第4話 決着と合否判定
熟練のパーティーでさえ軽く
崩壊したパーティー。追い詰められ、逃げ場はない。
「ひいぃ……」
絶望の余り、リーネは目をギュッと閉じた。
しかし、どういうわけか、いつまで経っても攻撃がこない。
恐る恐る片目を開けてみると、サイレントドラゴンが大口を開けたまま固まっていた。
「あっ、あれ……? どうして動かなくなっちゃったの……?」
と、リーネが困惑していると――
「ぐえっ!」というザンズが押しのけられる声と共に、ヴィルヘルムがようやく立ち上がった。
「これだ」
堂々とした態度でそう言うヴィルヘルムの手には、一束の植物が握られていた。
「え? それって……、
「いいや、これはシビレソウだ」
シビレソウ。それは
「あいつに、これを喰わせてやった」
「えっ!? い、いつ……?」
「リーネを助け出すときだ。あいつ、バカみたいに口の中が隙だらけだったからな」
「でも、泥の魔法……」
「あぁ、それはついでだな」
「ついで!? おじさん、一体何者!?」
驚きの色を隠せないリーネに、優しく微笑みかけるヴィルヘルム。
「なぁに、俺はただのおじさんだよ」
◇ ◇ ◇
夕闇が
「あいつら、無事でいてくれよ……」
ボブリはギルドの入り口に立ち、心配そうに森の方を見詰めていた。
ギルドの中は、すでにFランクの冒険者として合格判定をもらった受験者たちで
まだ帰って来ていないパーティーは、もうヴィルヘルムたちだけになっていた。
これ以上暗くなるようであれば、捜索隊を森に派遣しなければならない。
ボブリはそんな危機感に駆られ、「ヴィルヘルム……」と、
すると、彼の死角から――
「呼んだか、ボブリ?」
「へっ!?」
ボブリが声の方を見ると、傷だらけになったヴィルヘルムたち一行が
「遅くなって済まない。仲間が動けるようになるまで森で少し休んでいたんだ」
「ヴィルヘルム!? いつの間に、そこに!?」
「ん? あぁ、俺たちに気が付かなかったのはこいつの魔力が干渉したせいだろう」
そう言ってヴィルヘルムが片腕で
頑丈な魔法の縄でグルグル巻きにされた透明の何か。
それは、ときたま、「ギギギ……」と、不気味な
「おい、ヴィルヘルム。これは一体……?」
「こいつはサイレントドラゴンだ」
「サイレントドラゴンだと!?」
「俺も始めは信じられなかったよ。採取クエストの最中に襲われてな。森に危険が迫っていることをギルドに報告しなければと思って、生け捕りにしてきた」
「生け捕りぃ!?」
「そんなことより、これを見てくれ。
「アホか!! どこの世界にサイレントドラゴンを生け捕りにしてくる見習いの冒険者がいるんだ!!」
「なっ!? たっ、頼む!! せめてザンズとリーネだけでも合格にしてやってくれないか? 二人とも頑張ってくれたんだ! ダメか?」
「何言ってやがる、全員合格だよ!! そんなもん、
ザンズとリーネの方を見て、表情を
「やったな、二人とも!! これで今日から俺たちはFランク冒険者だ!!」
彼の嬉しそうな顔を目の当たりにしたザンズは歯を見せて笑い、リーネは苦笑いを返した。
その後――
とある街に、片腕なのに化け物のような強さを持つFランク冒険者がいるという不思議な噂が立つようになった。
その
ただ、その反面。
魔力のコントロールが
【短編】おじさん剣士の再出発 ~仲間を庇って利き腕を失った剣士、Sランクパーティーから脱退することになるも、地方のギルドでまたイチからやり直す!~ 剣月しが @shiga_kenzuki
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