神役所のお仕事‼

@Dug

神役所のお仕事‼



「こ、ここが神役所……」


私は、目の前にそびえたつ建物を見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。

子供のころからあこがれに憧れた仕事、神役所での勤務。

目の前の神役所が今日からの私の職場だ。


ウイーン


私は、自動ドアを通り抜け神役所へと入っていった。

よし、まずは第一印象が大事だよね、がんばるぞ‼

私は、神役所で働いている人々に体の正面を向けると、大きく息を吸い込んだ。


「あ、あの、本日からここで働かせていただきます。 アミといいます、よろしくお願いします。」


私は、はきはきとした声で自己紹介をした。

みんな忙しそうで反応といった反応は帰ってこない、それは仕方ないことだ。

これから私の働く職場いったいどんな先輩がいるんだろう。

楽しみだ。



「ああ、アミさん話は聞いているわ、ちょっと他の人たちは忙しいんだけど、これから一緒に頑張っていきましょうね。」


すると一人のウエーブのかかったショートカットのいかにも仕事ができそうな女性が話しかけてきた。


「は、はい‼」


やったー、すごく優しそうでいい人だ~。

怖い人だったらどうしようかと思ってたんだ~。


私は、職場で初めて話しかけてくれた人がとてもよさそうな人で、これからの仕事でうまくやっていけそうな感じがして、頬を緩ませた。


「ちなみに私の名前はアマナよ、あなたは、亜美ちゃんでいいかしら。」


「はい、わたしもアマナ先輩って呼んでもいいですか。」


「うふふ、いいわよ最近の若い子は元気があってよかったわね。」


「わ、私、ここで働くのが小さいころの何よりの夢だったんです。 だからお仕事頑張りまいてっ‼」


そうして私はお辞儀をすると同時に近くにあった机の角に思いっきり頭をぶつけた。


「うふふ、じゃあ早速お仕事を任せるわ、今日からのあなたが働く課は転生課よ。」


私は、あまりの恥ずかしさに顔を赤らめる。


「転生課ですか。」


「そう、この神役所には毎日たくさんの魂が流れてくる。 その魂が次に行く世界を決めるところよ、仕事についてそうそう大変だけど頑張ってね。」


「はい、頑張りますっ」


アマナさんはうふふと微笑むと私を見送った。


「えっと、ここが転生課かな?」


私は恐る恐るその扉をくぐった。

すると一人の女性が砕けた姿勢でお菓子を食べていた。


「ん、君どうしたのここは転生課だよ。」


「あの、今日からここで働くことになったアミといいます。」


私は、事前に決めていた挨拶をする。

そうするとその女性は、にかっと笑ってお菓子を食べる手を止めてこちらに正面を向けた。


「あー、君がアミちゃんね、私はモノっていうんだ、さっそく仕事お願いするよ。 君の席はあそこで、仕事は机の上においてあるから、何かわからないことがあれば何でも聞いてねー。」


よし、今日から私の楽しい仕事生活が始まるんだ。

気合い入れていかなくちゃ。

そうして、私は自分の席に座るとその書類を片付けていくのだった。



問題1・転生者に強い力を渡しすぎ問題。


「あのー、モノ先輩、少々問題があるのですが……」


「ああん、どうしたー。」


モノ先輩は居眠りをしていたらしく、口からよだれを垂らしていた。

もしかして、この先輩ダメな人なんだろうか……


「あの、この転生者さんに割り当てられている能力って、少し強力すぎるんじゃないですか。 このままだとこの世界の魔王を小指で倒せちゃいますよ。」


モノ先輩はそのステータス値を見て笑った。


「あー、確かにこの世界の強さの基準から見たらこの能力値は異常だね、モンスターだよこの人、わははは。」


「いや、わはは、じゃないですよ、どうするんですがこれ。」


「んー、面白いからそれでいいんじゃない?」


「へ?」


「あるある、どっかにあるよ魔王を小指で倒す勇者がいてもいいでしょ。」


や、やっぱりこの人はテキトーな人だ。

私が何とかしなきゃ……


「それにね、アミちゃん。 大事なのは力じゃないんだよ。」


モノ先輩は急に神妙な顔つきで私の目を見つめた。


「世の中には、力じゃ解決できないことがいっぱいある。 なんでだと思う?」


「人は、一人では生きられないから……」


「そう、どんなに強い力があっても、手に入れたいものは一人じゃ手に入らない。 いってしまえば私たちは、この転生者にとてつもない試練を課したに等しいのさ。 お前はその力を何を守るために使うんだ? って感じで。」


