第48話 宮池島親睦旅行「野元岳の頂きを目指せ!」
別荘の裏山を利用した夜の肝だめし大会も大詰めを迎えて、最後のゴール地点へと皆んなは近付いていた。だが、先頭を行く先生と華菜のグループは突如として現れた熊に、悲鳴を上げて足早にその場から逃げ去ってしまう。
その後の2人は一体、どうなったのか見てみよう。2人はと言うと凄い速さで駆けて行き、ゴール地点まで辿り着き、やっと落ち着きを取り戻していた。
「ハア〜本当っにビックリしたわ! まさかまさかの熊が直ぐ目の前に現れるなんて。……でも、こんな遠くの離島に熊が生息してるなんて事が有るのかしら?」
「私も熊が現れた時は驚き過ぎて、慌てふためいてしまったよ! でも、あれだな。杉咲の言う通り、日本本土から離れた離島に熊が生息してるのは可笑しいよな? ……もしかして、あの熊は偽物なのかも。とすると、もしや誰かが化けているのかも」
ゴール地点に辿り着き冷静さを取り戻した2人は、熊が南海の孤島に居る事を疑問に思った様である。確かに、熊が島に生息していると言うのは、よくよく考えてみれば有り得ない事なのである。その事を疑問に思った山岸先生は、その疑惑を解明すべく行動に出た。
「よく考えてみれば、島に熊が生息している訳がない。よし! その疑惑を解明しに熊との遭遇場所まで戻ってみるとしよう。杉咲は、ここで待って居てくれたまえ!」
先生は熊の生息疑惑を解明するべく、華菜にこの場に留まる様に告げると直ぐ様、熊の居た場所に戻って行く。
「ちょっとやだやだ〜こんな暗い場所に1人で居るなんて怖くてたまらないわ! あたしも一緒に行くから待ってよ〜先生!」
こんな暗い場所に1人取り残されるのは嫌だ! とばかりに直ぐ様、先生の後を追って行く華菜。結局、2人揃って事の真相を確かめに、熊が出現した場所まで戻って行く事に。
そして2人がその場所まで戻ると、人間の様に普通に2本足で立ち腕組みをして居る熊の姿を目撃する。それを確認した先生は、何かを確信したのか薄気味悪い表情を見せながら熊の背後に近付き、肩をポッと叩くと話し掛けた。
「こんな所で何をしているんですか、如月さん!」
咄嗟に背後から暗闇の中で驚き、人間の様な仕草で振り向く熊!
「うお~! ビックリした。誰かと思えば、山岸先生ではないですか!」
熊は振り向きざまに先生の姿を確認すると、いきなり言葉を喋り出したのだ。どうやら熊は人間が縫いぐるみを着ている様である。
「やはりそうですな。熊の格好をしている如月さんですね。リアルな熊の着ぐるみを身にまとっているから、真面目に熊が現れたと思ってしまいましたよ!」
先生から、如月さんですね! と言われた熊は、ウンウンと頷いた後に首に手を掛けると頭の部分の着ぐるみを取り顔を見せるのだった。
「プハ〜! 着ぐるみと言うものは、こんなに息苦しいものなのですな。声を掛けらたお陰で、頭の部分を取る気になって良かったですよ」
「まあ〜如月さんのお父様が熊の着ぐるみを付けていたのね! あたし達を脅かすために、こんなにリアルな着ぐるみを用意していたとは、驚いてしまったわ!」
「とうとう姿を現しましたね、如月さん! 先ほど、ここで出会した時は、本当の熊だと思って真面目に驚いてしまいました。でも、よくよく考えれば、南海の孤島に熊が生息してる訳は無いですからね。まんまと、リアルな熊の着ぐるみに騙されてしまいましたよ!」
「はあ〜本物の熊じゃなくて良かった。如月さんのお父様が演技していたとはね。そうよね、熊が島に居る訳がないと思ったのよ。それにしても、良くこんなリアルな着ぐるみを用意出来たものだわね!」
「どうやら、このリアルな熊の着ぐるみに騙されてしまった様ですね。インターネットで探して、高いお金を出して用意した甲斐がありましたよ。驚かす事が出来て良かった良かった!」
雅也は、2人を予想以上に驚かす事が出来てご満悦の様だ。部活の夏合宿の肝だめし大会の為に、こんなにリアルな着ぐるみを用意するとは驚きの1言に尽きる。
