第9話 東京都立大学

わたるが通う都立大学の学生の顔ぶれは見事なまでに雑多だ。

勿論真っ当な学生も居るが、航や雄太郎の様なちゃらんぽらんな学生も少なくない。


学校創設の経緯が東京都内に点在する専門学校を集約しようという理由なので、通う生徒の事情も様々。

偏差値の壁に阻まれてここに辿り着いた者も居れば、経済的事情でここを選んだ者も居る。

中高時代をアニメと2次元に捧げて、将来を考える事も無かった航は、只淀みに捕まったように都立大に流れ着いた。


アキバ通いにいい顔をしなかった両親と同じ家に居るのが嫌なばかりに、無理を通して独り暮らしを始めた航は、通学に便利な南大沢の1DKを借りていた。


わずか7.5畳の部屋だが。小さいながらもロフト付きで、折り畳みマットを置いたロフトは急な来客にも対応できる。

といっても今の航には悪友の雄太郎位しか訪れる客も無いのだが。

無理して借りた相模原線、南大沢駅近くのアパートは、見た目築20年とは思えないこ洒落じゃれた外観だ。

決して立派な建物でも無いのだが、明るいからし色の外壁が古臭さを感じさせない。

室内は典型的な1DKで、室内のドアを開け放していれば、玄関から突き当りのベランダ外の風景まで望めてしまう、いわゆるウナギの寝床なのだが。

玄関を開けた先の細い廊下は右手にシンクとガス台。左手はバストイレ。

廊下奥のドアを開ければ僅か7.5畳のフローリング。

部屋の右半分近いスペースを埋めるのはセミダブルのマットレスだ。

男一人で寝るにはいささか大きすぎるサイズだが、そこは年頃の男子の見栄。

居もしないし。出来るあても無かった彼女だが、脳内では常に花が咲いているオタク少年。

ある日突然空から美少女が降って来るのはお約束だ。

「その日」に備えて準備を怠らないのは男の嗜みと、オタク特有の拘りの為に、本来勉学に励むべき学生生活をバイトに精を出す羽目にはなっているのだが。航に後悔は無い。

(いつかこの部屋に暦ちゃんを呼ぶ日が来るんだろうか……)

オタク少年の脳内は今日もお花が咲いている。

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エンタングルライン 過去のカノジョとミライの彼氏 夏 露樹 @dacciman

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