消指
KEIV
欠いたる指
いつも通り人の波に揉まれながら通勤電車に乗り、コンベアに乗せられた様に職場に向かって歩く。
席に戻る途中、ブルースクリーンのパソコンを見かける。
「確かあそこって××××さんの席だったよな……」
そう呟きながら席に戻る。
「全然進んでないな」
昼休み、隣の席に座った同僚にそう言われて、改めて気付く。進行目標の約3割。自分としては絶不調どころの話では無い程進みが悪い。あの席の事が頭から離れない。
昨日の事を振り返る。
ある事に気付き、ゾッとする。
「いや。そんなハズないよな……」
そう言いつつ確信に至る。昨日の彼女の左手には指が足りてなかった。正しくはまるで、そもそもそこに指が無かったかの様だった。と言うべきだろう。2日前は確かに5本あったが、昨日は薬指・小指が欠けた3本だった。はっきり言って物凄く気持ちが悪い。吐き気すらする程に気持ちが悪かった。
お昼が終わり、席に戻るとそのパソコンはシャットダウンされていた。彼女が行方不明になっていると言う事を聞いたのは翌日だった。
その事すら忘れかけたであろう、いや忘れていた、1年半後その事が起きた。朝、目が覚めると左手の薬指・小指が無い。その時にはなんの違和感も抱かなかった。ただただ普通だと。いつも通り仕事に向かい、いつも通り仕事をこなし、いつも通り家に帰る。
翌朝、目が覚めても頭がボーっとして何も出来ない。きっと……そう…………
その日の午前中、ある1台のパソコンがブルースクリーンを表示していた。しかし、午後には消えていた。
消指 KEIV @3u10REAPER
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