第6話 絶望から希望へ

何もしねぇならこっちから行くぞと、敵は襲いかかってきた。

 悩むことに集中して、手が出せないでいるアルド達は、ただ避けることしか出来なかった。


 ふと、アルドの腰に挿していたいた大剣”オーガベイン”が振動した。 


「な、なんだ?どうしたんだ?オーガベイン」


 ”フフフ、面白いではないか。人や魔獣、合成人間ならざる者が相手になるとは。我も参戦しようぞ!”


「手伝ってくれるのか?」


 ”いいだろう。我の力を最大限に解放しよう。いくらでも我を使うがよい。”


「恩に着るよ!オーガベイン!」


 アルドの叫びに気づき、ロキドとサイラスが後ろを振り向いた。


「おい、アルド、まさかオーガベインの力を借りる気か?」


「ああ、俺はやる。皆、技を繰り出して、奴らの注意を惹き付けてくれ!」


 ロキドやサイラスは、最初戸惑っていたが、アルドの真剣さに負け、すぐに前方を向いた。


「よし、分かった!皆全力で戦うぞ!」


「行くでござる。アルド!最後は頼んだでござる。」


 ロゼッタもイルルゥも自らの武器を取り出し、調子を合わせた。


「では、さっそくアルドさんの言う通りにしますか。」


「私もお仕事しちゃうよ~。」


 セティーもレトロ、クロック、マカロンに呼び掛けた。


「全機戦闘準備だ!」


「また、爆発するのやだけど、頑張るよー」


「セティー君のためなら頑張っちゃう☆」


 ごちゃごちゃうるせぇと合成人間と魔獣騎士が巨大な斧を振り上げ襲ってきた。

 そこをまず、ロゼッタとイルルゥが、それぞれ火属性の魔法プロセキュートとハーベストブリーズを出し、敵の体勢を崩した。


「危ないなーもー」


「全くですよねーイルルゥさん。会話してる最中に話しかけるのはよくありませんよ。」


 二人の攻撃を見たロキドとサイラスは、死神と聖職者が二人組むと最強だなと少し恐れた。


「グルームスラスト!レトロ頼んだ!」


「行くよー。」ドガァァン!


「ひゃははは!どこ狙ってるんだよ。」


「そちらこそどこを見ているのでござるか?円空自在流・蒼波!」バシュッ!


 セティーとサイラスは、技を出しながら襲いかかる大勢の敵の後方に移動した。

 後方には、大司教と補佐二人がいた。信者達は、その後ろで傍観している。


「二人だけで、私と戦うつもりですか?」ゴオオオ!


 大司教が炎を出してきた。

 しかし、サイラスが水属性の技で防ぐ。


「貴様の相手は、拙者でござる。セティーこいつの攻撃は、拙者が防ぐでござる。」


「OK!サイラス、きちん防いでくれよ。」


 私の攻撃を防ぐ?こいつら何をやってるんだ?と大司教は考えた。


 攻撃が敵に当たると、向こうは霧になってしまうため、オーガベインで、強大な力を短時間に何回も出す必要がある。

 ただ、敵が多すぎるため、なるべく一ヶ所に集まった所でオーがベインの技を出した方が良い。

 そこで、技を出し、敵をおびき寄せながら、誘導することになる。

 

 口で言うのは簡単だが、実際にやるのはかなり難しい。

 しかし、アルド達は、驚くべき連携プレーを見せた。

 前方はアルドとロキド、横はイルルゥとロゼッタ、そして、後方はサイラスとセティーという位置で、敵を囲んだのである。

 ただ、敵を囲んでいる間に、後方にいる大司教が攻撃してくる場合もないとはいえないため、サイラスが大司教の攻撃を防ぎ、セティーのポッドである、レトロ、クロック、マカロンがサポートする形になっている。

 

 敵がある程度集まった時だった。

 ロキドが合図を送った。


(アルド!今だ!)


(よし!行くぞ!)


 アルドは、オーがベインを抜いた。

 抜かれた大剣は、所々、青色から赤色へ色彩が変化している。

 その色彩から炎もしくは波を象っているように見えた。

 

 大剣は、アルドの掛け声とともに一ヶ所に集まった敵に振り下ろされ、何度も連続で斬られた。反撃する暇もなかった。

 そして、阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえ、雲散霧消した。


「ここまでですか…。」 


 大司教は前に首を垂れ、降参だという形を見せた.


