第3話、『 中点 』、その歴史

 実際、『 本物の中点 』は、現在では、確認出来るのはまれです。

 理由は、先の章で触れさせて頂いた通り、校正時点で『 三点リーダー 』に変ってしまっているからです。

 明治期か、初期の大正時代の、古い単行本を探す以外、手立ては無いでしょう。


 意外と、新聞には、戦後辺りの時代まで『 中点 』が確認出来ます。

 これは、保存を目的とした出版物とは、明らかに違った存在だった為、印刷技術的にあった写植の『 粗さ 』が影響しているのではないか、と推察されます。

 ニュース原稿では無く、短編的な連続小説( 大衆小説 )等の、読み物欄に見い出す事が出来、近代まで変革される事無く、慣習として存続されています。


 では、実際に、純文学の名作の中から『 三点リーダー 』の存在を確認し、『 中点 』の痕跡を探してみる事にしましょう。



 ・石川啄木『 一握の砂』(1910年)

  明治ですからね・・・ さすがに英文タイプライターも、一般的には、

  まだ無かった時代です。

  更には、石川啄木の場合、小説ではなく『 歌集 』と評価出来ますので、

  少々、的外れかな? と。

  

  しかし、『 悲しき玩具 』(1912年)には、一転して『 ――― 』が

  見受けられます。 これは、いわゆる中点の初期原型かと、私的には

  推察させて頂く次第です。


 ・夏目漱石『 こころ 』(1914年)

  わずかですが、中点が確認出来ます。 後半、敬愛する先生の遺書が延々と

  ありますが、その部分には、どうも無いようですね。

  まあ、詩的に書く『 遺書 』も、おかしなものです。 無くて、当たり前

  なのかもしれません。


 ・井伏鱒二『 本日休診 』(1945年)

  中点と『 ――― 』を併用していますね。

  『 遥拝隊長 』(1950年)にも、何か所か見受けられます。

  石川啄木のように『 ――― 』を用いている箇所も多いようです。


 ・太宰治『 人間失格 』(1948年)

  日本純文学の代表的作品ですが、やはり確認出来ます。

  『 斜陽 』(1947年)にも、箇所は少ないですが、会話文・状況描写、

  共に存在しています。


 ・遠藤周作『 沈黙 』(1966年)

  ぐっと時代は近代になりますが、抒情的な会話文で多々、見受けられ

  ます。


 その他にも著名な作家はいますし、参考なる作品も多いのですが、キリがありません。

 編集・校正により、『 三点リーダー 』に変換されてはいますが、幾多の文人たちは、描写・表現の手段として、小説の胎動期から『 中点 』を使用して来たのは、明らかなる事実です。


 あと、『 三点リーダーは、2つ繋げる 』と言うのも、一般的であるだけです。

 昭和初期の単行本小説には、『 … 』のみで使用されている作品を見聞した記憶がありますが、最近は上記の通り、さもありきの『 常識 』が先行し、慣習となっているようです。



 では、本懐と参りましょうか・・・



 この『 中点 』に、賛同して頂ける方を求めます。


 私は今後、エッセイや詩・純文学に近い作品を創作するにあたり、あえて『 中点 』を使用致します。 掲載済みの拙作についても、先記の作品以外、『 三点リーダー 』への換装は行いません。

 理由は先記の通り、『 中点 』には、遥かなる以前から、創作における描写の一環としての認知があったからです。 私は、その歴史的経緯を尊びたいと思います。

 この事に賛同して頂ける方を望み、賛同の証として、非営利グループを結成致します・・・


 名付けて『 中点同盟 』。


 賛同して頂いた『 同志 』の方々におかれましては、その模倣を迫るつもりはありません。 『 中点 』を使用する創作の主旨を理解して頂き、その存在の意義、創作手段としての認知をして頂きたいだけなのです。


 賛同の方法は、★を1つ、入れて下さい。 2つでも3つでも構いませんが、単なる『 応援 』を頂く場合は、★は、入れないで下さい。 レビューを、そのまま『 同盟会員名簿 』としたいからです。


 『 中点同盟 』に賛同頂き、会員となられた方々へは、何の強制も致しません。執筆される作品にあっても、あえて『 中点 』を使用して頂かなくても結構です。

 ただ・・ もし『 チャレンジャー 』的に、『 中点 』を使用した作品を執筆される場合は、本編の1ページ目にありますように『 中点同盟 参画作品 』と入れて頂くと幸いです。

 初めて読まれた方も「 ん? なにコレ・・? 」と気付かれる事と思いますので。


 ・・まあ、コアな集まりになるかと。

 ★は10個以下。 賛同して頂く方も、せいぜい5~6人でしょうね。

 でも、それはそれで良し、としたいと思います。 この短い創作論を発表した主旨は、『 中点 』の周知にあるのですから。

 創作を始めたばかりの、若い世代の方々への、『 余計なコメント 』と思って頂いても構いません。 単なる『 応援 』でも頂ければ、私としては嬉しく思います・・・


 『 中点 』は、私が、個人的なこだわりにて使用して来たものです。

 まあ、同じように創作に使用して来られた方もいらっしゃるかもしれませんが、それは、ほんのごくわずかな人数でしょう。

 従って本編は、創作論宜しく、『 適度なる 』ボリュームは想定しておりません。

 これにて完了とさせて頂きます。


 ・・しかし、創作している中で、お伝えしたい『 創作技術 』や、その歴史的背景に関わるお話しなどが、次々と沸き起こって参りました。


 ・・・また、余計なコトを書くような予感が・・・


 それは、この『 中点同盟 』続編にて発表させて頂く事と致します。

 『 中点同盟 エピソード1 [ 縦書きの旅 ] 』とか・・・?

 掲載予定は、今の所、未定ですので悪しからず。



 特異な歴史に晒された『 中点 』に、栄光あれ・・・!



                          中点同盟/完


              夏川 俊

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『 中点同盟 』 夏川 俊 @natukawa

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