【番外編】クラフティア王国の建国祭

 明日はクラフティア王国の建国祭だ。屋台を出せるというので、ティリスの街から王都に来ている。王都までは飛ぶこたつで飛んで来たから楽だった。


 せっかく屋台をやるなら、新しいメニューにしたい。お祭りと言ったら、焼きそば、お好み焼き、フランクフルト、後は~かき氷っ!


 前からかき氷機を作ろうと思っていたけど、まだ作っていなかったんだよね。お祭りと言ったらかき氷だよね~。シロップは果物から作ったら良いし、ベリーに高速回転して貰ったら楽しそうだ。


「そうだ、かき氷機作ろうっ!」


『かきごーりくま?』


『それ、なにぴょん?』


 みんなは不思議そうな顔をして、コロンと転がった。


「ふふっ、可愛いっ!」


 あまりの可愛さに思わずむぎゅーっ! とみんなを抱きしめちゃった。うちの子達が可愛すぎる。


「かき氷は、氷を薄く削ってシロップを掛けて食べるんだよ~」


 試しに錬金スキルさんで作ってみよう。まずはシロップを作ろうかな。ブドウとお砂糖でシロップを作ろう。


「錬金!」


 シロップが出来たので、次はペンギンスライムのバニラに氷を出して貰おう。


「バニラ、氷を出して貰って良いかな?」


『任せるぺん~! アイスぺんっ!』


 目の前には大きな氷の塊が出来た。器に入ったかき氷を人数分思い浮かべてから錬金する。錬金して出来たかき氷に、さっき作ったブドウのシロップを掛けてみんなに出してあげる。


「これがかき氷だよ。味見してみてね」


『冷たくって甘くて美味しいくまーっ!』


『冷たくて身体がカチンって凍りそうぴょん!』


 キーンってするんじゃなくてカチンって凍っちゃうんだね。ベリーの動きがちょっと遅くなっている気がする。スライムって氷ダメなのかな?


『ハル、寒いぺん~』


「バニラ、大丈夫? 寒いの苦手だものね、ごめんね」


 バニラをもふもふのブランケットで包んで抱っこしてあげた。


『ぼくはお代わりしたいこんっ! バニラのも食べてあげるこん~』


『シフォン、ありがとうぺん』


「シフォンは冷たいの好きなんだね~」


『ライチも冷たいのおいしかったぴよっ!』


『ぼくも好きぱん~』


 バニラは寒い所が苦手だったけれど、冷たいのもあんまり得意ではないんだね。氷は出せるのにちょっとびっくりだ。

 シフォンとライチとタルトは冷たいのも好きみたいだね。


「大丈夫? 無理して食べなくて良いからね」


『おいしいぴよっ! もっと食べたいぴよーっ!』


「食べすぎるとお腹痛くなっちゃうから、また今度食べようね」


『ぼくが作った氷から、美味しい物作っちゃうハルは凄いぺんっ!』


「ふふっ、ありがとうね。でもバニラもこんな大きな氷が出せて凄かったね!」


『えへへぺん~』


 ブランケットに包まれて、てれてれしているバニラが可愛い。ついついなでなで撫でてしまう。


 シロップは、レモンみたいなレオン、オレン、ブドウ、小豆もあるから茹で小豆を乗せたのも作れそうだね。


 日本にいた時の屋台と同じようなかき氷機を作ろう。ベリーや私が回しやすいように軽くて丈夫なミスリルで作っちゃおうかな。素材の無駄遣いって怒られそうだけれどね。


 ミスリルを取り出してかき氷機を良く思い浮かべる。ベリーが高速回転出来るのと、私が手回しで回せるのと2種類作っちゃおうかな。


「錬金!」


 光が収まると2台のかき氷機が出来ている。ベリーがやりたくてうずうずしているから、バニラに氷を出して貰ってベリーに高速回転をして貰おう。


「ベリー、かき氷機の上で高速回転お願いしても良い?」


『任せるぴょんっ! 高速回転ぴょん!』


 ベリーが高速回転をすると、シャリシャリと氷が削れてお皿の上で山になっていく。


(ん~、やっぱりベリーにやって貰うの可愛すぎるっ!)


 私もシャリシャリとかき氷機を回してみると、なんだか楽しい。明日はみんなでかき氷屋さんで楽しもう!

 シロップを沢山作って置いて、氷はバニラにその都度お願いしようかな。


 準備が出来たら、久しぶりのロールさんのお夕飯を食べて、みんなでもふもふして休もう。明日は朝から忙しいぞ~!



