ウィンディーネ・シンギュラリティ(お題:○○パンク)

『ウィンディ』が発見されたのは何年前だろうか。今となってはそれは当たり前となっているが、当時はそれはもう画期的な技術革新につながるとして、日夜マスメディアで取り扱われていたのが嘘のようだ。


 なんたって、永久機関を夢物語から現実に引きずり落とす代物だったのだから。


 とある日本の科学者が、共同研究をしているアメリカ人の学者と一緒に発見したとき、名前を「ウィンディ」と名付けた。水の精霊。ウィンディーネにかけたものだ。簡単に言えば、『力を加えなくても、事前にプログラムした動き通りに動く液体』だ。完全にエネルギー保存の法則に逆らっているものであったっため、世間の目は最初こそ厳しかった。だが、再現性が証明されたことと、何よりもエネルギーを加えないでも運動を継続するということが評価され、発見から数年後には実用化の研究が盛んになったほどだ。

 そして、それから更に十数年経って、「ウィンディ」はとうとう、無限の電気発電所に利用されるほどであった。タービンを回す動力として、実用化に成功したのだ。つまり、人類はノーコストでエネルギーを手に入れる術を身に着けたことになる。


「ウィンディ」は人間の科学の力で生まれた傑作というより、“偶然発見された”に等しいものだった。とある地域でしか手に入らない水の研究中、水質調査の為に電気を流したところ、水質に異常が発生し、“水が能動的な動作”をするようになったのだという。これが後の「ウィンディ」だ。「まるで、液体に生命が宿った様だった」とは、当時、その場にいた研究助手の発言だった、

こうして、「ウィンディ」は人類の最重要課題の一つ「エネルギー問題」を解決する存在として、かけがえのないものになった……いや、そんなレベルを超えている。人類史における技術的特異点となったのである。




『インタビュー・○○博士による内部告発』


 世間はあれを「夢の水」だ、「魔法の水」だと読んでいるが、俺はそうは思わない。みんな、真実を知らないから、呑気にありがたがることができるんだ。

だって、おかしいと思わないか?なんで「ウィンディ」の原材料は例の“湖”からしか取れないんだ?水質調査はなんども行って、異常はなかった?そらそうだ。異常があることが露呈したら困る連中によって隠されてるんだから。

 いいか、アレは只の水じゃない。“生きているんだ”。生きているだけじゃない、“意思”がある。そして、生きていてい、意思があるならつまり……奴らは食い物が必要ってわけだ。


普段は水中のミジンコとか食ってるから傍から見たら「無から有を産む魔法」に見えてるだけなんだぜ……笑えるな。

で、だ。問題は、電気タービンを回すみたいな大規模な運動をさせる場合だ。「ウィンディ」は確かに効率のいいものではあるが、それにも限界はある。規模が大きい運動なら、それだけの“食いもん”が必要だ。さて、いま、あいつらはなにを食っているんだろうな……?近頃、電力発電所付近では不必要に「ホームレス狩り」が多発してるみたいだが……無関係じゃないだろうな。


アレは魔法の水なんかじゃない。悪魔そのものだ。

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胡乱文芸部ワンアワーライティングチャレンジ企画用 笛座一 @fetherwan

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