「ハハハハハ! 如月さんが着ぐるみまで用意して、こんなに熱心に我が山楽部の為に尽力をつくすとは嬉しい限りですな!」
「いやいや、大事な娘が所属する部活の為なら、この位の協力は当然の事です。皆さんのお役に立てて、私は嬉しいですよ!」
雅也は山楽部の為に尽力を尽くせた事を鼻高々にして居るのだった。それを聞いた先生も、称える仕草を見せながらニコヤカな表情を見せて応えていた。すると、その暗闇の中でニコヤカに談笑する2人を見ていた華菜が口を開く。
「先生と如月さんは、この暗闇のなかで意気投合している様ですけど、未だこの後に来るグループが有るから、そろそろ肝だめしの方へ気持ちを切り返えませんか? もう時期、第2グループの2人が来るんじゃないかしら〜」
「おお〜これは失礼しました。こんなに暗い場所で話しこんでいては駄目ですね。貴女の言うとおり、時期に次のグループが来ますね。私は茂みの陰に隠れて、脅かす準備に入るとしますよ!」
「いや〜杉咲すまないな。未だ、肝だめし大会は終わってないのに、話し込んでいてはいけないよね。私達はゴール地点に戻って、熊に脅かされて血相を変えてゴールに入って来る、残りのメンバー達を待ち構え様ではないか!」
「そうしましょう先生。リアルな如月さん熊に驚かされて、慌てふためいてゴールに駆け込んで来る皆んなを待ちましょう。何だか、どんな顔をして来るのか楽しみになって来たわ~」
華菜に諭された2人は我に返ると、やっと肝だめし大会中の臨戦モードに移る。雅也は所定の脅かし場所へ、先生は華菜を連れてゴール地点に戻って行くのであった。
そして先生と華菜がゴール地点に戻って5分後。他のメンバー達がゴール地点に、どんな顔をして駆け込んで来るのかワクワクしながら見守っていた時だった。何やら、悲鳴を上げながら走って来る人物が!
「く、くまクマ熊ー! くま熊が、クマ熊だーー!! 逃げろ、逃げろーー!!」
大きな声を上げながらゴールに近付いて来る人物は、女子! ではなく、大の男の隼人であった。声が聞こえ出したと思ったら、あっと言う間にゴールに近付いて駆け込んで来たのだ。その駆けて来る姿は、もう短距離選手並みの速さであった!
「ちょっと、待ちなさいよー! なんなのよ熊を見た途端に、か弱い女子をおいて凄い速さで一目散に逃げて行くんだから。まったく、頼りない男だわね!」
血相を変えてゴール地点に入って来た隼人を追って、続いて現れたのは友香里であった。その顔には、女子を置いて自分だけ一目散に逃げて行った隼人に対する怒りの念が満ち溢れていた。そんな頼りない隼人の後を追って、友香里も息を切らしながらゴール地点に入るのだった。
「友香里! 熊から必死に逃げて来たのね。可哀そうに、男子が頼りないから怖い思いをしたでしょう。隼人くん! 男の貴方がか弱い女子を守って上げなきゃダメじゃないのよ。もっと、腰の据わった頼りがいの有る男になって欲しいわ。熊と闘って追い払ってくれるぐらいにね!」
「ハアーハアー、やっとゴール地点まで帰って来れたわ。華菜もそう思うでしょう。幼気な女子を放っておいて、自分だけ助かろうと思って、隼人はさっさと逃げてしまう人なのよ〜!」
女子を気にかける事なく、熊から逃げるのに必死になり1人だけ助かろうとする隼人に対して、友香里と華菜からブーイングの嵐が巻き起こる。その軽蔑の眼差しを受けた隼人は、冷や汗をかきながら暫くの間、困った顔を見せた後に話し出した。
「あ、あの~す、すいませんでした。熊が突然に目の前に現れて、気が動転してしまい周りが見えなくなってしまいました。だからと言って一緒に居る女子を置き去りにして、1人で逃げてしまうなんて、僕は最低の男でした。本当にすいませんでした!」
隼人は自分の不甲斐なさを反省して、頭を下げて詫びを入れるのであった。その姿を見た友香里と華菜は、お互いに顔を見合わせてからニッコリと微笑んだ後に、口を開いた。
