搭で…痛いの飛んでけ〜弔い

翌朝 王国側と酒臭さい集団が、北の搭前に集まる。怯え減りくだる塔の管理者夫婦は、聞いてもいない王族用の食材横流しを口走る。宰相が後で尋問すると告げ。部下に調べる様に指示すると更に怯えた。


窓の無い螺旋階段に灯りを灯し先を歩く管理人。クモの巣が、張り足元を舞うホコリ。掃除もせずどこを管理していたのやら、ゴミを分子まで分解し己の糧にする蛍が、分解しやすいホコリに花桜の胸元でワキワキし始める。


「あのぉ〜ホコリぽいので…先に掃除させて良いでしょうか…」別に構わないと宰相が、告げれば3台の床ロボと2台の窓壁掃除ロボが、桜色の円陣から現れホコリやクモの巣をかき集める。


ホコリが舞う階段より皆は、塔の外へ出て待避するが、相変わらずバウスは、好奇心に負けホコリの中へ突撃して行くが、ジャマ〜排除と床ロボに捕らえられ追い出されていた。花桜の階段のホコリ取りだけ、素早く終わらしてにVサインと電子音で答える床1号を見送りさてと管理人夫婦を見て花桜は、気になる事を聞く。


「先程食材の横流しとか、聞こえたけど此処には、誰が住んで、お世話は、あなた達が担当かな?1日のスケジュール…んっとお世話の順番は、どうなっているの?」


「わしらは、塔の鍵の管理と昼に1度厨房から運ぶ食事の受け渡しで、ハレット様のお世話は、ノロマが致しております」「食事は厨房…食材の横流しは、厨房もグルかな?食材の水増しに横領とか」花桜の独り言に、宰相は残っている部下を呼び寄せ直ちに城の全厨房の仕入れと使用量を徹底的に調べ横流しなどを行った関係者は、取り押さえ監禁するよう命じた。


塔の住人ハレット王子は、15才で王太子の座に付き王としての教育を受け成長していった。あの日までは…17才の誕生日に新しい馬を希望した。ハレットは自ら、馬車で3日の場所にある牧場へ馬を探しに出向き…人に慣れていない馬を望み。側近達が、止めるのを振り切り裸馬に乗る。しばらくは乗りこなしていたが、調教を終えていない馬は背で鬣を握りしがみつく見慣れぬ者を振り落とそうと速度を上げ暴れ 高原端の崖っぷちで足を踏み外し落ちて行った。


ハレットは、馬と共に岩場に落ち腰と右眼を負傷。同行した回復師では、折れた腰の治療が、出来ず側近達は、不眠不休で馬車を走らせ王都の大伝奉所に王太子を運び込んだが、日が過ぎた傷の回復は、出来なかった。腰の強打で世継ぎを望めず歩く事も出来ない体に成り王太子の座は、5つ下のオーギウスに受け継がれ。ハレットは、身分を世継ぎ対象から外され 静養と言う隔離生活を離宮で過ごし日々は流れた。


兄の退位で急遽 王太子の座に着いたオーギウスは、王太子教育を受け。跡継ぎを残す為に早くに妃も娶り日々は、穏やかに過ぎて行った。あの日までは、後に〈炎の5月〉と伝えられる悲劇が、起こったのは、色とりどりの花が、咲き誇る王国庭園。優秀な貴族を称えた後で行われた王太子と王太子妃の主宰のパーティーに近くの離宮に住まう兄王子が、花を見たいと側使えに車イスを押させ宴会場に近付き突然民衆に爆炎魔導を放ち茶会に参加していた者達が、炎に包まれた。


即座に水魔導師達など護衛 側近達が、応戦する。しかし炎の魔導は、王を越え国内随一と称えられた元王太子に苦戦し庭園は戦場と化した。


取り押さえ様と城の精鋭達が、気配を隠し王子に近付くが、ことごとく返り討ちに合い王子が、魔素切れで意識を手放すまで攻防は、続いた。

重大な殺人破壊行為を行った王子は、地下牢で監視され幾つもの魔導具で拘束された。2度と魔導を使えない様に魔素器官を腐らす投薬が、続けてられ

王子の体は、薬と後悔に蝕まれていき朦朧とした意識の中 王子は、おぼろげな記憶を辿る。ワタシハナゼ イカリヲバクハツシタ…ソウ…ダレカガ…囁いた…。


多くの貴族が、傷を負う中 王国の要 …国王も息子とその妃を庇い重い火傷を負った。後に国王は、それが元で亡くなり早逝した父王の後を引き継ぎオーギウスは、若くしてバドレス国王となった。


父王が亡くなる前に地下に幽閉されている哀れな息子を魔導を張り巡らせた北の塔にと言葉を残しそれは、実行され体の不自由な王子の世話をノロマと呼ばれる知恵遅れの少年が、担当していた。ノロマの食事は喜捨として王子が、食べた残りを分け与えられ 王子の死が、公に成らなかった訳は、半年前自らの死期を悟った王子は、ノロマから受ける優しい世話に、報いる為 管理人夫婦にもし自分が、死んだ後も遺体は、このまま、行き場の無いノロマを住まわせ食事を運び続けて欲しいと頼んでいたと伝える夫婦は、これも罪に成るのかと宰相に泣き付いていた。


掃除を終えた床ロボ達が、塔入り口より戻りコンビニに戻ると伝えに花桜に近寄る。「壁ロボは?」電子音混じりの音声で、床ロボ達が、各々答える。クモの巣 マダ汚い ホコリある。キレイに成るし自分で帰るからいいかぁと花桜は、壁ロボを放置した。


