後の祭の後夜祭
※ この作品は「舞台台本/脚本」として書いた物です。地の文は存在せず、ト書きと呼ばれる演出的補足が要所に差し込まれます。物語は会話のみで進行し、情景描写は読む方に描いて頂く形となります。
一般的な『小説』としてのスタイルを求めている・文章構成に拘る方には不向きである可能性がございます。
ご自身がそれらに該当する可能性があるという自覚がございましたら、ブラウザバック、もしくは途中であっても閲覧を中止する事をお勧め致します。
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(後半)
D
それって長い人生の終わりでって話?
B
死ぬ瞬間の話じゃない?
A
それだ、「ある日いきなり余命を宣告されたら」。
C
えー、そんなのいつ来るかも分かんないじゃん。死ぬ事を考えながら生きるのっておかしくない?
D
私、今まで病気とかあまりなった事無いよ~?
A
いや、病気だけとも言えないぞ。ここんトコ地震とか異常気象とかで命が危ないシーンとかが他人事じゃ無くなって来てる感じがするし、もしもって時に後悔せずに死ねるように考えるのは有意義に生きる上で意味があるんじゃないか?
B
なんか酒が不味くなりそうな話だなー。
A
じゃあそのまずい酒ですら飲めなくなるって知ったらどうだよ? まあお前はそういう繊細な事考えないか。
B
馬鹿にしてんのか? アタシだってそれくらい考えたりするさ。
C
するんだ?
D
出来るんだ~。
B
お前らな…。
A
それで? どうなんだよ。
B
そりゃお前アレだ。知り合い全員強制集合で、アタシがくたばる瞬間まで休憩無しの酒盛り。
A
お前は戦国武将か海賊か。
D
私それ行きたくない。
C
先に他の人が全員死んじゃうよね。
B
お前ら参加決定な? な?
A
うーん、考え方の方向性は間違ってない気はするけど…なんか違うような…
C
私はねー、そーだなー、うーん…多分、普段と特に変わらないままでいたいかな?
A
と言うと?
C
だってさ、「余命を宣告される」って事はつまりはもうある程度の制限時間が決められてるってことでしょ?
B
ふんふん。
C
それなのに、やりたかった事をやりたい!って始めても満足いく結果が出せるか分からないし、途中で時間切れとかなったら余計未練が残っちゃいそうだもん。やっぱり自然体のままで終わるのが一番じゃない?
A
うーーーーん…
B
なんだそれ、前向きそうに言ってるけど実際は後ろ向き全開じゃねーか。
C
なんでよ!
B
要は出来るか出来ないかでしか行動を決められないって事だろ?
C
む…、そういうつもりで言ってるんじゃないわよ。
D
私は…
C
ん?
D
私は…最後は、大切な人達と一緒にいたいな。一人で抱え込んでたらきっとぐしゃぐしゃになっちゃうし、それならいっそ、思い切り甘えたい。かな?
A
おお…
B
模範解答キターーーー!!
C
さすが猛禽類の女王…。
A
え? 猛禽類って? ダメってこと、今の?
B
かーーーーーっ、これだから男って奴は!
C
あんた、いまので結構グラついたでしょ?
A
ええまあこんな嫁が欲しいってくらいには。
D
私ゲテモノは食べないよ~。
A
どういう意味だ! 俺じゃ不満なのか!
B
アイタタタタ、こりゃ重症だ!
C
よく聞かないとダメよ。あくまでも「大切な人達と」であって、特定の誰かではない。
A
それは家族とかって意味じゃないのかよ?
C
甘い! 本当に家族に甘えたいって意味の発言ならば瞳を潤わせながら「思い切り甘えたい…。」なんて言うと思う? 男を落とす常套句でしょ!
B
文末に「…かな。」って上目遣い入れる所がポイントな。
A
そんな馬鹿な…!?
C
相手は猛禽の女王、その程度の言葉遊びは朝飯前よ。
A
世の男達はそうやってホイホイ喰われていく哀れなマウスだってのか…?
D
女の子はいつだって沢山の人にお姫様扱いしてもらいたいんだよ~。それに、私が食べに行くんじゃなくて、マウスの方から勝手に食べられに来てるんだし~。
A
コノヒトコワイヨ!
B
目が覚めたようだな。
A
…っていうかさ、なんで誰からも「恋人と一緒にいたい」的な発言が出ない訳?
B
なんでってなんでだよ? 一応
C
いたくない訳じゃないけど、死ぬからって突然今まで以上に好きになるって事はなさそう…かな。だったらやっぱり彼と会うのもいつも通りでいいかな。
D
私はいっぱい(
B
お前はもういい。
A
畜生…、こんな女共の為に俺達は必死になっていたってのか…! 特に猛禽類に喰われた友よ、済まない…!
B
そう言うアンタはどうなんだよ? さっきから否定ばっかりしててさ。
A
お前らの答えを聞いててハッキリした。
C
何が?
A
こう…俺が求めている答えとはなんか違う…。その「なんか」が何なのか。
D
それで?
A
お前らの答えには切羽詰まった感じが無いんだよ。設定時間に余裕があるっていうか、つまりは刹那?
B
日本語で話せよ。
C
日本語だよ!?
A
もっとこう、ぜんっぜん制限時間が無い場合? 例えば「あと10秒で死にます!」みたいな。そこまで極限だったら今みたいな事出来ないだろ。
B
はあ? ばっかじゃねえの。それこそ考えるだけ無駄じゃねえか。
C
さすがにそんな事態はなかなか起こらないと思うよ。
D
暇人は暇なだけあって考える事が違うね~。
A
さらっとひどい事言われた!
B
だったらお前にはその「後悔しない選択」ってのが出来るのかよ?
A
当然だろ。俺を誰だと思ってやがる!
D
万年恋人日照りの
A
それマジで傷つくからやめてもらえませんか…?
C
めんどくさ!
B
で、どうなんだよ? はいアナタはあと10秒で死んでしまいます! スタート!
A
ウーロン茶が…腹いっぱい…飲みたい。
三人
安ッ!!
B
なんだよそのクオリティーの低さは!
A
10秒で出来る事なんてそれくらいだろうが!
B
じゃあどうやって調達するんですかー? あー?
A
馬鹿め、俺のバッグの中には常にペットボトルのウーロンが3本入ってるんだよ!
C
そんなんだから彼女になりたいって人がいないのよ!
A
あんだと! ウーロンを馬鹿にすんなよ、俺はこれでご飯3杯はいける!
C
気色悪い!
A
略さずに言うなあああ!
・三人、唸り声をあげて膠着状態。
D
馬鹿馬鹿しいなあ。もうテレビでも見よう~。
・SE (テレビの電源ON)
・SE (地鳴りとレポの台詞)
レポ
『た、大変です! 御覧下さい! 突如上空に出現した巨大隕石がもう目前まで迫って来ております! 日本はもう終わりです! これは生放送です! 実際の映像です! 隕石の地表到着まで…あと10、9、8、7、6、5、4、3、2、1…』
◇レポの台詞 (録音したもの)の間のA~Dの動き
↓
・四人、一瞬あっけにとられて放送を見る。
・カウントダウンが始まった瞬間、BCDはAの背後にあるAのバッグから烏龍茶を奪い取る。
・やっとそれに気付いたAはうろたえる。
・三人、同タイミングで一気飲み。
・レポの台詞の「1…」でSE、C・O。【※2】
・そしてAの台詞。
【※2】カットアウト…音響の類を一気に無音にする演出
A
それ俺のウーロン茶あああああああ!!!
(終。何もかも。)
if ~世界が終わる前に~ degirock @degirock
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