第2話

「優翔、おはよ!有平もおはよ!」

教室に入ると、幼馴染の冬森 瑞乃(ふゆもり みずの)に挨拶された。


「ああ、おはよう」

「おはよ。じゃあ俺、職員室に用事あるから。また後でな」

「おう」

「あとでねー!」


 瑞乃は俺の幼馴染で、よく気を使ってくれる。容姿端麗で成績優秀。さらに誰にでも優しいため、クラスの……いや、学校中の人気者である。学年問わずいろんな人から声を掛けられるが、嫌な顔一つせず笑顔で応対している。

 家族ぐるみで仲が良かったこともあったせいか、こいつとは物心ついた時からいつも一緒にいた。遊ぶ時も勉強する時もいつも一緒で、俺の思い出の大半はこいつと共にあった。高校に入ってからは少し疎遠気味だったが、「あれ」があってからまた一緒にいる時間が増えた気がする。俺にとって大切な友人の一人だったから、またこうして話せる時間が増えて嬉しい。


「優翔、今日暇?久々に一緒にゲームしたい!」

「久々?昨日もしただろ?」

「あっ、そうだった。私寝ぼけてるのかも」

「ったく……起きろ」


 ペチッ、と瑞乃の額にデコピンする

「いたっ」

「くないだろこれくらい。たまに飛んでくるお前のグーパンの方がいてーよ」

「こんな感じの?」


ドゴッ、と音と共に瑞乃のグーパンが鳩尾に入った。


「ぐほッ……」

「そういうことを言うからよ」

「すいませんでした…………」


前言撤回。こいつ俺に対して容赦ない。動けないんだが。


「──、ほ─────が─────────」

「ん?」

「ううん、何でもない!ね、自販機に飲み物買いに行こ!」

「おう。」


 うずくまってるときに瑞乃が何か言ったような気がしたが、どうやら気のせいだったようだ。俺は立ち上がって、瑞乃と一緒に玄関にある自販機へと向かった。

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君に伝える、最初の「愛してる。」 ろーすとびーふ。 @roastbeaf

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