エピローグ

「続いてのニュースです。このところ活発な噴火活動を続けていた、東京湾沖の火山礁ですが、本日未明に突然沈静化いたしました。現場ではすでに、火山礁は再び海面下へと姿を消したことが観測されている模様です。また、それに呼応するかのように、日本各地で頻発していた火山活動も、ほぼ通常のレベルまで減少しているということです……」



「蘭風、ほら見て! 東京湾の火山、なくなったんだってさ」


 テレビで朝のニュースを見ていた時雨馬は、台所に立っていた蘭風にそう話しかけた。

「……本当ですね! これってきっと、時雨馬さまの妖力が本格的に覚醒してきたっていうあかしですよ」


「そうなの? そんなことわかるんだ」


「ええ。……ちょっと失礼しますね?」


「ちょ、蘭風……」


 蘭風は、両手で時雨馬の肩を抱くと、自分のおでこと時雨馬のおでこをくっつけた。

 そうしてしばらく目をつぶったあと、彼女はゆっくり目を開けて言った。


「はい。時雨馬さまの妖力、ほんのちょっぴりですけど、確かに感じますよ」


「本当?」


「はい!」


 龍神宗家の宗主としての力……。蘭風にそう言われたものの、まだ時雨馬には、まったくそれが実感できないでいるのだった。


「……そう言えば、時雨馬さま。昨日のごほうび、まだいただいてなかったですよね。よろしいですか?」


「ごほうび?」


「時雨馬さま……」


 そう言うと蘭風は再び目を閉じ、今度は唇を時雨馬の顔に近づけた。


「んー、んっ♡」


「……!」


 ふたりの唇が重なったその瞬間、玄関のドアが勢いよく開いた。


「おっはろー! 時雨馬、学校行こー。……って、まぁた、あんたたち!」







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蘭風の斬 猫とトランジスタ @digiman

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