ノベルゲーム感覚で読み進められる現代ミステリー

■面白かった/良いなと思った点
まず何よりも小説でありながらゲーム要素を取り入れている”メモ機能”がとても楽しい作品です。

この機能を持ちいることによって、服装や造形、場面の説明といった情景描写を抑え、純粋な物語の展開をメインで書きつつ、心理描写を補足しておくことすら可能としています。

他の方のコメントにもありますが、本作を語る上では絶対に外せない要素の一つとして、物語を効果的に彩っていました。


■タイトルにも意味が
"紋章技術"を使った描写と、タイトルの"章紋"を絡めた描写が序盤から登場し、劇中でしっかりとタイトル回収も行われる【タイトルに意味が詰まっている】作品です。

あらすじをタイトルにするのがトレンドの中、やはりタイトル回収っていいよねと思わせてくれ、色々な意味でとても有難い作品でもあります。

ミステリーの内容についても一貫して10年前の事件の真相についてなので、じっくりとストーリーに集中できます。


■書籍化にはハードルが高そう
プレイ要素として扱われているメモ機能のほかにも、文章の構成が全体的にノベルゲーム寄りな印象を受けました。

メモ機能で補完するしない(できるできない箇所)に関わらず、作者様のイメージしている映像を頭の中に再構築するのにやや苦労する場面も少しありました。

とはいえ、本編通して読み解けない箇所はありませんでしたし、主人公の独白が整然としているのであえて良し悪し両方を上げるならば――程度です。