伯爵家の三男坊アルフォンス・リュシオールは、6歳のときに自分が日本人であったことを思い出す。現代知識を使えば領地を発展させられると考えたアルフォンスは、手旗信号による世界初の通信事業を起こすことに。
アルフォンスが転生した世界では人間の死は身近な出来事だ。魔物や盗賊の襲撃、突然の怪我や急病、事故や災害。人々に危険が迫ったとき、いち早く通報できる通信システムがあれば、もっと多くの命が救えるという企業理念が尊いのです。
起業のために父親である伯爵当主を説得するプレゼン、詳細な事業計画書の作成、資金集めのためのスポンサー探し、従業員の社員教育、さらにクライアントとなる冒険者ギルドへの営業活動と、思いつきを形にして事業にこぎつけるまでの地道なプロセスが、まさにスタートアップのお手本なんですよ。
各所を走り回って、たくさんの人と交渉を繰り広げ、ついに異世界初の通信会社が誕生する。しかしアルフォンスの目標はまだ道半ば。果たして通信で人を救えるのか。起業で人々と出会い、絆を繋いでいく異世界通信ファンタジーです。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)