塔の管理人を先頭に螺旋階段を上がり

時々現れる小部屋の入り口と軽い機械音を横目に塔の最上階にたどり着いた。薄暗い階段より明るい部屋に入り驚く。10畳程の狭い部屋だが、天井は高く明かり取りの窓や壁には、魔石が埋め込まれている。人の腰の高さに2ヶ所ある窓にも魔石が、練り込まれたガラスが、填められ昼前の太陽光が、降り注いでいる。


管理人は、部屋の入り口で止まり床ロボとやり取りしていた花桜に先頭を譲り 危険回避に王の前にいた騎士隊長も王に場所を譲りオーギウスは、簡素なベッドに設えた数々のクッションや枕にその身を預け眠るハーレットを見下ろした。供えられた花が、枯れ物悲しく亡骸を彩る。茜とロゼは奥に控えた花桜の横に並び。後から上がって来る皆を待った。


骨ばった薄黒い皮膚に髪の毛。皆が言葉も無く立たずむ中 異世界の娘ふたりは、手のひらを胸元で合わせ死者の冥福を祈る。列の後から怯えたノロマが、手に花を抱え入って来る。聞けば何時もの様に花を摘みに出掛け。塔の下に現れた。大勢の人に怯え隠れていたらしい。管理人の妻に見付かり塔に戻れと言われ恐る恐る戻って来たと言い花束を何時もの様に王子の亡骸に添え平民姿のジノの後ろに逃げ込んだ。


「美味しそう食べていいいかしら」沈黙を破り現れた闇は、満面の笑みで王子の隣に立ちロゼを手払いで部屋の隅へ行くよう命じた。「光魔素が、怖いなら来なければ、いいのに〜ねぇ。吸収の指輪外しちゃおか…なぁ」意地悪く言う花桜を睨む闇の全身は、昨日2回光魔素を浴び ひと回り縮んでいる。


「本当に止めてよねぇ」闇の言葉尻にねぇと返事するロゼを抱き茜達は、闇が指差す方へと移動する。


身の安全を確保した闇が、王子の亡骸に触れると手の平にうす黒い靄が、集まる。闇はそれを手の平に乗せ転がし球体にする。「軽率な考えで足腰を傷付けた自分への怒り 弟王太子への羨望と嫉妬…シャドウは、この弱い心へ取り憑き王子を支配したの。側女との恋は、シャドウの想定外だったけど、引き離された王子の心は、傷心と恨みに変わり膨れ上がりそれは、幸せに湧く庭園の人々を憎悪の炎となって襲ったのね。炎は王子自身も傷付け。痛む体で虚しさと後悔の日々を過ごし朽ちた肉体は、シャドウに取り込まれ…残った恨みは…まだここに残ってる。出来た…頂きます〜ご馳走さま」闇は死骸から集めた負の殘しを丸め呑み込んだ。


「さて…茜とロゼ。王子の側で癒しの魔導をよろしく…ちょっと〜まだアタシが、移動してから…走って来ないでぇ」悲鳴を上げ異空間に逃げ帰る闇。すでに花桜が、ロゼの指から魔素吸収の指輪を外し行けと押し出していた。駆け寄り王子の手に触れポロポロ大粒の涙をこぼすロゼ。「お兄ちゃんいっぱい悲しい寂しいごめんなさい言ってる。…茜〜あたしも悲しい〜」


号泣するロゼを抱き上げ。ヨシヨシと背中を優しく撫でてなぐさめる。キュル床ロボが、壁に闇のホログラムを投影する。「王子と共鳴したかぁ〜アタシ悪意嫉妬などは、好物だけど悲しみは、食べても美味しくないのよねぇ。この遺体まだ王子の殘しが、残って…そうだロゼ。これも一緒に飛ばして 縫いぐるみの呪いに付いていたの」そう言いい闇は、王子の胸元に手だけを出し死んだ側女の恋慕が、こもった髪の毛と王子の指の骨をポイと投げた。


呪詛を抜き取られたそれは、一瞬女の姿になり遺体に絡まり吸い込まれた。

花桜が、ノロマが添えた花束を持ち上げ皆に花を取り分け渡す。「私の国では、葬儀の時に花を添えて死んだ人と別れを告げるの。王子様…恋人と仲良くね。…王様」花桜は、王を促し寝台を離れる。


「兄上…」そう言葉に出し国王は、寝台に歩み寄り優しく強かった兄を思い出し涙する。王の後は皆が、各々花を添え冥福を祈り。最後は花束を持ったロゼと茜が、寝台に近寄る。「ロゼ…癒しの魔導で送って」闇の声が、部屋に響く。「ん〜と。いた…じゃなく…せいなり」バウスに何時もどうり痛いので良いからと言われならばと茜のせぇ〜のと掛ける声でロゼは、全力で叫び花を飛ばした。


「おに〜ちゃんのぉ。たくさんいっぱい…いたいの痛いの飛んでいけぇ〜」飛ばされ花は、魔素を帯び輝き遺体に降り注がれる。王子の遺体を淡い光が、包み込み…一瞬抱き合い微笑む男女の姿になりそれは、窓から外へ向かい霧散した。


ロゼは全力…痛いの痛いのを、3回唱え疲れたぁと茜に抱き付きプリン下さいとおねだりする。床ロボがトレーに新作〜と期間限定。コンビニ いちごプリンを乗せロゼに捧げる。壁に備え付けたベンチに座り。さっそく新作を味わい茜の様に足をばたつかせ旨さを体全体で表現するロゼ。…ありがとう…声無き声が、聞えベッドを見つめるロゼに皆も視線を向ける。カサッ…小さな音と共に白い遺体は、ゆっくりと崩れて逝った。


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コンビニだよね? らくしゅ @tomi20184

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