ズルい奴

貴音真

ズルい奴

 高校受験の時、誰がどう見ても不正行為をしている奴がいた。

 受験の真っ最中にも関わらず携帯を出していて、あからさまにカンニングをしているとわかった。

 午前に国数英のテストをして、昼飯を挟んで理社のテストがあった。

 昼飯の時、くだんのカンニング野郎はいつの間にか教室から居なくなっていた。

 俺の受験した高校は同じ中学の奴が一人も受験してなくて、そいつのことは気になったものの、他校生と話すのも何だし黙っていたら午後のテストの時にはそいつはいつの間にか戻っていた。

 午後のそいつは午前よりも最悪だった。

 テスト中なのに平気で歩き回って他の奴の解答用紙を覗き込んでいた。

 ただ、不思議なことにそいつは午前も午後も全く注意されなかった。

 最後の社会のテスト中にその理由がわかった。

 俺が座っていたのは窓際の一番後ろの席で、そいつは廊下側の後ろから二番目の席だったんだけど、その席は最初の国語のテストが始まる前に体調不良で離席した女の子の席だった。

 誰にも咎められずに不正行為をしている奴なんて最初から居なかった。

 たぶん、あいつは生きてる人間じゃなかったんだと思う。

 ちなみに、それに気がついて周りを見渡した時にはそいつはもう居なかった。

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ズルい奴 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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