5
△が長い休暇に入らずに、僕と彼女がもっと早く話せていたならば。この引っ越しをしなくてもよかったのかもしれない。でもそんなこと、考えても詮無いのだ。△の推薦図書は実を言うととてもおもしろかった。なかなか読み進められなかったのは、一文ずつの情報量がひどく多いせいだ。久しぶりに小説の世界に酔った。
現実はやっかいだ。僕は大人になってしまったけれど、ほんとうは物語の主人公になりたかったのだ。けちをつけながらも読まずにはいられない。いつかどこかで、『はてしない物語』みたいに本のなかに吸い込まれて、自分だけの秘密の冒険をしたかった。
そろそろ、時間だ。
さよなら△、僕は僕なりに自分の物語を紡ごうと思う。
コールドスリープの装置の中で、僕はそっと目を閉じた。
願いは一つ。長い夢が見たい。
さよなら△ らいらtea @raira_t
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます