1-24 おっちゃんは夜なべして(銃の用意はお早めに)

プシュッ プシュッ マキシム45がエアガンのような音を響かせて防壁に凹みを付ける。


横で不思議そうに見ていたリーザに声を掛けた。昼飯の後の時間は射撃の訓練に当てた。


「撃ってみる?」そう聞くとリーザは黙って頷いた。


まずは反動や音を受け入れられるか?これが最初のハードルの様な気がする。


 なぜリーザに銃を持たせる気になったか?いくつか理由はあるのだが一番大きい理由はこの武器を理解してもらいたいことだ。


 そのためには自分で使ってみることが一番の早道だと思う。弓や魔法とも異なる戦闘の距離感を体感して覚えてもらいたいからだ。これが理解できないと一緒に戦えない。遠距離から中距離が俺のレンジで中距離から近接戦闘はリーザ。白兵戦は一緒にというイメージだ。メインアームにするにしろしないにしろ銃が何か理解する事は俺と一緒にいる間は必須だからだ。


 まずはルールと取り扱い方法から。


1.常に弾は装填されていると考える 


2.撃とうとするもの以外に向けるな 


3.狙う瞬間まで指はトリガーから離せ 


4.目標とその先を把握しろ。


エアガン屋の店長もフランク軍曹にも何度も言われた。たとえエアガンでも習慣化しておかないと事故を起こすからって。自分もリーザにも徹底しよう。

 

 事故で怪我したり死にたくないから、毎日訓練の前に唱和しよう。幸いリーザはコクコクとうなずいているところを見ると理解しているようだ。


 次に基本姿勢とオープンサイトを使った狙い方を教え実際に防壁に向けて撃たせてみた。問題なく撃てるようなのでマガジンが空になるまで撃たせて交換方法と装填方法を教えた。後は体が覚えるまで繰り返させる。黙々と教えられた動きを繰り返していた。


 一通り終わるといい時間だったので家に入り早めの夕食と風呂にした。風呂は入り方が分からないようだったので使い方を教えた。


 特にシャンプーは初めて見るようだったので妙に興奮していた。洗濯物は一緒に洗うのでカゴに入れさせて寝間着と替えの下着を置いておいた。


 風呂から上がったリーザをベットへ送り、疲れていたからかすぐに寝入った。寝顔がかわいい。さて、ここからがお楽しみの時間だ。


『ステラ 検索お願い タボール7-17インチバレルと専用サプレッサーとハンドルガードも、クリスベクター45口径サイレンサー組み込み型とガード付きフォアグリップ、M107A1、TS12及びそれらの付属品・弾丸の構成部品図面を探してくれ。それらを基に改造した物をつくりたい』


これから作る銃はアサルトライフル、サブマシンガン、対物ライフル、軍用散弾銃の4種類。これから先の戦闘を考えると、オーバーキルかもしれないが、これくらい揃ってないと不安だからという精神的な部分が大きいかもしれない。


 タボール7はイスラエル製のブルパッブ方式のアサルトライフル。アサルトライフルとは軍人さんが持っている携帯可能な機関銃のことね。中距離でクマ型の大型魔獣にダメージを与えられる最小口径の武器を検索してこれをチョイスした。

 

 見た目がSFっぽく、サイバーなデザインの銃だ。副業で作っていたゲーム銃カスタムキットのベースにしたから散々いじり倒して慣れているという点が一番大きい。同じデザインで5.62mmだとよりバリエーションも多いが,この世界では明らかに役不足なので敢えて7.62mmを選んだ。


 この銃をベースに銃床に衝撃をディメンションストレージへ逃がす魔方陣を刻み、ハンドガード(銃身の熱から手を守り左手で持つための部品)とサプレッサー(消音機)を組み込み銃全体に軽量化と強度強化の付与魔法をかける。最後にホロサイト(光学照準器)を付けて完成。ただホロサイトって作れるの?まっ何とかなるでしょう。


 サブマシンガンはクリスベクター45口径サイレンサー組み込み型。これはマキシム45と同じ弾を使うサブマシンガンを探してこれを選んだ。アメリカ軍とクリス社が共同開発した反動吸収システムを搭載している事が最大の売りだ。これがあるとほぼ反動を抑え込めるらしい。小柄なリーザでも扱いやサイズだ。


 反動吸収用の魔方陣があるのでは?と突っ込まれそうだが、あれはディメンションストレージとセットで機能するので他者は使えない。昼間リーザが撃っている姿を見て発覚したのだ。

 

 見た目は電動釘打機に銃床を無理やり付けた謎の工具にしか見えないがマニア受けするデザインだ。こいつにマキシムの消音機を組み込み、フォアグリップとホロサイトを付ければ完成。これは2丁用意する。


 対物ライフルはM107A1サプレッサー付。全長1.7m 重量13.5kgの化け物サイズ。弾は重機関銃用の大口径弾と共用。絶対手持ち出来ない大きさだ。主に遠距離の狙撃に使用され、地球世界では3.5km先のテロリストを狙撃した記録がある。


 何でこんな化け物銃を用意するかというと単純に弾が大きいからだ。全長14cm直径約2cm この大きさだと弾頭に十分な大きさの魔石と攻撃魔法陣を組み合わせて各種の上級魔法が使える。触らなければ発動出来ないという俺の制限をクリアするために作る必要があるのだ。


 魔法の射程距離(上級で最大500m位)外からガシガシと上級攻撃魔法を撃ち込む。”圧倒的じゃないか、我が軍は”と悦に入りたいだけだが。それ以外にもディスペル(魔法無効化)にも使えるとステラさんにお勧めされたのも大きかった。


 最後はTS12サプレッサー付。タボール7と同じメーカーで作られている散弾銃の新しいトレンドになりそうな最新モデルだ。

 

 最大の特徴は使用中に弾を切り替えることができる給弾システムだ。5発の弾を入れた筒が3本が本体についていて、それぞれ異なる種類の散弾を装填できる。散弾で雑魚を蹴散らしながら強敵が出てくるとスラッグ弾に切り替えて大ダメージを与えるといった使い方や非殺傷散弾や発煙弾、催涙弾を選択できるなど戦い方の幅を広げることができる。

 

 残念なのはこの弾を入れるのに時間がかかること。マガジン式ではないので1発ずつ詰める必要があるのだ。戦闘中にやるような余裕はないと思う。こいつにもサプレッサーを付けて使う予定だ。


 なぜ全てサプレッサー付きにしたのか?


それはこの世界が静かすぎるからだ。地球世界では敵味方入り混じって,みんなで銃を使っているので気にならないが、この世界では俺たちご一行様しか使わない。


その状態で大音量で爆音を立てると、まるで大声で名前を叫んで居場所を知らせているようなものだ。選挙じゃないんだから、そんなことはしたくないのだ。サプレッサーは映画みたいに音もせずに発射できる訳ではないことは知っている。ただ、無いよりはあった方が圧倒的にいいと思う。


 ステラとのいつも通りのやり取りの後、4種類もの銃の部品を一気にオーダーした。組み立てにはガイドビデオを見ながらでも各30分位で2時間位だからまあ楽しめるか。


 問題は弾丸だ。クリスベクターはハンドガンと弾丸が共通なので問題ないが、タボール用の7.62mmNATO弾、M107A1用の.50BMG弾、TS12用の12ゲージ散弾と3種類(実際には弾頭違いを入れると8種類)の弾丸が新規に必要となる。これは取り敢えずテスト用に少数作って試射してから考えよう。ただ、これらを前のように手作業で組むのはきつい。組み立てを自働化できないか相談してみるか。


さっ 頑張って組み上げておくか。

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