなるのよね」

と、相談を受けて1ヶ月近くパトロールしていた衣料品店でコートをバックに入れてこっそりと店を出たところを、一部始終を見ていた俺は捕まえようとしたのだ。

そこから地獄のおいかけっこが始まった。

泥棒はコートをいれているリュックを持っているだけで、あとはボロボロで、シミだらけのTシャツに黒いズボン。

ラフな格好だし、慣れているのか俺が捕まえようとした瞬間迷う素振りもせず一目散に逃げ始めた。

こいつが商品の無くなる原因なのだろう。

常習犯となると、より許すわけには行かない。


だが、近接戦闘に重きを置いていた俺は催涙ガスやらなんやら重装備。

追いかけること自体想定していないのだ。

仕方なく装備を脱ぎ捨て、軽い警棒を腰のベルトにさして全力疾走し、ついに泥棒を追い詰めたのだ。

ここまで全力で走るのはいささか辛い。

というより、この男こそ以上だ。

相当鍛えていなければ、こんな長距離をあのスピードでダッシュできるわけがない。

それに、逃げ方も緻密に計算されており、体力を大きく損耗するようなルートを通っていた。

そこまで逃げるのに慣れていたのか、はたまた、能力があったのに、俺の目の前でこの男は何も無い空き地にポツンと立っていた。


そして、男はどこからともなく取り出した鉄パイプを握りしめてこっちを凝視していた。



警棒を腰のベルトから抜く。

何か刺激的な匂いがどこからかする。

その匂いは、今から起こる危険を予期してか、より鮮明に濃くなっていく。

鼻の奥を刺激するような、独特の匂い。



これは、悪の匂いだ。


初速。

男が凝視しているのは警棒。

その警棒を右に大きく振りかぶり視線を誘導した瞬間

素早く左の壁を使い反動で男の目の前に入り込む。

右に大きく振りかぶった警棒を男のみぞおちに叩きこもうと勢い良く振る。

だが、それを読んでいたのか鉄パイプで警棒を受け止めると、そのまま鉄パイプのした部分で足を狙って打ち付ける。


明らかに使い慣れてる動き。

達人とまでは行かなくても、明らかに洗練された動き。

一般人じゃないのか?

そんな思考もまもなく次の突きが来る。


この時気付いた。

これは、追いかけているのは自分だったが、この男は面倒だから逃げていただけで殺すならすぐ殺せたことに。

既に捕獲は無理だろう。


ここから命をかけた闘いが始まる。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


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