「確かに……そうかもしれません、さすがモノ先輩ですね‼」


(あっぶねー、寝ぼけて、間違えたのそのままだったわー、ま、なんかアミちゃん納得してくれてるしこのままでいっか。)


〇〇解決しました☆〇〇


問題2、転生者の文句が多すぎ問題


「あの、モノ先輩、相談したいことがあるんですけど。」


「モノなら今はいないわ。」


「あ、えっと」


「モノの同僚で隣の課のカレンよ。 アミさんよね、よろしく。 いつもモノがいつも迷惑かけていないかしら。」


「あ、いえ、こちらこそよろしくお願いします。」


私は、モノ先輩の席に普通に座っている女性に対する困惑をやっととけた。


「それで、何やらお困りのようだけど何か困っていることがあるなら話を聞くわよ。」


「あ、はい、実は、手違いでお亡くなりになられた魂の方がいらっしゃって……」


「ああ、ほんのたまにいるはね、そういう魂。 そういう時はその魂が望んだ力を授けて転生させる決まりになってると思うけど。」


「そ、それがですね、その注文が多すぎて困っているんです。 人間は嫌だから人間以外の存在になりたいとも言っておられて、それなのにこちらに任せるというんです。 で、どうしたものかと。」


「ん、そうね、そういう時は、要素、要素をひとつひとつ並べてまとめてみることをお勧めするわ、まあ、百聞は一見にしかず、この問題、私も一緒に解決しましょう。」


「あ、ありがとうございます。」


「ふ、遠慮しなくていいのよ。 それで、その願いは何なのかしら。」


「空が飛びたい、とてつもなく強い生命力、子だくさんになりたい、凄まじいスピード、さらには忍者のようなステルス能力、あとは仲間に恵まれたいらしいです。 それで人間以外って、どうしたらいいんでしょうか、もう、適当な動物に能力だけ付与しましょうか。

