新たな鉱物

「ハァハァ……もう……大丈夫……かな……」


 息も切れ切れに先頭を走っていたアコが手を膝に付いて、呼吸を整える。


「少し休憩したら、安全圏へ一気に移動しようか」


 俺は呼吸を整えながら、仲間たちに告げた。


 30分後。


 小川を渡り、安全圏に到達した俺たちは今回の成果を確認することにした。


 はぁ……肩いてぇ……。


 俺は背負ったリュックを降ろし、中からかき集めた鉱石を取り出す。同様に、メイと山田も背負ったリュックを逆さまにし、鉱石を地面に散りばめた。


「重かったでござる」

「ん。疲れた」


 2人が肩に手を当て疲労した表情を見せる中、俺は散りばめられた鉱石の鑑定を始めた。


「ん。マハルの拾った石少ない」


 メイが目ざとくリュックから出てきた石の量に気付いたジト目を向けてくる。


瑪瑙めのう黒曜石こくようせきを厳選して拾ったからな」

「ん。私のは?」

「えっと……」


 俺はメイがリュックから出した鉱石を仕分けする。


「こっちが当たりで、こっちは……ハズレかな」

「重かったのに……マハル酷い」

「某のは……!」

「山田はこんな感じだな……」


 俺は山田がリュックから出した鉱石も仕分けした。


「――な! 一番重かった石がハズレでござるか……」


 山田は仕分けされた結果を見て、肩を落とす。


「んー、思ったよりも少ないね」

「掘削でもできれば別だろうが、落ちてたのを拾い集めただけだからな」

「ねね、やっぱりその黒っぽいのが黒曜石?」

「そうだな。んで、こっちが瑪瑙だ」


 俺は左右の手にそれぞれの鉱石を持って、アコに見せた。


瑪瑙めのう

 ランク C  

 効果  魔力を帯びた沈殿物』


黒曜石こくようせき

 ランク C  

 効果  火山質の鉱物』


「馬渕が喜ぶといいな!」

「絶対に喜ぶよ!」

「某は新装備が楽しみでござる」

「新しい矢を作ってくれたら、毎回回収しよっと」

「ん。瑪瑙の剣と黒曜石の剣」

「全員分は無理だろうから、みんなと相談だな」


 俺たちは新しい素材に期待を抱きながら拠点へと帰還するのであった。



  ◆



「ただいまー」

「お! 帰ったか!」

「おっかえりー! どうだった?」

「お、おかえりなさい」

「おかえり」

「おかえりなさい!」


 拠点に戻ると、仲間たちが一斉に出迎えてくれた。


「アコとナツがいるのが前提だが、戦えるな」

「それよりも、ハルが一番必要だろ!」

「うんうん! ハルがいないと弱点がわからないから、私とか何の魔法使えばいいのかわからないよ」

「『麒麟児』と謳われたハル殿抜きでは厳しいでござる」

「あはは……ありがと……」


 全方向から手放しで褒められると、どうもくすぐったい。


「あ! そうだ! 馬渕、これお土産」

「ん? な、なに?」


 俺はリュックから取り出した2つの鉱石を馬渕に差し出した。


「――!? こ、これは……」


 新たな素材を手にした馬渕は目を見開く。


「新しい素材。何か新しい武器とか作れそうか?」

「う、うん! ちょ、ちょっと待ってね……」


 馬渕は鉱石を様々な角度から観察して、独り言を呟く。


「お! 俺の斧が新調されるのか!」

「えー! うちの杖はー?」

「杖って、ミユは杖で殴るわけじゃねーし、何でもいいだろ」

「ほら? 魔力が上がったりするとかあるかもじゃん!」

「そうなのか……?」

「うん!」


 真剣に悩む馬渕の横で、戦闘職であるワタルとミユが騒ぎ出す。


「え、えっと……結論から言うと……剣も短刀も斧も盾も鎧も……杖も矢も作れる……と、思う……」

「マジか! 斧キタコレ!」

「短刀でござる!」

「ん。……剣」

「やったぁ! 矢をいけるんだ!」


 馬渕の言葉に沸き立つ仲間たち。俺も小さくガッツポーズを決める。


「で、でも……」

「……でも?」


 続く馬渕の言葉に全員が嫌な予感を覚える。


「量が足りない……。黒曜石で武器が一つ、瑪瑙で武器が一つがげ、限界だと……思う……。鎧とか盾……あと……両手斧は無理……」


 馬渕は最期にナツとワタルをチラッと見て、申し訳無さそうに告げる。


「――な!? お、斧が無理だと……」


 馬渕の言葉にワタルが崩れ落ちる。


「ど、どうする……」

「質問だが、瑪瑙で作る武器は魔法の威力が上がって、黒曜石は純粋に切れ味がよくなる感じでいいか?」


 俺は鑑定結果から推測した質問を馬渕に投げかける。


「瑪瑙からはマジックシリーズの装備品が作れるから……た、多分ハル君の考えで合ってると思う」

「マジックシリーズ?」

「え、えっと……この素材を目にした瞬間に……な、なんか……レシピが頭に浮かぶの……」

「なるほどー。私がよくわからないけど魔法を思い浮かべるとのと一緒だね!」

「上手く説明できなくて、ご、ごめん」

「あはは、私も自分で使ってる魔法のことよくわかってないから一緒だよー」


 恐縮する馬渕にアキが笑顔で対応する。


 うーん……予想はしていたけど、新たな素材から産まれる装備品の種類は多いけど、実際に作れる数は少ないな。


 さて、誰の何を優先して作るべきか……。


 俺は新たな問題に頭を抱えるのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

(あとがき)


いつも本作をお読み頂きありがとうございます。


来週以降の更新ですが……不定期となる予定です。(ごめんなさい)


今後、毎週水曜日は本作かダンバトを更新予定となります。


よろしくお願いしますm(_ _)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る