 次の日朝起きて準備をしたら、屋台の準備をしに外に出る。外に出ると、建国祭の飾りつけがあちこちにしてあって賑やかだ。見ているだけで気分が上がって、それだけで楽しい。


 指定された場所に広めのテーブルを出して、かき氷屋さんの準備をする。かき氷機とお皿、シロップを並べたら準備完了!

 みんなもソワソワしてあっちへぽよぽよ、こっちへぽよぽよしていて微笑ましい。氷を出してくれるバニラにはほんのり温かい場所を作っておいてあげた。


『ハル、ありがとぺん~。これならいくらでも氷出せちゃうぺん!』


「ふふっ、ありがとう。とっても頼りにしてるよ!」


『えへへぺん~』


 準備が出来たら、温かい紅茶を入れてのんびりしよう。

 少しすると、拡声の魔道具で街全体に国王様の声が聞こえた。建国祭が始まったみたいだ。


 屋台を始めると、すぐに色々な人が買いに来てくれる。一番に来てくれたのは、冒険者ギルドの受付のリルさんだった。


「ハルちゃん、久しぶりっ! 屋台を出すって言うからみんなに会いにきちゃったよ」


「リルさん、ありがとうございます」


「かきごおり? どんな物なの?」


「氷を薄く削って、シロップを掛けて食べるんですよ~」


「へぇ。じゃあ、このブドウ味で1個くださいな」


「ベリー、お願いして良いかな?」


『任せてぴょん! リル、ちょっと待っててぴょん~』


「えっ、ベリーちゃん。なになにっ?」


『高速回転ぴょん!』


「えっ!? か、かわいいーーーーー!!」


 リルさんは、ベリーの高速回転で大喜びしてる。楽しんでもらえるのも嬉しいし、うちの子達の可愛い所を見て貰えるのもすごく嬉しい。


「リルさん、はいどうぞ~」


「んんっ! 甘くて冷たくって、さっぱりと食べられるね。美味しいよ~」


 それからベリーの可愛さからか、すごく行列になってしまって大変だった。見かねた洋服屋のアリサさんがお手伝いをしてくれて、なんとか落ち着いた。


「アリサさん、とっても助かりました。ありがとうございます!」


「ふふっ、みんなが可愛かったから役得だったよ~。それにしてもかき氷良いね。暑い時に毎日食べたいよ~」


「気に入って貰えて良かったです。氷がすぐに手に入るなら、かき氷機作りますよ~」


「えっ、本当!? 氷屋さんが近くにあるから欲しいわっ!」


 アリサさんにかき氷機を渡してからティリスの街へ帰ろう。アリサさんが手伝ってくれている時に、商業ギルドのギルマスのビスコさんや、冒険者ギルドのギルマスのレオンさんもわざわざ並んでまで買って行ってくれた。


 今日もみんなは頭にトレーを乗せて、かき氷を運ぶお手伝いをしてくれている。見ていて和んじゃうので、並んでいてもみんな大丈夫なんだとアリサさんが教えてくれた。


 夕方になって屋台を閉めたら、みんなを籠に入れて籠ごと抱っこして一緒に街をお散歩する。みんな美味しい物大好きなので、屋台で沢山買ってアイテムボックスに仕舞っていく。宿に帰ったら一緒に食べるんだ~。


 お祭りの時はいつもと違う商品を出す屋台が多いから、とっても楽しいんだよね。限定物にはついつい惹かれちゃうのです!

 でもそれはみんなも一緒だったみたい。あっちこっちー! と大騒ぎだった。宿のお部屋に帰ったら、買ってきたものを広げてみんなで楽しく食べよう。


『くふふ、ハル。早く食べるくまー!』


『はやく食べたいぱんっ!』


「ふふっ、みんなで好きなのを取って食べて良いからね~。取って欲しい時は言ってね」


『ハル、あれたべたいぴよー!』


『ハル、あれ食べたいこんっ!』


「はい、どうぞ~」


 みんなはぱくぱくっと次から次へと食べていっている。お腹壊さないと良いんだけど、大丈夫かなぁ?


『これ、美味しいぺん~』


『こっちも美味しいぴょんよ!』


『ハル、これお勧めくま!』


 ひぃろがお勧めしてくれたら、みんなもあれこれとお勧めしてくれたので、お腹がはちきれそうだ。でも、期待した目をされちゃうと食べない訳にもいかなかったんだよね~。


 次の日、王都で少しお買い物をしたり、ご挨拶したりしてからアリサさんのお店にかき氷機をお届けしてからティリスの街へ帰った。

 お店に帰るとやっぱりホッとするね。

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えっ?もふもふなのにスライムなの?!~可愛いスライムと行く異世界旅~ 猫野 伽羅 @neko_kyara

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