1-25 トリガーハッピー
ニヒャハッハッッッ ニヒャッッハハハハ!!
奇怪な叫び声を大声で上げながらリーザが見張り台から.45ACP弾を撃ちまくる。撃ちまくるというか乱射という表現が正しいかもしれない。
手にしたサイレントクリスベクターが軽い音を立てて死をまき散らしている。
顔面に.45ACP弾を喰らったゴブリンの頭が、壁にたたきつけられた腐りかかったトマトのように弾ける。
無言で教えた通りに空になったマガジンを外し、新しいマガジンを装填し撃つ。で、ニヒャハッハッッッヒャッッ と叫びながら乱射するを繰り返している。
おはようございます。コージです。
いつも通りに爽やかなゴブリン達の罵声で目が覚め、リーザと一緒に、いつも通りのネコまっしぐらな朝食を食べ、庭に出て昨晩遅くまでかけて作った銃を見せていました。
今日も爽やかな朝でした。さっきまでは。
昨晩、夜なべして作った銃を1種類ずつ見せ、特徴と注意点を説明しテストを兼ねて試射しようとなり、防壁の内側に見張り塔を作りそこからゴブを撃つことにしたのです。
ええ その辺までは変わりありませんでした。
最初はタボール7を渡し撃たせてみました。衝撃で一発撃つたびに銃口が跳ね上がってしまう。これでは危なくてしょうがない。やはり小柄な彼女には7.62mm弾は向かないようでした。
撃つたびに怯えて罵声を浴びせてきたゴブリン共だが、外れるたびに、はやし立ていてリーザはムカついているようでした。
次に軍用散弾銃のTS12を撃たせてみました。元々の重量が3.6kgと重めだが軽量化の付与魔法をかけてあるので2割ほど軽くなって2.8kg。この位なら撃つ分には問題ないようでした。しっかりと構えて様になっています。
SilencerCo社の理論に基づいて作ったオリジナルサプレッサーとオリジナルのハンドガードを作りインストールしました。この辺は地球世界での経験とプロップガン好きの趣味に走ったデザインにしてしまいました。
実際に撃たせてみると、問題なく扱っていました。撃つたびに尻尾がピョーンと立つのが面白かったのです。散弾とスラッグ弾の使い分けはもう少し色々と試してから説明しようとか思っていました。
ゴブリン共も何となく銃という武器を理解してきたらしく射程外の位置まで下がってはやし立ててきます。
リーザの耳が横に向き、しっぽを地面にバンバンと叩きつけている。ひょっとしてイラついているのでしょうか?
対物ライフルのM107A1は保留。的が近すぎて逆に使いにくい。使うのは一度、人のいない荒野で試射してからかな。
で、問題のサブマシンガン サイレントクリスベクター。サブマシンガンとしてはやや大きめですが彼女が使うのにちょうどいい大きさです。
重量は2.7kgの付与魔法で2.2kgに減らしました。有効射程は設計値で45m。ただ サプレッサー分銃身が伸びているのと、弾頭に空気抵抗無効の魔法陣を付与しているので実際には100m位には伸びていると思います。なのでアサルトライフル的に使えるはずです。マガジンは30発のロングタイプを用意しました。
実際に撃たせてみると思っている以上に精度が高く一発目から命中しました。
そこから尻尾をブンブン!ブンブン!と振り回しながら次々と命中させています。
ゴブリン共も石や壊れた槍を投げつけてくるがここまでは届きません。
ですが何故かドンドンと集まって攻撃してきました。逃げればいい物を仲間の仇でも取るつもりなのでしょうか?
猫人VSゴブリン 頂上決戦状態だったが緊張の糸が切れたのかリーザが大声を上げたのです。
ニヒャハッハッッッ!! ニヒャッッハハハハ!!
尻尾もブンブン!ブンブン!ブンブン! ゴキゲン絶好調!
そこからは、ほぼ乱射状態です。これがトリガーハッピーってやつですか。
ええ、さわやかな朝なんかどっか行っちゃいましたよ。
俺に本当に平穏な日々って来るんでしょうかね?
リーザは手持ちの弾を撃ち尽くしたらしく、こっちをじっと見る。無言でおねだりポーズをしている。尻尾もゆっくりと回っている。
『ここで甘やかしちゃダメですよ。きちんと精神的にコントロールすることを躾けてください』ステラさんが猫雑誌のQ&Aコーナーの回答者ばりのアドバイスをしてくる。
実際 戦闘中の弾切れは死を招きかねないし、味方がトリガーハッピー状態になると部隊全体が危機に晒される。
「リーザ よく命中させたね」頭を撫でながら、まずは褒める。尻尾をピーンと立て、目をきらきらとさせている。
「でもね。銃を扱うときは冷静にならないといけないよ。撃っていて弾が無くなったら困るだろ。それに傍に味方がいたら弾当たってしまうだろ?分かるかな?」
リーザは少しシュンとなって項垂れながら話を聞いていた。
「今度は落ち着いて撃てるよね?」
「うん 大丈夫です」
いい子だ。 頭をもう一度撫でながら表情を見ると嬉しそうに目を細めている。
「今度は俺が撃つから見ててくれ」
俺はタボール7を構えホロサイトを覗く。
残った20匹ほどのゴブリン共はサブマシンガンの射程距離より少し下がった位置でどこかから持ち出した弓の用意をしている。
距離にして130m位。セレクターを消音射撃モードにする。こうすることによってサプレッサーの効果を高め反動を抑制する事が可能だ。
この銃の最大射程は600m。十分に狙える距離だ。胴体に狙いを定め引き金を引く。グリズリークラスの魔獣を倒すことを目標に開発した魔弾を地球世界の技術をベースに錬金術で作り出したCL20火薬(モドキ)が撃ち出す。
完全にオーバーキルなのは分かっていた。
命中した魔弾が破裂し、ゴブリンが粉々になっていくプロセスがスローモーションで見えた。
そこには血にまみれたちょっと前までゴブリンだった肉と骨の破片だけが飛び散っていた。
そこから連続でターゲットを捉え消音射撃モードで撃ち続けた。
手に持っていた武器を投げ捨て、背中を向けて逃げようとしていたゴブリンを順々に破片に替えていく。
全てのゴブリン共を肉と骨の破片に替え終わると静寂が訪れた。
後ろを振り向くとリーザが尻尾を足に巻きつけながら、小さくなってこっちを見ていた。少しプルプルと震えていた。
「大丈夫だよ」
リーザは落ち着いたらしくこっちを見て大きく目を見開き笑顔を見せた。
しばらくすると複数の馬の足音が聞こえて着た。
異世界メイカーズ コミュ障おっさんの逆襲 女神様の勘違いで手にした最強スキルは何でも作れるけど、色々と残念過ぎる ワカサイモスキー @kumagonzo
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