どうしても迷ってしまって。」


「いや、その話を聞いてすぐに最適解を思いついたわ。」


「え、本当ですか? さすが先輩です。」


「そう、最適解とは……ゴキブリよ。」


「え?」


「我ながら、ぴったりな案だと思うわ、あなたが提示した条件をすべて満たしているし。 何か問題点があったかしら。」


「うーん、なんか違うような気もしないでもないけど、それでやってみます。」


~~5分後~~


「で、どうだった。」


「泣いてました。」


「うれし泣きね。」



〇〇解決しました☆〇〇



問題3、モノさん、だらけすぎ問題


「あの~、モノさん?」


ぐーすかー、ぐーすか。


「あの、モノさん? 聞きたいことがあるんですが起きてくださーい。」


呼びかけてもモノさんは一向に目を覚ます気配はない。

私は、いったいどうしたものかと手をこまねいていた。


「おい‼ モノはいるか⁉」


勢いよく扉を開けて入ってきたのは、きれいに後ろにまとめ上げられた髪の毛と眼鏡をかけた知性を感じさせる人だった。


「ふぇっ‼」


あまりにも大きな音とともに登場してきたことにより、モノ先輩は寝ぼけながらも目を覚ます。


「おい、モノ、お前、また仕事中に寝ていたんじゃないだろうな。」


「あははは、そんなわけないじゃないですか、もうおめめパッチリですよ、パッチリ。」


「……はぁ、お前は寝起きはいつもそういうんだよ。」


モノ先輩が警護を使っているあたり、モノ先輩の上司さんなのだろうか。

私は、その人がどういった人であるかについて考えあぐねていた。


「あの……」


「ああ、アミさんだね、私はこの神役所長の秘書をやっているナタリアだ。 どうだ、モノは頼りになっているか?」


ああ、秘書さんか、でもどうしてこんなところに。


「え、まあ、はい、なんだかんだわからないことがあるときは、相談させてもらっています。」


解決できた試しはないけど。


「そうか、なら安心なのだが、モノはこう見えてやるときはやるやつだからな。」


「やだなー、そんなに褒めないでくださいよ~。 んで、ところでどうして今日は転生課に?」


「いや、なんだ。 お前が最近、出勤時間になってもデスクにいないことが多いと報告を受けてな、お前、仕事中に席を外して何をやっている。」


「あー、いやー、多分それはあなたが一番知っているんじゃ……」


「そうだ、その件でお前に話をしに来たんだ。」


「あの、モノ先輩何かやったんですか?」


「ああ、こいつは仕事中に、役所長と…寄りにもよって……麻雀をしていたんだ‼」


「いや、だからそれは本の息抜きのつもりだたんですってば~」


「息抜きでなんであろうと、仕事中に麻雀をする奴がいるか‼ そのせいで役所長は仕事の進みが遅れているんだぞ。」


「え~だって~役所長がやりたいって言ってきたんだもん、モノちゃん悪くなーい。」


モノ先輩は、駄々をこねるように地面をゴロゴロと転がる。


「こ、こいつ」


「せ、先輩……」


さすがに私もナタリアさんもドン引きした。


「とにかく役所長の仕事が遅れるのが何よりの問題なのだ。 仕事の時間はお前はこのデスクから一歩たりとも出るな、それであれば寝るなりなんなり好きにしろ。」


「寝るのはいいんですね……。」


〇〇解決しました?〇〇



問題4、酔うと人は別人問題。


「ふう、今日もたくさんの転生者さんたちを見送りました。」


「おうー、アミちゃんお疲れ様――ってなとこで悪いんだけどこの資料を届けてくれなーい。」


「はい、わかりました。 で、どこへ届ければいいんですか?」


「アミちゃんは知ってるかな、アマナっていう人のところなんだけど。」


「ああ、アマナさんですね、ここに来た初日に案内してもらった人です!  あ、結構近くの課じゃないですか。」


「そう、すぐそこだから、よろしくぅ~。」


「いいですけど、なんで自分で行かないんですか。」


ギクッとモノ先輩の肩が跳ねる。


「それは~、あれさ、あれ、私がめんどくさがりだからさー、アミちゃんも私がずぼらっていうのは知っているだろう。」


「それは、そうですけど、なんか不自然な気がしただけです。」


まあ、あれから仕事に慣れるのに必死で、顔を合わせる機会がなかなか、なかったからちょうどいい機会か。


「では、行ってきまーす。」

「はは、行ってらっしゃーい。」


そして、私はアマナさんがいる課の目の前まで来た。

ドアにかけられた表札を見る。


「天罰課か、いったいどんな仕事をしているんだろう。 失礼します。」


私は、軽いノックと挨拶とともにその部屋に入室した。


「って酒くさっ‼ ナニコレ‼」


私は、鼻をすぐに抑えた。

そうでもしなければその場にいられないほど、その部屋にはお酒の匂いが充満していた。

そして、足元に転がっているのは無数の酒瓶。


