別れ話


別れが縺れた。君の家に行く、夫と子どもにすべてを話し裁いてもらおうと彼は言った。投げやりだった。私ももう投げやりだった。彼をなんとか説き伏せることも、夫と子どもたちを今日この時間だけは他所へやっておく工作も、諦めた。それでも気はそぞろで時計の針が進むのに怯えながら、リビングのソファに腰を落ち着けて、窓の外を横目に見る。この家からむこうへのびる、冬晴れの白い一本道。人影が歩いてくる。風はない。夫と子どもたちの戯れる声が裏庭のほうから聞こえる。家の前まで来た彼が、インターホンを押す。その音に愛犬が高く吠える。


256 characters , 15:10

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る