優先順位

 新たな鉱石で作れる装備品は、物理特化と思われる黒曜石を用いた武器が1つに、魔法特化と思われる瑪瑙メノウを用いた武器が1つ。


 単純に考えれば……優先すべきは――探索固定メンバーの、ナツ、アキ、アコ、そして俺の装備品。


 しかし、新しい装備品は全員が欲している。


 問題なのは、優先すべきメンバーに俺が入っていることだ。


 自らを優先すべきだ! と言うのは、勇気がいるし……仲間との関係性に亀裂が生じる可能性もある。


 固定メンバーではない、ワタル、メイ、山田、ミユを信頼していない訳ではないが……自分たちが後回しとなるのは、面白くないだろう。


 理想を言えば、アキの杖とナツの防具が最優先だ。しかし、防具を作るためには素材が足りないので……そうなると、次に優先させるのは、アコよりも火力に優れ、ナツよりも攻撃機会の多い俺の剣となる。


 たった2つしか作れない装備品の内の1つを俺に割り当てるのは……どうなのだろうか? いらぬ反感を買わないか?


 んー……ここはまず、俺以外のメンバー――アキの杖とナツの剣あたりを提案するのが無難なのか?


 提案内容に悩んでいると、


「松山、なに難しい顔してるんだ?」


 ワタルに声を掛けられた。


「んー、誰の武器を優先的に作ったほうがいいかな……と」

「は? んなこと悩む必要ねーだろ」


 俺の悩みを吹き飛ばすかのようにワタルが鼻を鳴らす。


「そうか……? 今回作れる武器は2つだ。ここは慎重にみんなで話し合って――」

「いやいや、話し合う必要もねーだろ。優先すべきは、ナツ、アキ、アコ……んで、松山の武器だろ」


 ――!


「いいのか……?」

「そりゃ、俺だって新しい斧は欲しいけどよ……まずは、絶対に参加するメンバーの装備品を優先すべきだろ? 松山たちは謂わばスタメンだろ? 俺は残念ながらベンチメンバーだからな」

「ん。私も賛成。マハルは昔から細かいことに悩みすぎ。ハゲるよ」

「だねー! うちもワタルっちとメイっちに賛成かな! そりゃ、新しい杖は欲しいけど……杖ならアキが最優先でしょ!」

「むむ……出遅れたでござる! 某の主は松山殿でござる。主よりも先に装備品を新調は出来ぬでござるよ」


 俺はワタルたちを過小評価……いや、心から信頼していなかったようだ。周りのことを考えているのは俺だけじゃない。ここにいるみんなが、全員のことを考えているのだ。


「……ありがとう」


 自分の心の醜さに恥ずかしくなった俺は、小さくお礼の言葉を発した。


「ハッハッハッ! 田中の言葉じゃねーけど、一人で悩むなよ! 本当にハゲちまうぞ?」

「あはは! ハルは昔から心配性だよね!」

「ん。ハゲたらすべて剃ったほうがいい」

「なんでハゲるの前提なんだよ!」


 怒る俺を見てら全員が楽しそうに笑った。


「ったく、もういいや。えっと、それじゃ、俺の考えを言うぞ。今回集めた素材で作る武器は、アキの杖がベストだと思う」

「ん? 私の杖だけなの? もう1つ武器作れるんだよね?」

「固定メンバーの役割を考慮したら、ハルの剣も作ったほうがいいだろ?」


 俺の提案にアキとナツが反応する。


「固定メンバーの中だと、アキの次に攻撃をする機会が多いのは俺だけど……俺の剣は瑪瑙で作りたい」


 俺の【適性】は【魔法剣士】だ。


 ならば、切れ味が良いとされている黒曜石から作る剣より、魔力が増幅するとされていら瑪瑙から作った剣の方がいいだろう。


「んじゃ、どうすんだ? ナツの剣にするのか? それとも……アコの矢でも作るのか?」

「えー! 新しい矢は嬉しいけど勿体なくない? できるだけ回収するけど、無くしちゃう可能性もあるよ」

「んー、俺の場合は武器よりも防具の方が嬉しいが……材料が足りないんだよな?」

「ナツの防具が作れるまで材料を貯めるとかは、どうだ?」

「でも、折角材料があるんだから、それだったら俺か田中の武器を作ったほうがいいんじゃねーか? 強くなったらその分、素材を集めるのも楽になるだろ」

「某、佐藤殿、田中殿で勝負し……勝った者が新しい武器を贈呈され固定メンバーに入ると言うのはいかがでござるか?」

「ん。私は構わない」

「お! 勝負って何で決めるんだ?」

「平和的にじゃんけんでござるな」

「じゃんけんなら……別にいいか。但し、変な遺恨は残すなよ」

「遺恨は残さぬ。武士に二言はないでござる」

「ハッ! 上等だ! 絶対に負けねーぞ!」

「ん。勝つ」


 山田の提案からじゃんけん対決に決まりそうになったとき、


「ねね! うちから1つ提案いいかな?」


 ミユが手を挙げた。


「お! ミユもじゃんけん大会に……って、瑪瑙とやらで作る杖はアキに決定だろ?」

「違う、違う」


 ワタルの言葉にミユが首を振る。


「ん? だったら、なんだ?」

「馬渕っちに1つ確認なんだけど、黒曜石で作る剣は今ハルっちが使ってる剣より強いんだよね?」

「う、うん……。多分……」

「だったら、まずはハルっちの剣を作るでしょ。んで、瑪瑙が揃ったら改めてハルっちの欲しい剣を作ればいいんじゃない?」

「さすがにそれは勿体なくないか?」

「ハルっちが使わなくなった剣はナツっちに渡せば良くない? ナツっちは、ハルっちのお古が嫌とかないでしょ?」

「当たり前だ! 俺は一向に構わない!!」


 ミユの言葉にナツが力強く頷く。


「さんせーい! じゃんけん大会も楽しそうだけど、私はミユの意見に賛成かなー」

「俺もミユの意見に賛成だな」

「クッ……完全にじゃんけんモードに入っていたが……ミユの提案が一番だろうな」


 アキとナツが率先してミユに賛同すると、ワタルも賛同を示した。


「メイと山田は?」

「ん。問題ない」

「松山殿が強くなるのは某の喜びでござる」


 メイと山田もミユの提案に賛成のようだ。


「んじゃ、今回はアキの杖と俺の剣……それでいいかな?」

「「「おー!」」」

「それじゃ、馬渕お願いしていいかな?」

「うん。頑張るよ!」


 こうして、新たに獲得した素材の使い道が決まったのであった。


―――――――――――――――――――――――

いつも本作をお読みいただきありがとうございますm(_ _)m


久しぶりの更新となりますが……当面こちらの作品は更新を休止します。


またストックが溜まったら再開したいと思います。


楽しみにしている読者様には本当に申し訳ございませんm(_ _)m

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勇者召喚に巻き込まれたクラスメイトたちは異世界をきままに生き抜くみたいです ガチャ空 @GACHA-SKY

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