第6話…ランチと元彼と…
日奈子とケンタはオフィス街のパスタ屋に居た、偶然日奈子の選んだバイト先とケンタが言ってた勤め先の駅が同じだったのだった
「平均より遥かにカワイイと言われた私が言うのは失礼だとは思うけど、よく考えたら私レベルの顔立ちの人って結構居るよね…」
「それは無いかな…」
「それにそのウチ見慣れるって…」
「それは無いな…」
先程より1オクターブ低い声が日奈子は気になった
『私が外見に自信持てなくなったのっていつからだっけ?』
日奈子は少し考えた
「お花摘んで来る!」
「アナタは女子ですか?」
考えながらトイレに向かうケンタの背中に言った
先程の答えだが、わりとスグに思い出せた
「日奈子は高校時代にさぁ…」
その張本人が目の前に現れたからだった
「記憶から消してたわ…」
とにかくマウンティングを取りたがるこの男のせいで自分は外見に自信を持てなくなったのだった
「へー、そうなんですか…日奈子さんの過去が知れて嬉しいです」
コイツも何で嬉しそうに相槌打ってんだよ…
日奈子のケンタを見る目が険しくなった
『何かとマウンティング取りたがるし最低な男だけど、グイグイ引っ張るこの人と居て、私は楽ではあったんだ、自分で決めなくても良いし…』
「笑っちゃうよね、本当にコイツは俺が居ないと何も出来ない女だったんだよ…」
『思い出した…一緒に勉強してもこの人の半分の努力でこの人より優れた結果を出せる事に嫉妬して自分も大して格好良くないのに私を否定し始めたんだっけ…』
「本当にコイツを一番理解してるのは俺だよ」
『まぁこの人とは知り合って一ヶ月も経って無いしね…一応元彼だし…てか何でマウンティングしてるの?私が男性と居るから?私を男性が連れてるから?』
「日奈子さんの過去のお話ありがとうございました」
『ん?日奈子『さん』?』
日奈子は違和感を持った
「でもそれは過去の事だ、今の彼女じゃない」
ケンタは笑顔のまま言った
「は?日奈子も何か言ってやれよ色々覚えてるだろ?」
『ゴメン今さっきまで記憶から消去してた…あとまだ私が自分を好きだと思えるメンタルはスゴイわ、頑張って私から別れた後も暫く「アイツは俺が居ないとダメだろ」とかロミオしてて、いざ元に戻らないと理解したら私の悪い噂を流して私の株を下げる以上に自分の株を大暴落させた元彼の事を覚えていられる程暇ではないんです』
「僕は今の彼女が好きなんです、過去は参考にしかなりません」
多分日奈子はケンタならこう答えると分かっていた
「先程から貴方が言われている自分の会社のランクとか社内の肩書とか、過去の彼女とか僕にはどうでもいい事なんです」
あ…ケンタにマウンティングしてたのね…
「僕は毎日誰かと比べなくても幸せだと実感してます、それを教えてくれたのは日奈子さんです」
日奈子はケンタを見ながらこの人のこういう処ズルいと思った
「ありがとうございます、こんなに素敵な女性を手放してくださって、僕なら握った手を絶対に離さない」
「は?キモいんだよおまえ!」
最高級の負け台詞を口にして元彼は去って行った
「いつ手を握ったっけ?」
「え?握って良いの?」
なんでこんな事で本当に嬉しそうにするんだろう…いや、さっきのは嬉しかったから握手位ならしても良いかな?とは思うが…日奈子は膝の上の自分の手を見ながら思った
年に一回死にたがる彼女 @kenwolf
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