「真剣に謝ってくれてるから、まあ良しとしますか。男として、身体を張ってまでして女子を守って上げる位にならなきゃね、隼人!」
「友香里の言うとおり、身体を張ってか弱い女子を守って上げる様になってね。反省の態度が見られるから、今後の隼人の変わった姿を期待しているわ!」
「あ、有難うございます! 不甲斐ない僕を許してくれて嬉しいです。今後は、女子を守ってあげる事の出来る逞しい男になれる様にして行きますよ!」
2人から温かい言葉を貰った隼人は、満面の笑みを浮かべて安堵の表情を見せる。今後は何事にも動じない強い男になる事を、肝に銘じる隼人の姿がそこにはあった。すると、その様子を見守って居た山岸先生が隼人に近寄り話しかける。
「ハハハハハ! どうやら星野は醜態をさらけ出してしまった様だね。この様な非常事態の時は気が動転してしまうが、そこは今一度、落ち着いて見たら良いと思うよ。良く考えてみてごらん。熊が、この南海の孤島に生息しているかと言う事だよ」
先生から諭された隼人は暫くの間、キョトンとした顔をして後に何かを感づいた様で口を開いた。
「え? 熊が南海の孤島に生息してるのか? ……そうか〜言われてみれば島に熊が居ると言う事は、無い事だよな。うん、居る訳はないよな。だとすると……あの熊は偽物なのかなあ?」
先生から熊が南海の孤島に生息してる事の不自然さを指摘されて、隼人はやっとその事に気付いた様だ。
「星野! 分かった様だね。熊が南海の孤島に居る訳はないよね。そう、あの熊は偽物なんだよ!」
「そうなんだ、やはり偽物なんですね。そうすると、誰かが着ぐるみを着て脅かして居たと言う事になるのかな?」
「その通りよ、隼人! 精巧な熊の着ぐるみを着て脅かして待ち構え居た人が居たのよ。それは一体、誰だと思うかな〜?」
「ん〜そうだなあ〜肝だめし大会の為に、わざわざ段取りまでして脅かそうとする人か。……うん、誰か分かったぞ! ここで肝だめしが開催される事実を知っているのは、必然的にあの御方しかいないね。そう、如月さんのお父様しか居ないよね!」
「そう、正解よ! 如月さんのお父様が扮していた訳なのよ。あたし達は先ほど、熊の居た場所に戻って如月さんのお父様だと言う事を見破ってやったわ。それにしてもお金を賭けて、あんな精巧な着ぐるみを用意して脅かし役をするなんて、恐れ入ったわよ〜」
「と、言う事だよ星野! 今、杉咲が言った通りで、如月さんの父君が熊に化けて居たのさ。まあ、あのリアルな熊を見たら驚くのも無理は無いな。私達も、最初はかなり驚いてしまったがね。でも星野は、ちょっと驚き方がオーバー過ぎた感が否めたいぞ。非常事態でも落ち着いて行動出来る強い男になる様になりたまえ!」
落ち着きを取り戻し、熊に化けて居たのが雅也だと分かった隼人は安堵の表情を見せる。先生も隼人に近寄りポンッと肩を叩いて労いの言葉を掛けると共に、強い男になれ! と激を飛ばすのだった。
すると、その時! 何やら暗闇の中から話し声が聞こえ、ゴール地点に近付いて来た。どうやら、最後の第3グループの面々が到着した様である。だが、第3グループは3人のハズだったが、人影は5人となっていた。
「あっ! すでにゴールしている皆さんが見えましたよ。でも、待ち構える様にして居た様だけど、何だかキョトンとした顔をしていますわよ~」
「あら、本当ね! わたし達が到着したのが、不自然そうな感じがしてそうな顔で立っているわ。一体、何故なんでしょうね?」
ゴール地点に近付いた第3グループは、既に到着して居た4人のメンバーさんの不自然そうな表情を読み取り、違和感を覚えた様だ。その事を感じ取りながら、皆んなはゴールへと辿り着く。
「あら~最後のグループは、何事も無かった様に普通にゴールをして来たわね。それに、熊と幽霊姿に扮した方と和気あいあいとゴールして来るなんて、驚きの一言だわよ」
「そうよ友香里の言う通り、熊と幽霊姿の方と話しながらゴールするなんて驚いてしまうわ。あたし達なんて、熊と幽霊から悲鳴を上げながら逃げて来たと言うのにね。最後のグループは怖い者知らずと言う事なのかしら?」