「次はお前だ!」


「アルド待つでござる!」

 

「アルドさん!」


「アルド!」


 アルドは、皆が止めるのも聞かずに、大司教に突進し、剣を振り下ろそうとした。

 その寸前、大司教に斬りかかる直前に、補佐の一人が前に立ちはだかった。

 あの老齢の魔獣である。


「お、お前は…。」


「お待ちください!私たちはもう何もいたしません。」


「何を今さら…、そこをどけ!」


「アルド、落ち着け!」


「これが落ち着いてなんかいられるか、ロキド!カトイの親父さんは、こいつのせいで亡くなったんだ!もう…、戻って来ないんだ…。」


 怒りで我を忘れていたアルドだが、補佐のとっさの行動とロキドの声で、次第に落ち着きを取り戻した。

 落ち着いてくると、カトイの父親が亡くなった凄惨な光景を思い出してしまい、また涙が出てきた。

 

 「うっ!」


 その時、大司教は急にうなり声を挙げ、その場にうずくまった。

 どうなさいましたかと、補佐は大司教を心配した。


「やっと来た…ようだな。遅かったな…。」


 大司教の体が薄くなっていくのが分かる。

 おそらく、限界が来ており、消える段階なのだろう。


「アルドさん…、私はもうじき死にま…す。だ、誰…にも気にされず…、消えていく。こ、これ…で満足でしょう…。」


「何が満足なんだ…。あんたがどれほど多くの人や魔獣の人生を狂わせたのか、自覚してるのか!」


「別に…許してもらおうなどと、思って…いませんよ。」


「アルド!もうそれくらいにしろ!」


 ロキドがアルドに走って近づき、左手で制した。

 いくら相手が憎くとも、目の前で苦しんでいる奴を痛めつけることは、この男と同じく残虐非道なのではないか。

 アルドは、そう感じ大剣を元の鞘に戻した。

 そして、アルドはあることに気づき、大司教に質問した。


「なあ、確認したいことがあるんだけど、あんた、もしかして、誰かに自分の苦しみを気づいて欲しかったんじゃないか?」


「何のこと…ですか…。」


「あんたが自分の境遇を話している時、あんたの魂胆が見えなかったんだけど、言ってる内容に嘘はないと思ったんだよ。そういう人って、外見は笑っているようだけど、内面はつらい感情ではち切れそうってこともあるからさ。」


 アルドは、今まで会ってきた仲間達のことを思い出していた。


「わざわざ、こんな足跡が残るような証拠を残して、俺たちをこの時代まで誘導したのは、そういうことか…。回りくどいことをしやがって。だが、あんたはやりすぎだ。」


 ロキドは、腕組みをして呆れていた。

大司教は、苦痛と憎しみで顔がゆがんでおり、言動が途切れ途切れである。


「私と…お、同じような境遇を持つ者を…少しでも多く集め…、私の思いに共感させた後…、皆で死ぬ。そうすれば私の心も晴れると思ったのです…。仲間が既にいる貴方たちには分りかねるでしょうが…。」


 普通に考えればとんでもない理由である。

 だが、この男の境遇のことを思うと、気の毒だともいえなくもない。


「確かに、そういう辛い気持ちは当人しか分からないものだけど、自分の幸せを獲得するために他人の運命を狂わすことでは、本当の幸せを手に入れることはできない!」


「もっと…、早くから…、貴方に…お、お会いしていたら、私の考えも変わっていたでしょうに。貴方…達のように真っ直ぐな方と出会いたかった…。」


 男はアルド達に祈りを捧げるかのように見上げた。

 それに対し、補佐二人は大司教を憐れんで、しゃがみ込み大司教の肩に手をやった。


「大司教様…。どうか孤独だと感じないでください。貴方がこの世からいなくなるというのなら、私も後を追います。」


「私も同じく付いていきます。」


「ああ…、そ、そうでしたね…。貴方達は、既に私…の仲間でしたよね。そうでしたね…。」


「補佐のお二人にも何か辛い過去があったのでござるか?」


 サイラスが補佐二人に聞くと、老齢の魔獣と若い女性は、大司教を支えながら頷いた。


「はい、私もご覧の通り、魔獣の姿でして…、多くの人間から迫害を受けてきた身なのでございます。このままただ死んでしまうのは惜しいと思っていた時に、大司教に出会ったのでございます。」