「なにこれ、仕事場でお酒? こんなところにアマナさんがこんなところにいるはずない、来る場所間違えたかな。」


「いぇや、あってるよーん」


「きゃっ」


私は、いきなり後ろから抱きつかれた。

そして、その人物こそがアマナさんだった。


「アマナさん、何やってるんですか……」


「んあー、ここ、天罰課で何やってるかってー、これよこれ。」


アマナさんはそういうと近くにあった水晶のようなものを指手軽くはじいた。

そうしたら、その水晶に映っていた風景に、ズガーンと稲妻がはしった。


こ、怖い、この人、息を吸って吐くような感覚で天罰落としたよ。


「もしや、これがいわゆる神の気まぐれってやつですか。」


「そーよ、そーよ、誰に天罰を落とすかなんて素面じゃ決めれないっての、ひっく。」


と、とりあえず、今のアマナさんはあの優しそうで大人なアマナさんじゃない。

はやく、離れないと私の身の危険が……


「あの、これモノ先輩が渡してくれっていう、資料です。」


そう言って私はモノ先輩からもらっていた資料を酔っぱらっているアマナさんに渡す。


「あー、転生者の粛清依頼ね、わかったわかった。」


「転生者の粛清依頼?」


「あれ、もしかして何にも聞いてないのアミちゃん、なら一緒にやろーよ~、一人さみしー。」


「あッちょ、ちょっと待ってくださいよ。」


私は、アマナさんに強引に手をひっぱられ、強引に椅子に座らされた。

アマナさんも隣の椅子にドカッと座る。


「特殊な能力をもらって転生した転生者もその特殊な力を使って悪い事をする人たちがいるの。 例えばこの人。」


そういって、アマナさんは机の上の水晶に映っている光景に移す。

その光景には偉そうに椅子に座っている一人の男の姿があった。


「この男はね、モノんとこの転生課で授けた、魔王を倒すための力で、人を脅して、お金や女性を意のままにしているんだよ。」


「それは…ひどいですね……」


日ごろからいろんな人に力を授けている私としては、その話は責任は私にあるようにも思われた。

そんな落ち込んでいる様子のアミを見て、アマナはふふんと笑った。


アマナさんはアミの目の前で手を振るとその手の指で水晶をはじく。

「だーかーらー、こいつの股間に稲妻ドーン。」


「ええええええええええええっ、怖いです、アマナさん怖いです‼」


水晶に映った光景は悲惨なことになっており、とてもどう表現したらいいかわからなかった。


「ちなみに、いまのでこの人の能力も没収されたからねー。」


「あ、はい。」


これが天罰課か、確かに毎日こんな事したら罪悪感を薄めるためにお酒を飲むのも仕方ないかもしれない。


「アミちゅあーん、もうずっとここの課にいてよーん」

それにしても飲みすぎだとは思う。


「いや、私も仕事がありますから。 これで帰らせていただきます。」


そういって私が足早に部屋を退室しようとすると、どこからともなく出てきた神役所の職員に扉への道を阻まれた。

くっ、この人たち、ッ全員酒臭いッ!


「おーい、こいつは最近はいったばかりのしんじんだぜぇ、天罰課一同で歓迎してやろうぜぇ‼」


アマナさんが、とても初対面の時の印象からは信じられないほどの雄たけびを上げた。

そして、私は、大勢の天罰課職員に担がれた。


「「「「「「お祭りはこれからだぜーーー‼」」」」」」


もう、お祭りって言ちゃってるー‼

あれ、モノさんが私にわざわざ天罰課に届ける書類を頼んだのって………


「モノさぁーん‼ はかりましたねー‼」


結局その日は、就業時間まで返してもらえなかった。



〇〇苦い社会経験しました☆〇〇



問題4、役所長のまにまに


「おはよーございまーす。」


私は、挨拶とともにタイムカードをさして、転生課のドアをくぐった。


するとそこに小さな女の子が立っていた。

床に届いてしまいそうな綺麗な銀髪、その色と似た白いワンピース。


「あのー、どうしたのかな迷子かな。 おかーさんと一緒に来たのかな?」


私は、なんでこんなところに女の子がいるのかが、わからなかったため迷子だと判断した。


「ま」


「ま?」

ママかな、お母さんを呼ぼうとしているのかな可愛いな


「ま、麻雀したい」


「おはよーっす」


その幼女の衝撃発言とともに、モノさんが入室してきた。

いつもどうり適当な態度である。

しかし、アミは、今回だけはどうしても許せなかった。

アミは、モノの肩をがっしりとつかむ。


「モノさん‼」


「な、なんだよ、朝っぱらから元気だなアミちゃんは。 なんかいい事でもあったの?」


「そうです、驚くべきことが起きたんです。 見てください、この子は転生課の部屋に間違えて入ってきた女の子です。 モノさん、あなた、この子に麻雀なんて教えましたね。 そうじゃなきゃ麻雀したいだなんて言わないですよ。 どう責任をとるんですか。」


