ロビーから


部屋の電話が鳴った。ロビーからだった。チェックインを対応した女の声。山下さまからお電話が入っております。お繋ぎいたしますか。電話の予定も、山下という知り合いもない。そう言うとやや沈黙があって、女が息をのみ、部屋番号を間違えておりました、大変申し訳ございません、と謝罪する。構いませんと答える。受話器を置く。ベッドに横になる。電話の前となにも変わっていない部屋が、深い静謐の底に沈んでいるように感じられる。誰かの電話を待つ心地になっている。


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半透明の散文 しゃくさんしん @tanibayashi

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