最後のグループを出迎える友香里と華菜だったが、熊と幽霊姿の如月夫妻と和気あいあいとゴールするのを不思議そうな顔を見せていた。そして最後に先生が来て話し掛ける。
「これで全員がゴールを果たしたね。それにしても、脅かし役の如月夫妻と仲良くゴールをするとは恐れ入ったよ。最終グループは熊や幽霊に出会しても怖く無かったのかな? 5人で話しながら来るとは、強者知らずと言う事だな」
先生はゴールした事を歓迎するより、脅かし役の如月夫妻と和気あいあいとしている第3グループに違和感を感じた様である。その様子を見た岸本が口を開いた。
「只今、第3グループ到着しました! 皆さん不思議そうな顔をしてますね。熊と幽霊を見ても怖がらずに、仲良く一緒にいるのか疑問に思っているんですね。何でなのかと言うと、熊と幽霊は如月さんご夫妻が扮している事を俺が直ぐに見破ってやったからですよ!」
「えっ、あのリアルな扮装を、岸本は直ぐに見破る事が出来たのかい? それは驚いたね。暗闇で熊や幽霊を見たら、普通は驚いて叫んで逃げてしまうものだが」
「いや~幽霊も熊も直ぐに誰かが扮しているのだと分かりましたよ。幽霊の場合は綺麗な方だったので、これは如月さんのお母様だと思ったし、熊に関しては南海の孤島に熊が居るハズはないと考えたから、もしやお父様が着ぐるみを着ているのでは! と思った訳なんですよ」
「そうか〜岸本は、この暗闇の中での状況下にもかかわらず冷静に物事を見ていられたと言う事なのか。そのお陰で最終グループは、慌てふためく事なく居られた訳なんだな」
「岸本さんは落ち着いて物事を判断出来るから、非常事態の時でも頼れる男! って言う事よね。女子としては、そんな頼りになる人に憧れてしまうわよ~」
「華菜の言う通り、頼り甲斐のある冷静沈着な男子に憧れてしまうわよ。非常事態に女子をおいて、さっさと逃げ出す隼人くんとは違うわよね。岸本さんを見習って欲しいと思うな!」
熊や幽霊に遭遇しても冷静に対処して行動をする岸本に、先生と友香里、華菜から賛美の声が上がる。鼻高々としている岸本とは対象的に、隼人はと言うと気まずい表情を見せてタジタジになって居た。だが、何か吹っ切れた様にして隼人は口を開いた。
「僕の不甲斐なさに対する批判は謙虚に受け止めますよ。僕は部長なんですから頼られる男に成らなければですね。これからの僕を見ていてください!」
隼人は、部長として頼り甲斐のある男になれる様に頑張る事を皆んなに告げるのだった。その言葉を聞いた山楽部のメンバー達は笑顔を見せながら、隼人に話し掛けた。
「私が置き去りにされた時はビックリしたけど隼人くん大分、反省した様だから許して上げるわ。これからは岸本さんみたいに、頼り甲斐のある男子になって欲しいものだわ」
「友香里を置き去りにして、自分だけ逃げ出してしまうなんて驚いたわ。でも、隼人くんの反省の弁を聞いて安心したわよ。貴方は部長でもあるから、非常事態でも冷静に行動出来る人になる事を期待してるわ!」
「わたくし岸本さんが、冷静に対処して行動する事が出来ていたので、安心して肝だめしを行う事が出来ましたの。やはり男子は、強い男の方が望ましいと思いますわ。隼人さんも見習って、強い男の方になってくださいね」
山楽部のメンバー達は隼人に戒めの言葉を掛けつつも、男として部長としても頼り甲斐の有る人になれる様に言うのだった。
「わたしは岸本さんの肝だめし中の振る舞いを見て、予想以上に度胸があって男らしい人だなと思ったわ。お陰で冷静に物事を見極める事が出来たの。隼人さんも岸本さんを見習って、女子を守れる強い男になってくださいね」
そして高坂恵も和也を褒めちぎる言葉を述べる。隼人とは対象的に、高感度抜群の男になってしまった様だ。持ち上げられた和也は少し照れながらも、鼻高々そうな顔をして話しだす。
「いや~そんなに持ち上げられてしまうと、何だか照れてしまいますよ。俺は暗い場所でも特に怖いとか思う事は無いんです。