「ああ?女の子って何だ、ああ、シルか。」


やはり、モノさんはこの女の子と知り合いのようだった。


「この女の子、シルっていうんですか。 よろしくねシルちゃん、私は、アミお姉ちゃんっていうの。」


少女は、アミが自己紹介をしても一瞬たりともアミのほうはみようとせずその視線はモノにくぎ付けだった。


「モノ、麻雀しよう。」


「おお、いいぜ。 準備するからそこ座ってな。」


「モノ先輩‼ こんな女の子に麻雀なんて教えちゃだめですよ。 もっとしかるべき遊びがあるはずです。 ん、シルちゃんお姉さんとおままごとしようか。」


「まーじゃん♪ まーじゃん♪」


ダメだ、麻雀の歌を歌い始めた。


「アミちゃん、そんなに怒ってないでもう少し笑顔でいようぜ、ほら、シルが怖がってる。」


「お姉ちゃん、麻雀させてくれないの?」


そんなうるッとした瞳で私を見ないで、そうか、わかったわ。

作戦変更です。

こうなったら、麻雀でシルちゃんをコテンパンにして、麻雀に対して面白くないという感情を持たせるしかありません。


「私も、その麻雀、参加させてもらってもよろしいでしょうか。」


「お、いいぞ。 二人じゃできないから誰か呼ぶしかないと思っていたが、ちょうどいい三人でやろう。」


「♪♪♪」


シルちゃんは、麻雀をする準備が整ってとてもうれしそうだ。

いいでしょう、見せてあげますよ、私の教育的麻雀テクニックをね‼


「ロン」


なにっ‼

シルちゃんが上がっただと、さすがやりたいだけあって強いみたいですね。

しかし、安い一手でのあがり、まだまだいけます。


「ツモ 国士無双」


「な、なんだって……」


「おー凄いのでたなー」


この子強すぎる。

わかるこの子の迷いのない手の動きがそれを物語っている。

しかし、最後までどうなるかわからないのが麻雀。


「ロン 緑一色」


「わ、私の負けです。」


「いや、アミちゃんそう落ちこむな、今回はシルの運もよかったさ。」


ぐすん、何やら本来の目的とは違っている気もしますが、負けて悔しいものはくやしいのです。


「モノ、もう一戦やろう。」


「ああ、待ってろ」


そういって、モノさんが肺をぐちゃぐちゃにかき回し始めると。


「ちょーと待ったぁぁー‼」


突然一人の人物が転生課のドアを思いっきり開けて飛び入ってきた。


「ナ、ナタリヤさん⁉」


ナタリヤさん前に一度、モノさんを注意しに来たことのある役所長の秘書さんだ。

そして、私は今気づいた。

私たちは、今、女の子と麻雀をしているということを。


「ナタリヤさんこれはですね、色んな教育的事情というものがありまして………」


「モノさん‼ そして…所長‼ モノさんが所長室に来ることを禁止したから、もしやとは思いましたが、自らモノさんのところに訪れるなんて‼」


「え、モノさんと……所長⁉ 所長って神役所長のことですか。」


「なんだ、アミちゃん知らなかったのか、だからなんか変なんだと思ってたんだよなー。」


この小さい女の子が、神役所長⁉


所長とナタリヤさんは転生課の部屋から出ていくところだった。


「あ、あの、私、まさか所長さんとは思わなくて、いろいろ失礼なこと言ってすいません‼」


私は、自分が目上の人に対して失礼な態度をとってしまっていたことに気づく。

私は、深々とお辞儀をした。


しかし、怒りの言葉は帰ってこなかった。

アミは、恐る恐る頭をあげる。


シル所長はにこやかに笑っていた。

「また、やろうね麻雀。」


「は、はい‼」


ナタリヤさんにガミガミといわれながらシル所長は帰っていった。


「っていうか、やっぱり女の子に麻雀なんて教えちゃいけないと思いますよ。」


「いや、どっちかっていうと、私がマージャンに誘われたんだが。」


話に聞くと、暇そうにしていたモノさんをシル所長が見つけて、麻雀を教えたらしい、遊び相手になってくれって。

そういうことなら、また遊んでもいいかな麻雀。



〇〇思い出ができました☆〇〇




問題5、秘書の憂鬱


「シル所長、今日はちゃんと仕事してくれるかしら。」