「私も、大司教と同じく幼いころに両親を亡くし、一人で生きていかねばなりませんでした。その後、とある商人に拾われ、こき使われながらもなんとか生活していました。その時に、私は大司教に出会いました。」


「気にかけてくれた奴がそこにいる大司教様しかいなかったという訳か…。」


 ロキドは深くため息をついた。

 

 ある程度、楽になったのだろうか。

 大司教はゆっくりと立ち、信者の方を向いて、頭を下げた。



「皆…さん、今…までつい…て来てくれた…ことに感謝いたします。皆さんも…聞いてのと…通り、わ、私は許されざるべ…き罪を…犯して…しまいました。私は大司教と呼べ…る者では…ありません。」


 自分が負けだと認めると、大司教は人喰い沼や月影の森での態度と全く異なる態度を見せた。

 その態度に信者たちは、本音を言ってもいいのかどうか迷っていたが、信者の中の一人が思っていたことを話し始めた。


「確かに、私たちは、あなたのやったことを許せない。貴方のことは、法の下に処罰されるべきなんです。永遠というのは噓だったのだから。でも…。」


 その信者の口から出てくる次の言葉は、意外なものだった。


「全部が悪かったわけではありません。」


 一人が話し始めると、他の信者も話し始めた。


「俺たち、今まで死にそうな体だったからよ。少しでも自由に体を動かすことが出来るようになったんで、感謝はしてるんだぜ。」


「我々魔獣も、人間や合成人間といった価値観の異なる方たちと付き合う機会はありませんでしたので、見る世界が変わった感じがして、新鮮でした。」


 絶望していた信者が大半かと思っていたが、感謝している信者も多くいたのである。


「皆…さん、ありがとうございます。そのような…言葉が返ってくるとは思いもしませんでした…。ですが、罪は償わなくては…なりません。」


「もうすぐ、FGPDの捜査官もここに駆けつけてくる。感傷しているところ悪いが、お前には既に逮捕状が出ている。」


「逮捕…されたとし…ても、もうじき私は消えて…なくなります。せ、せめて…、さ、最後に…外の様子を…見てもよ、よろしいですか…?」


 本来なら連行されるべき人物だが、セティーも思うところがあったのだろう。


 ただ、「分かった。」と、一言述べた。


 アルド達は、工業都市廃墟から下の汚染された大地が見える展望台に移動した。

空は既に夕日で赤く染まっていた。


「ああ…、美し…い。このよ…うな景色を亡くなった…両親と見…たかった。ですが…、今は皆さん…がいま…すので、心…残りはありません。」


男は夕焼けを背にして、アルド達と信者の方を向きもう一度一礼した。


「私…は、もう…すぐ消え…ます。アルド…さん、カト…イのお、お…父様には申し訳ないことをし、し…ました。本当は、自分…で謝るべ…きなので…すが、せめてもの罪滅ぼ…しの代わり…として、消え…る前にここか…ら身を投…げます。」


「え?」


「本当…に申し訳…ありませんでした。さようなら…。皆さん。」


 生に執着する、皆を死に導く、そんなことをせずとも、最初からこうすればよかったのかもしれないと大司教は、空中に足を一歩踏み出した。

 

「大司教様!」


周りの信者の止める声を聞かずに、大司教は汚染腐食した大地へと落ちていく。

 大司教の体は、汚染されていくだろう。

 たとえ、霧となって助かったとしても、この高さでは、上空まで登って来ることは無理だ。


「馬鹿野郎!そんなにあっさりと死んだら逃げてることと同じじゃねえか!」


 ロキドの大声も虚しく、アルド達はしばらく大司教が落ちていった大地を見下ろしていた。

 