なので冷静に物事を見極められるから、幽霊や熊が現れても同じる事無く落ち着いていられると思うんです。まあそのお陰で、皆さんから頼り甲斐の有る男だと言われて俺も嬉しいですよ!」
「岸本は見た感じの厳つい出で立ち通りの、強い面を持った男子なのだな。そんな逞しい男なのだから女子達からの信頼だけでなく、男子にも信頼される事だろう。
君はリーダーに向いている人なのかも知れないな。星野も、岸本の様に強い男になってリーダーシップが取れる様になってくれたまえ。君は山楽部の部長なのだからな!」
山岸先生からお褒めの言葉を貰った和也はニコヤカな表情を見せている。そして隼人は、先生から応援の言葉を貰ったのが嬉しい様で口を開く。
「分かりました、先生! 温かい言葉を掛けてくれて有難うございます。頼り甲斐のある強い男になり、山楽部の部長としてリーダーシップを取れる様に頑張りますよ!」
「おお〜そうか! 前向きな言葉を聞いて先生も嬉しいぞ。今後の君の部長としての奮起を期待しているよ。逞しい男になるんだぞ、星野!」
「星野くんは山楽部の部長なのだからな。部のリーダーとして強い意志を持って行動し、皆んなを引っ張って行けるリーダーになりたまえ。たとえ本物の熊が現れても動じない様な強い男になれ! と言う事だよ~」
先生と雅也から奮起を促す言葉を貰い、自身の身を引き締めて気合を入れる隼人であった。そう、大げさな言い方ではあるが、生まれ変わった今後の隼人に期待しようではないか。
「隼人くんの引き締まった表情を見ていたら、今後は逞しくなった姿が目に浮かんで来たわ。これからの隼人くんに期待しているわ!」
「華菜と同じく、今後の生まれ変わった隼人くんに期待をして行くわ。山楽部を引っ張って行けるリーダーとして頑張ってよね。
……それじゃあこれで一段落した事だし、そろそろ肝だめし大会を終わりにして別荘に戻りませんか? 何だか、じっとしていたら寒くなって来たわ。このままじゃあ、風を引いてしまいそうだわね~」
「おお〜そうだな沢井の指摘通り、こんな暗い夜空の場所に長く居たら、身体が冷えて風邪を引いてしまいそうだね。そろそろお開きにして、別荘に戻るとしようか。では皆さん、肝だめし大会お疲れ様でした!」
「先生から終わりの言葉が掛かりまたよ。肝だめしでは僕の不甲斐ない一面を見せてしまいましたが、今後は生まれ変わった僕をお見せする事を約束しますよ。
では部長の僕から、改めて終わりの言葉を述べさせて貰います。皆さん、これにて肝だめし大会を終わりにします。お疲れ様でした!」
【はい、肝だめし大会お疲れ様でした~!】
先生と部長の隼人から、肝だめし大会の終了を告げる言葉が掛かり、一斉に声を上げる参加者一同。勿論、脅かし役を努めた如月夫妻も参加者の一員として声を上げていた。こうして、初日の島での一大イベントである肝だめし大会は終わりを告げたのであった。
各々は肝だめしでの怖った場面を思い返しながらも、和気あいあいと話しながら別荘へと戻って行く。そして各々の部屋に戻ると1日の疲れを癒すべく就寝するのだった。こうして宮池島の親睦旅行の1日目は終わりを告げる。
翌朝、皆んなは起床をして1階のダイニングルームに降りて来ると、如月夫妻が用意をした、高級ホテルの朝食なのか? と思わせる美味しい豪華な朝食を取り舌鼓を打つのだった。あまりにも美味しい朝食だったので、食べ終えた皆んなの顔はご満悦であった。
「いや~朝から、こんなに豪華な朝食を食べれるなんて僕達はなんて幸せ者なんだろう!」
「俺の家では、朝はご飯と味噌汁くらいしか無いんだよ。それに引き換え、ここでの朝食ときたらホテルのバイキング形式と同じ様で、15種類の料理が食べれるじゃないか。美味し過ぎて、ほっぺたが落ちそうだよ〜」
朝食を食べ終えた一同は、美味しい食事に舌鼓を打ち幸せいっぱいになって居た。特に隼人と和也は、顔に幸せが滲み出ていて大黒様の様である。
