第7話 魔導武闘家ラゴウ

 決勝戦は全力で戦える計らいで、特別に師匠の強力な魔力結界が闘技場に張られて行われた。


 俺と相手はにらみあう。


「クク…フハハーこの時を待っていた! 聞け人間達よ! 我が名は『氷のシュハライ』魔王の七幹部のうちの一人よ」


 そう言うと、あっという間に氷の鎧で覆われている黒羽を生やした魔族に変化していった!?


「今日は近々復活されるであろう魔王様の祝杯代わりにお前達を血祭に上げにきたのだ!」

「何だと?」


 驚く師匠と俺。


「くく、まずはこの町最強のお前を倒してから、この町を破壊しつくす予定だっ」

「キャー!」


 逃げ惑う人で観客席は大混乱だ。


 くそ、ヒビ割れた剣なんか使ってる場合じゃないよな。


ガシャン…

 俺は剣を捨て、


「馬鹿がマフラーで俺が倒せるかっ」


「こおおっ!」


 俺は気を込め右手のマフラーに集中させる。

 すると


「なっ何?」

「気を張り巡らせるとこんな技も使える、ドラゴンの体毛でできた剛柔一体ごうじゅういったいの最強の武器の完成だ! いくぞ」


キィン、ガキィン!


 何回かシュハライと切りあい、奴の鎧は正直ドラゴンの鱗より硬いと感じた。今の所、スピード負けはしていないが、持久戦になると負けるイメージが強いので奥義による短期決戦が望ましいだろう。


 なので、俺の先祖が魔族を倒した時に編み出した技『魔修羅流乱舞拳ましゅらりゅうらんぶけん』で倒すことにした。


 この奥義は鬼神である魔修羅の如く、気を込めた拳を全身の急所に叩きこむ技だ。いくら外側が硬くても、内臓までは鍛えられまい。


 正直、急所は知らなかったが、切りあいでシュハライが守っていた部位がそれに該当するのは分かっている。


 俺は隙を見てシュハライの両腕と羽にマフラーを巻き付け、縛ることに成功した。


「ぐうっ」


 呻くシュハライ。


「今だ、『魔修羅流乱舞拳』っ」

「ぐ、ぐはっ」


ドサッ…

 倒れるシュハライ。


 しかし、なんと立ち上がってきた!?


「く、くく人間にしてはなかなか…、だが俺も進化してんだよっ。はあああっー」


 あっという間に傷口はふさがっていく。


「そ、それは『魔修羅流煉気ましゅらりゅうれんき』? それをどこでっ?」


 シュハライは観客席の真ん中を指さした。


 そこには酔っぱらって寝ている俺の親父がいた。


「クソ親父っ教える相手を考えろよ? 最近収入が増えたとか言ってたのはそれかあああ!」


 切れた俺は頭の回転も切れ、魔族系の弱点属性である聖なる気を練り上げる。


 こうなったら奥義の二連続で再生する前に倒すしかない。


「『魔修羅流乱舞拳』からの『龍炎氣功破』ーっ!」

「グオアア――――!」


パリーン!


 その威力にシュハライは吹き飛び、師匠の結界を突き破り、寝ていた親父に直撃する。


 俺は怒りを込めてこう言った。



 起き上がった親父はヨロヨロしながらこう言った。


「あ、


「この馬鹿っ、何すんのよ!」


ドボォ!


「ゴホッ…」


 俺はレジェから祝いのキスでなく、痛いボディブローを食らい倒れた。

 どおやらのようだ。



 師匠は両手をクロスさせ、この一件は静かに幕を閉じた。

 

   ♢


数時間後、冒険ギルド長室


「どおじゃった? 元魔王幹部のシュハライ」

「はは、私は現在貴方の弟子ですよ? ラゴウは強かったですね、昔の貴方よりも」


「そうか、間に合いそうじゃな儂の『魔王討伐計画』は」

「ですね、ギリウス師匠」


 後日、全世界に魔王が近々復活するむねと魔王の幹部が倒された情報が冒険者ギルドから広まっていく。


 幹部を倒した名と職業は…







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最強剣士ラゴウ! と呼ばれたい… こんろんかずお @hiisan0624

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