第11話

 国境付近の街は、数時間で地獄に変わっていた。

 戦争である。

 敵国が砲撃で街を灰燼かいじんに帰したあとは、戦車や歩兵輸送用の装甲車両を送り込み、激戦となった。

 個人撮影の動画はむごいものが多いので、三人はなるべく見ないようにしていた。

 珍しく、ネット配信やラジオなどのニュースをつけっぱなしにしていた。

「疲れてきたな」

 カルーノもラジオの聴きすぎで疲労が溜まったらしい。ジャンが音量をかなり下げる。

 とりあえず重要な単語は聞き取れる程度の音量だ。

「運転、代わるか?」

「いや、いい。情勢の方が辛いだけだ」

 カルーノも、祖国の地が蹂躙じゅうりんされるのは嫌なのだろう。

 報復用の、シンプルな構造の弾道ミサイルは大国や各先進国の働きかけで発射が阻止されている。

 なにせ、核弾頭をお互いに持っている国同士だ。

 各国はなるべく非核戦争のまま、引き際を作って場を収める機をうかがっているのだろう。


 空中要塞が国境地帯に到着する。

 要塞はその中心部から、気化燃料を超が三つ付くほどの高圧で噴射し、空中要塞の上空の周囲十数キロを爆風と圧力で吹き飛ばす兵器を持つ。

 ステルス兵器を強引に広範囲で粉砕したわけだ。

 要塞から放たれた巡航ミサイルにレーザーが敵陸軍を粉砕する。

 一部地域は未だ敵国の制圧下に置かれ、市民が人質となっている。手出しができないまま武装解除のタイミングをうかがうようだ。

 結局戦争は、地図を少し塗り替える程度でまだまだ続くのだろう。

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Junk Wars(ジャンク・ウォーズ) 書い人(かいと)@三〇年寝太郎 @kait39

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