「あらあら男子達は、顔が大黒様の様になっているじゃない。朝から食べる料理が余程、美味かったから顔に幸せ感が満ち溢れてしまうと言う事ね」
「華菜ったら、大黒様の様だ! なんて良い表現をするわね。まあ私達も、男子達には負けるかも知れないなけど、幸せそうな顔をしているだろうけどね!」
「わたしも朝から、こんなに豪勢な朝食を食べれたから、顔が綻んでしまって幸せそうな表情になってしまったわ。朝食を用意してくださった如月ご夫妻に感謝の気持ちで、いっぱいだわ〜」
男子達ほどではないが、女子達も美味しい朝食で舌鼓を打てた様でご満悦の表情を浮かべる。
「皆んな、豪華なバイキング形式の朝食を食べれて、幸せそうな表情に満ち溢れているぞ。まあ、私も皆さんと同じで、幸せになって居るがね、でも、こんなに料理の品数を用意するなんて、大変ではなかったんじゃないですか如月さん!」
「いや~心配には及びませんよ。私も料理作りを手伝いましたが、家内は料理好きですから大分、朝早くから起きて一生懸命に作っていましたよ。料理を作るのは家内にとって生き甲斐の様なものですから、何も苦にならないと思いますよ。そうだね、美紗!」
「はい、貴方の言う通りですよ。料理を作るのは好きですし、その作った料理を食べた方が美味しく食べて居る姿を拝見すると、私も作った甲斐があって幸せになりますのよ。皆さん、美味しく食べて満足さなった様で良かったですわ~」
「そうですか、作られた料理を食べて満足する私達を見られる事で、喜びを得られていると。そう言う意味では、私達は如月ご夫妻に幸せを与えてるのですな。何はともわれ豪華な美味い朝食を食べさせてくれたご夫妻に、感謝の言葉を皆んなで伝え様ではないか。美味しい朝食を有難うございました!」
【朝食を有難うございました。とても美味しかったです!】
山岸先生から合図が掛かり、皆んなは頭を下げてお礼の言葉を述べる。その顔には、美味しい朝食を用意してくれた如月夫妻への感謝の念が満ち溢れているのだった。
「そんなに深々と頭を下げられてしまうと、かしこまってしまいますよ。おもてなすのが私共の役目ですから、大いに甘えてくだれば良いですわ」
「そうですよ家内の言う通り、私共の好意を大いに甘えて貰いたいなと。この後も滞在中に3食は用意する事になりますから楽しみにしていてください。
それではこの後の予定は、野元岳の登山に行く様になりますね。車を用意しておきますから、皆さんは部屋に戻り準備が出来次第、駐車場の方に来てください」
「はい、分かりました。ご夫妻の御好意に大いに甘える様にさせて頂きます。車での送迎の方も宜しくお願いします。では皆んな、部屋に戻り支度が出来たら駐車場に集合する様に。7時30分には出発するから遅れる事のない様にな!」
【はい、了解しました! 部屋に戻り準備に入ります】
皆んなは大きな掛け声と共にリビングルームを出ると、登山の準備をするべく各々の部屋に向かって行くのだった。そして集合時間の7時30分。別荘の駐車場には遅れる事なく、全員が集合して居た。
「皆さん、遅れる事なく集まる事が出来ましたね。この後も、速やかに行動をして行く様にね。ではこれより如月ご夫妻の車に乗車して野元岳登山口に移動します。野元岳は宮池島の中央に位置し、綺麗な円錐形をした山で宮池島のシンボルとも言うべき山です。
コースタイムは2時間ですが一部、急峻な岩場を登る箇所も有りますから、気を引き締めて登って欲しいです。それでは如月ご夫妻、今日も1日私共がお世話になりますが、宜しくお願い致します!」
【如月ご夫妻、今日もお世話になります。宜しくお願いします!】
今日も1日、車の送迎から食事の世話をしてくれる如月夫妻に、深々と頭を下げてお願いをする一同。一体、何度頭を下げて丁寧なお願いをするのであろうか。それだけ、この親睦旅行ではご夫妻の果たしている役割が大きいと言う事なのである。