神役所のトイレの洗面台で自身の身支度を整えながら、美人秘書はそうつぶやいた。

少し憂鬱そうな顔でいるのは、シル所長の秘書であるナタリアさんだ。


「昨日、神々の合コンでなんの獲得もなかったし……」


「ナタリアさん、おはようございます。」


「きゃっ」


突然話しかけられ、今の話を聞かれたのかと思いビックリしたナタリア。

後ろにいたのは、アミさんだった。


アミさんは、転生課のモノの部下だ。

凄くいい子で働かないモノと比べてずいぶん働き者だという印象がある。


「ああ、アミさん驚かさないで、びっくりしちゃったわ。」


「うふふ、すいませんつい。」


「アミちゃんが神役所に働きに来てくれて少し経つけど、どう、仕事には慣れてきた。 まあ、あんなのが上司だから働かざるおえないだろうけど。」


「ははは、確かに仕事はもう全部私がやってるのでなれるといえば慣れましたね。」


「あははは、それはそれでどうなんだって感じだけどね。」


「あっ、でも今一つだけ悩んでることがあって、またモノさんどこかに行ってしまったから困ってるんですよね。」


「どこか行ったって、もしかしてまた……」


私の頭にとある可能性がよぎり、頭痛が走った。


「それより、その相談事、よければ私が聞くわよ。」


「ええ、いいんですか。」


「ええ、何でも聞いて。」


「あの、転生者に与える能力の話なんですが。 ハーレムの能力が欲しいという転生者さんがいて、ハーレムの能力なんてものはないのでどうやって希望をかなえられるか悩んでるんです。」


「へえ、ハーレムの能力が欲しいねぇ。」


ナタリアのこめかみにしわが寄る。

思い出すのは、昨日、大失敗した合コンだ。


「いい、アミさん、世の中はね結婚だけじゃないのよ。」


「あ、でも、その人は結婚はしないけど、たくさんの女性を侍らせたいらしいですよ。」


ぴきぴき、さらにナタリアのこめかみにしわが寄る。


「結婚したくないのに、女性とつきあいたい?」


「はい、まあ、その中で結婚したい人と結婚するらしいですよ。」


「じゃあ、残りの女性はどうするんじゃあぁぁぁ‼」


「ナタリアさん⁉」


「結婚できずに捨てられた女性は、また一から別の男を探すんかいな、そんなん無理やし、若いころじゃないと男どもは見向きもしてくれんのぞ。」


「ひええ、落ち着いてくださいナタリアさん。」


「おっと、ごめんなさい、それとその解決案思いついたわ。」


「え?」


「アミさん、確認だけど、転生課が能力を授けるのは来世で少しでも幸せになることよね。」


「はいそうです。」


「なら、転生者の要望をそのまま聞き入れてはいけないわ、自分の首を自分で締めている可能性があるもの。 だから、私たちがその人の性格から考えて、能力を与えるべきだと思うの。」


「なるほど、それは盲点でした。 確かに、願いが叶うのと幸せになるのって別ですよね。 で、今回の転生者さんには、どんな能力を?」


「それはね……」


ナタリアは、口元に人差し指をあてると、いたずらっぽく微笑んだ。


その後


「結局、そいつはどうなったんだ。」


どこからか戻ってきたモノ先輩は、お菓子をぼりぼりと食べながら聞いてきた。


「女性の大切さを知ることが幸せへの道だとか行って、女性に恵まれないという能力をつけてあげました。 今頃きっと全国の女性から避けられているでしょうね。」


「えぐいな、それ。」


モノ先輩はドン引きしていた。

すると何かに思いあった鷹のような顔をする。


「あっ、そういえばあいつ昨日の合コンで玉砕したんだっけ。 うははは、そういうことか、はははははは。」


「モノ先輩、後ろ。」


「あ? ああああ‼」


後ろには、にこやかな笑みを携えたナタリアさんがものすごいオーラを醸し出しながら仁王立ちしていた。


「誰が、行き遅れ厚化粧残念秘書ですってぇ‼」

ナタリアさんの手が拳を握る。


「そ、そこまでいってなーい‼」

神役所に悲鳴が響き渡る。



〇〇今日も、神役所は平和です。〇〇













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