白銀の竜

Boulevard

建国物語

「まずこの国の成り立ちについて話そうか」


 長い耳をもったエルフが、その手にもった分厚い歴史書を開いた。


「ウィンドリア帝国が建国される前、ずっと昔の話。ここには、古代の民がいた。しかし、彼らは禁忌をおかした。そして、神に目をつけられ、罰を受けた。魔法が使えなくなった」


 エルフは、次のページを開いた。


「彼らは、神からの贈り物である魔法を失い悲しんだが、彼らはあきらめなかった。竜と契約を始めた。竜って見たことある?ない?当然さ。彼らは、もう数百年前には滅んだからさ」


 エルフは本に書かれていた竜の絵を見せた。長い首と鋭い爪、硬い鱗をもった見たこともない恐ろしい生き物であった。


「竜はこの世界でも神に次ぐ力を持つ。そんな存在と契約した古代の民は、各地を支配して竜と古代の民の王国を作った」


 さらに次のページには、勇ましい人が剣を手に取り竜と対峙している絵が現れた。


「古代の民は、私達の先祖を苦しめた。高い税を取られて、人々は苦しんだ。そこに立ち上がった英雄がいた。その名はオルデン。彼は、人々が苦しんでいるのを見かねて、竜と古代の民に反乱を起こした。古代の民達は反乱を鎮めようと竜の力を借りて反乱を抑えた。先祖は圧倒的な力を持つ竜に対して無力だった」


 美しい神がオルデンに手を差し伸べていた。


「オルデンは追い詰められた。しかし、突然声が聞こえた「オルデンよ。我が名はウィンドリア。お前たちの願いを受けて天から降りてきた。お前にこの聖弓せいきゅうを授けよう」と言ってオルデンの前から消え去った。夢かと思ったオルデンの手には神々しく光り輝く聖弓があった。すると、オルデンにとどめを刺そうと竜がやって来た。絶体絶命のオルデンは手にあった聖弓で竜を射た。普通の弓では全く歯が立たなかった竜の鱗が聖弓で射ると軽々と射抜いた。聖弓で射た矢には、何か力があるらしく一撃で竜を倒すことができたのだ。これにオルデンは驚いた。そして、力がみなぎってきた。これならば竜を打倒することができると」


 オルデンが竜相手に聖弓を射って戦っている戦争の絵だった。たくさんの竜や人が地面に倒れ、周りは炎で囲まれている凄まじい絵だ。


「オルデンは、聖弓の力と仲間達の力を合わせて、反撃を始めた。この戦いはとっても激しくたくさんの人が死んだ。しかし、先祖はあきらなかった。竜と古代の民からの支配から抜け出すために彼らは、勇敢に戦った。昔のオルデンの仲間もたくさん死んでしまった。ついに、オルデンは竜の王と古代の民の王がいる王宮まで攻め入った。竜王はこれまでの竜とは比べ物にならないほど大きかった。竜王の力は神にも等しい力を持っていたのだ。すると絶望する人々の頭上で神の声がした」


 二枚目の戦争の絵が出てきた。ものすごく大きな竜と対するオルデンと人々はとてもちっぽけな存在に見えた。しかし、そんな絶望的な状況でも聖弓はこの状況を打ち破るかのように輝いていた。よく見ると人々の頭上にはウィンドリア神がいた。


「オルデンよ、私をそして、あなたのために亡くなった仲間、ここにいる仲間を信じるのです。あなたの想いに答えて聖弓はあなたの道を切り開いてくれるでしょう」


 オルデンが聖弓で竜王を倒した所が描かれていた。倒れた竜王を踏みつけて、聖弓を空へと掲げているオルデンがいた。


「竜王と古代の民の王を見事打ち破った英雄オルデンは、王として、私達が今住んでいる国、ウィンドリア帝国を建国しましたとさ。めでたし、めでたし」


 ウィンドリア帝国の歴史を語ったエルフは本を閉じた。

「これがウィンドリア帝国の歴史。英雄オルデンが国を作ってから500年。最初は小さな国だったけど周りの人が次々と仲間になってここまで大きくなった」


 私は、竜と古代の民はどうなったのかエルフに聞いた。


「私も、詳しくは知らないけど・・・。恐らくは滅んだんじゃないかな?今まで誰も竜なんて見た人はいないね。え?竜を見てみたい?面白いね君。私の話を聞いてくれてありがとう。家族が君を探しているよ。そうだ、最後に君の最初の質問に答えてあげる。竜はどこかにいると思うよ。私は、魔法を研究している者だから詳しいんだ。じゃあね。またどこかで会おう」


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白銀の竜 Boulevard @Yogurt336

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