「いや~皆さん、そんなに丁寧なお礼をされては私も恐縮してしまいますよ。今日も最大限の協力を致しますから、大船に乗った気でいてください。それでは車2台で送迎致します。昨日に乗車した車の方に分かれて乗り込んてください」
雅也から声が掛かり、2台の車に分散して一同は乗り込んて行く。今日も如月夫妻の車が大活躍して、皆んなを送迎する事になる様である。
いよいよ2日目の日程が幕を開けた。皆んなを乗せた2台の車は別荘を出ると、野元岳の登山口を目指して走って行く。野元岳までは内陸にある別荘からは近く約30分の移動距離である。
車は民家の有る住宅街を離れて行き次第に長閑な平原をひた走る。そして島の中央付近に位置する野元岳がドーンと目前に見えて来て、2台の車は登山口駐車場する。到着した一同は、一斉に車から降りて荷物を持つと整列をするのだった。
「はい、登山口に到着しました。短い時間ですがお疲れ様でした。私共は皆さんが登山に行っている間、この駐車場で待っておりますので登山を楽しんで来てください!」
「如月さん、送ってくださり有難うございました。登山時間は2時間になりますので暫くの間、駐車場の方でお待ちください。では皆んな、野元岳山頂を目指して出発しようではないか!」
【送ってくださり、有難うございました。野元岳に向けて出発致します!】
一同は如月夫妻に見送らながら、元気の良い掛け声と共に登山口を出発して行く。登山口から山頂までは以外にも1時間有れば到着していまうのである。島の山は比較的、短いコースタイムの山が多いのが特徴である。
一同は僅か1時間で登れてしまう山だと聞かされ、気楽な気持ちになったのか歩く足取りも軽快だ。
「先生! 野元岳はたったの1時間で登れてしまうとは以外でした。山の全景を見ていると、かなり尖った形をしているので最低でも2時間位は掛かるものだと思っていました!」
「隼人くんの言う通りよね。島に来て初めて野元岳を見た時は、急峻な山の形をしているから驚いたわ。だから登るのに時間も掛かって、さぞや大変な登山になると考えていたから拍子抜けしてしまうわね~」
隼人と友香里から野元岳が楽に登れてしまうのではと楽観視した声が上がった。その2人リーダーの登山に対する気の抜けた顔を見た先生が、渋い表情を見せながら口を開いた。
「おいおい、そんな楽観視する言葉は部のリーダーとしては駄目じゃないか。山頂まで1時間の短時間で着くと言っても、その内容が有るんだよ。この野元岳は見ての通りの急峻な山だ。
だから登山道は急な岩場を登る箇所が有り、登山時間は短いが難度の高い山なんだよ。気を抜くと痛い目にあってしまうから心して登る様に!」
「すいません隊長! リーダーとしての言葉では無かったです。山登りは登山時間が短いと言っても、内容が大事なんですよね。急な岩場が有ると言うのに、簡単に登れると思ってはいけない訳ですね」
「隊長に怒られてしまったわ。登山では気を抜くと、思いがけないアクシデントにあってしまうと言う事ですね。短時間で登れると言っても、険しい登山道が野元岳には有るから、皆んな心して登る様にしましょう!」
先生からの登山に対しての戒めの言葉を貰った隼人と友香里は、改めて部のリーダーとしての自覚を持ち、参加するメンバー達に対して緊張感を持って臨む事を告げる。
「隊長からの戒めの言葉が出たから、やっぱり緊張感が出た様ね。皆んな、部のリーダから気を引き締めて登る様に激が飛ばされたわよ。危険な岩場が有りそうだから最深の注意を払いながら山頂を目指しましょう!」
【はい、緊張感を持って登山道を登り山頂を目指します!】
山楽部の2人のリーダーからの激を受け取った皆んなの中で、華菜から更に参加者を鼓舞する言葉が告げられた。それを受け取った皆んなは、大きな掛け声を上げて呼応して気合を入れて登山道を登って行くのだった。
登山道に入って平坦な道を歩いて行く面々。そして15分ほど経った頃、登山道の分岐看板が見えて来た。先頭に居た先生は立ち止まると、上の方を指差しながら口を開いた。
