白い交わり

暗黒星雲

★第1話 マリーと美冬の♡♡♡

 私はマリーさんに抱きしめられた。

 彼女の豊満な胸に顔が埋まってしまう。


「美冬ちゃん。かわゆい♡」


 ふるふると体を揺らして胸を押し付けてくるマリーさん。何だかはあはあって息が荒くなっている……。


 え?

 まさか?


 そう言う事、しちゃうの?


 女の子同士で??


 マリーさんはきつい抱擁を解いて私を見つめる。

 大きな、少しつり上がっている眼。魂が吸い込まれるような深いグレーの瞳。


 そして彼女はキスしてきた。

 電流が流れたような衝撃。体の芯まで痺れちゃった。


 でも唇は柔らかい。

 私は力を抜いた。


 途端に二人の唇が溶け合うような気がした。


 これがキスの感触?

 どうしよう……気持ちいい。


 マリーさんが私の唇を舐めた。

 丁寧に優しく。


 その濡れた感触で私に火が付いた。急に胸が熱くなる。

 マリーさんの舌は私の唇を割り、歯と歯茎を舐める。私も口を開いて彼女の舌を受け入れた。


 濡れた舌と舌が絡み合う。それは体中が濡れているかのような錯覚をもたらした。そしてジワリと下着が濡れていく。


 ダメ。

 今は着替え持ってない。


 私の理性は、そんなつまらない事を思い浮かべて官能を鎮めようとする。でも、まるで効果はなかった。


 もう、体中の力が抜けて立っていられない。

 マリーさんは私をソファーに横たえる。そして上着を脱いで床へと放り投げた。


 綺麗な人。

 色白でグレーの瞳。ショートヘアの銀髪は、本当に銀色に輝いてる。その上にぴょこんと飛び出ている狐の耳が二つ。


 待って。

 彼女、本当にマリーさんなの。


 マリーさんって、女性にしては大柄な体形で凄い巨乳なんだけど、顔は狐そのまんまの獣人だったじゃない。

 今目の前にいるのは多分マリーさんなんだけど、狐耳の白人。


 どうなってる??


 その時、唐突に『蛍の光』のBGMが流れ始めた。

 『当店はまもなく閉店いたします……』等のアナウンスが聞こえる。


 えーっと。これは何?

 恍惚感に浸っていた私の意識は、一気に冷めた現実へと突き落とされた。


「美冬ちゃん。美冬ちゃん」


 マリーさんの声が聞こえる。私の体を揺さぶっているのがわかる。


「美冬ちゃん」


 私は目を開いた。

 目の前には銀色の毛並みが美しい獣人がいた。本物のマリーさんだ。さっきまで見ていたのは夢だったんだ。


「気が付いてよかった。もう意識が戻らないかと思って焦ったんだから」


 そういって私の貧相な胸に顔をうずめる。

 何だかものすごい敗北感があるのだけど、それを飲み込んだ。


「大丈夫……みたいです。私、どうしたんでしょうか?」

「本当に大丈夫? 覚えてないの?」


 覚えてない?

 何の事だっけ?


 本当に記憶があいまいでよくわからない。


 確か……逃げていく偽保安官二人を追跡するために人型機動兵器トリプルDのオルレアンに搭乗した。追跡している最中に演習中の人型機動兵器エニグマと遭遇した。問答無用で戦闘になって、防御一辺倒だったのだけどマリーさんが救援に駆け付けてくれて形勢逆転したんだけど、奴らの母艦が弾道ミサイルを発射したんでそれを迎撃しようとして、オルレアンの盾で数百のクラスター弾を受け止めた……。


 冷静に考えてみると、なんて馬鹿な事をしたんだって思う。

 

「えへへ。生きてて良かった。ところでオルレアンは?」


 マリーさんがちらりと横を見る。

 そこには昆虫人間のゲルグ副長がいた。


「うーん。あまり良くないですね。盾は何とか持ちこたえたのですが、それを支えるために機関を酷使しすぎました。オーバーホールが必要です」

「ええっと。壊しちゃったの?」

「いえ、問題ありませんよ。オルレアンの重力子反応炉は100年に一度オーバーホールが必要なので、今回それに該当したと考えれば」


 つまり、エンジン回しすぎちゃって焼きつかせて全バラコースって事よね。副長さん優しすぎだわ。


「マリネリス市街は十数発の小型クラスター爆弾が落下しました。他はオルレアンの盾で軌道を外れ市外に落下。一部の家屋が倒壊し火災が発生しましたれども、これは想定された被害の数パーセントです。美冬さんのおかげでマリネリスは難を逃れました」

「そうだよ。あれは勇気がある行動だって、船長も褒めてたよ」


 そんな風に言われてホッとした。

 自分でも無茶な行動だと思ってたけど、結果が伴って本当に良かった。


 でも、問題はまだ解決していない。

 秋人さんは未ださらわれたままなんだ。


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