カクヨムWeb小説短編賞2020 大賞受賞作!

乙彗星(おつすいせい)

授賞式の会場で出た料理は食べ放題でした


 貴方あなたの目の前には人語じんごあやつきつねおおかみがいる。


「やあいらっしゃい。僕は人間の心理しんりを研究している者だ。君はタイトルを見てここへ? けどね。僕達が君にこれから話す内容はそれとは全く関係ないんだ」


 狐は言った。


「そもそも締め切り前にその大賞受賞作品が公開されているなど運営側にとっては不利な事でしかない。癒着ゆちゃくや出来レースを疑われるコンテストであるなら……やる意味がないんだよ」


 狐は続ける。


「ところで君は自分の作品に自信がなく他人のを参考さんこうにするタイプかい? それとも他人の作品を見定みさだめてやろうとここに来た強気つよきなタイプかな?」


 狐は話題を変えて貴方の心をのぞき込むように身を乗り出す。


「完全に自分の世界に陶酔とうすいしている人間は他人に興味をいだかずここには来ないからね。あ、もし君が……読み専って言うんだっけ? そういう人種じんしゅなら御愁傷様ごしゅうしょうさまとしか言えない」


 狐は横の狼を見る。


「彼は猟師りょうしなんだけど、獲物えものは追うよりさそい出す方が楽って言う僕の言葉を信じてくれなくてね。だから実演じつえんをしたのさ」


 紹介された狼がうなずいて口を開く。


わなだと書いてあっても来るとは人間はバカなのか? 本題を言うが『俺達』は腹ペコでね。だから次はお前さんの味を審査しんさしてやろう。みんな、出てこい!」


 狼がしたを出してニヤリと笑った。貴方を囲むようにくまや狼などがしげみから姿を現す。


「そうか。タグにホラーと入れておいても良かったかもしれないな。うん、参考にしよう」


 それが貴方の聞いた狐の最後の言葉だった。

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