「はい皆さん、この分岐点を左に曲がって野元岳の山頂へと向います。ここから先の登山道は、これまでと違って急な登りとなります。上部に行くと岩場を登る箇所もあるので、慎重に気を付けて登る様に!」
皆んなは登山道の上の方に目をやりながら、驚いた表情を見せながら固まってしまう。そう、目を注ぐ登山道はかなり急峻な登りが控えていたのだ。
「うえ~何なんですか、この急激な登りは! こんな登山道が有るなんて聞いて無かったですよ。衝撃の険しさですね!」
「これは急過ぎる登りだわね! しかも上へ向かって真っ直ぐな登山道だから、かなり大変そうね。わたしと岸本さんは登山経験がほとんど無いから、登る事が出来るか心配になって来たわ!」
この目前に立ちはだかる急激な登りの登山道を見た一同な中で、真っ先に不安を口にしたのは他ならぬ和也と高坂恵であった。山楽部の部員では無い2人にとって山登りは経験が無い。それなのに初めての山登りで、この様な険しい登山道を登ると言うのは酷な事である。
「あ〜そうだったな、岸本と高坂は他の部活からの臨時参加だったね。山登りは初めての経験だろうから、勝手がわからないだろう。だが君達も運動部に所属しているんだから、体力はあるだろうから急な登りであろうと登れるのではないかな。まあ、頑張ってくれたまえ!」
「まあ先生ったら、かなり楽観視した言い方よね。いくら2人が運動部とは言っても、登山初心者に対してのアドバイスでは無いわね。ごめんね岸本さん高坂さん、顧問の先生がざっくばらん過ぎて」
「確かに、先生からの言葉としては余りにも簡単過ぎるわ。あたしからのアドバイスとしては、急な登山道は登るのに足や心肺に負担が掛かるから、とにかく一定の速度で足の歩幅も短くして、小刻みに登れば良いと思うわ。そうすれば最小限の労力で無駄なく登れるハズよ!」
「わたくしは人にアドバイスを出来るほど登山の技量が有る訳ではないですが今、華菜さんが言った通りの要領で登山道を登れば初心者の方でも難なく熟せられますよ。何より、お2人さんは運動部で鍛えていて体力が有りそうですから、大丈夫だと思いますの!」
先生から登山初心者2人に対しての余りにもお気楽な言葉を聞いた山楽部の女子3人組は、先生の代わりにとばかりに今までの経験からのアドバイスをするのだった。そのアドバイスを聞いた和也と高坂恵は、うんうんと頷くと口を開いた。
「皆さん、有難うございます! 的確なアドバイスを聞いて、山を登る時のコツが分かりました。その事を実践しながら、初心者である俺達2人でも難無く登れる様に頑張りますよ!」
「先生からのアドバイスが無かった時はビックリしたけど、部員の皆さんが経験から得たアドバイスを教えて貰えて良かったです。わたし達が足手まといにならない様に、一定の速度で小刻みな足取りで登る事を実践して行きますよ。それでは皆さん、頑張って登り初めましょう!」
「山楽部の女子達からアドバイスを貰いお二人さんは俄然、やる気が出て来た様ですね。これなら初心者でも登れる事、間違いなし! ですよ。では隊長、野元岳の山頂へ向かってこの急激な登りに立ち向かいましょう!」
「皆んなの、やる気をしかと受け取ったぞ! これならこの急な登山道を登り切り、山頂に辿り着ける事だろう。よし、野元岳の頂きを目指して出発だー!!」
【はい、野元岳の頂上を目指して出発します!】
山楽部の女子達からのアドバイスを貰い、やる気漲る和也と高坂恵。そのやる気は他のメンバー達にも波及して、その場に居た全員のテンションもMAXになった様だ。
その昂ぶる気持ちを持った一同は、野元岳の山頂を目指して急峻な登山道を登り始めて行く。登り切って待ち受ける山頂は、どんな山容でどの様な景色が待ち受けているのか楽しみである。頑張れ、山楽部御一行様〜!!
清流学園山楽部 目指せ!南アルプス鳳凰三山 天童晴太 @yi-tendou
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