 ***


 その後の出来事は、流れるようにあっという間であった。

 教団内の信者は、全員身元が確認され、”回帰命”の黒幕について捜査していたセティーは、司政官に事件の真実を伝えるため未来に残った。

 偽装IDを作った上層部に関しては、お咎めなしであった。

 おそらく、上層部の人間がもみ消したのだ。


 信者たちは、全員教団に加担したということで、各時代で、逮捕されたが、一部親族がいる者については、仮釈放という形で、親族と過ごすようになった。

 元の体に戻ることが出来ず、悲しみに暮れる者も少なくなかったため、消えていなくなってしまうまでの間、親族と過ごさせたほうが良いという慈悲から来たものだった。

 あの補佐二人も大司教が居なくなってから、この世に長くは留まらなかった。


 ちなみに、ロゼッタがロキドとサイラスが負傷した事実をどのように知ったのかと言うと、ほとんどが宿屋のお姉さんのおかげであった。

 カトイの母親と宿屋のお姉さんは友達だったらしく、カトイの家に未来の医者を連れてきた時、お姉さんが母親の様子を見に来ていたのだという。

 そして、宿屋に蛙の姿をした方が休んでおり、付き添いの方が月影の森に行くという話を耳にしたとお姉さんから聞き、直ぐに月影の森に向かったという。

 以上が次元戦艦内でロゼッタから聞いた内容だった。


「時空の穴の話を聞いて、大司教は未来に行かないわけがないと思ました。なので、お医者様を連れてくるついでに、向こうの様子も見てきたのですよ。」


「そして、信者に聞いて工業都市廃墟にある罠を解除したってことか?」


「そうですよ。」


「じゃあ、ロキドとサイラスが負傷したことも回避出来たんじゃないのか?」


「無茶言わないでください!」


 ロゼッタは腰に手を当て、カンッと足踏みを鳴らした。

 怒ったロゼッタに、アルドは怯んでしまった。


「次元戦艦で移動して、何とかあの大司教の筋書きを少しでも変えるだけでも容易でなかったんですよ。」


「そ、そうか。でも、今回はありがとなロゼッタ。」


 ***


 カトイに事の真相を伝えるため、アルド達はパルシファル王朝時代に戻ってきた。

 今までの出来事など何事もなかったかと感じるほど、アクトゥールは平穏だった。


「そうだったんですか…。」


 アルド達は、カトイにそれ以上のことは言えなかった。

 他の信者は、戻ってきている。なのに、自分の父親は戻って来ない。

 なんともいたたまれなかった。


「あの人は、もう戻ってこないんですね。私のせいでこんなことになるなんて…。」


「違う!母さんは、な…にも…、わる…くない!」


 カトイは、自分の顔を母親に見られないように、顔を背けた。


「何だよっ!くそっ!家族を悲しませないって、悲しませてるじゃないか。」


「本当にごめん……。」


「いえ、良いんです。アルドさん達は何も悪くありませんから。」 


「カトイ…。」


 自分が謝罪してもどうにもならない。それはそうだ。

 しかし、カトイの涙を拭う様を見て、アルドはこれで終わらせてしまっていいのだろうかと感じ、イルルゥに思い切って頼んだ。


「なあ、イルルゥ俺からのお願いだ、少しの時間でもいい!煉獄界から、親父さんの魂を呼んできて、カトイと会わせてやってくれないか?」


「会わせるのでござるか?アルド?」


「出来るのなら会わせて欲しい!」


「ん~出来なくはないよ~?」


「本当か!?」


 カトイの父親が亡くなったのはミグランス王朝時代である。

 だが、煉獄界はパルシファル王朝時代の時しか入ったことがないため、時期がずれており、カトイの父親と会えないかもしれないと思うが、死後の世界なので、時代は関係してないため会えるはずである。


 イルルゥがカトイの父親を連れてくるまで、それほど長い時間掛からなかった。

 イルルゥは、連れてきた魂に鎌を振り下ろすと、カトイの父親の姿が現れた。

 

「親父!」


「あなた!」


「すまんな…、いろいろ迷惑かけたな。カムナも、短かったけど、俺と一緒に過ごしてくれてありがとう!こんなことしか言えないがな。駄目な親父で本当にすまなかった。」


「親父そんな理由があったなら最初から俺たちに伝えてくれば済む話じゃないか…。」


「本当のことを言ったら、お前自分が”回帰命”に入るなんて馬鹿な事するだろ絶対に。親ってのはな、子どもを守るためであったら、無理して危険にさらすなんてことは絶対にさせないんだよ。」


 今この場で三人と抱き合いたい。

 でも、こんなにも近くにいるのに触れることが出来ない。

 カトイ、父親、母親は、それが悲しみを募らせた。

 父親は、その悲しみを紛らすために、母親に笑って話しかける。


「カムナ!お前も元気になったな!今まで苦労掛けたな…。もっと一緒に笑って過ごしたかった。」


「そうですね。こんなにも二人に迷惑かけて、何やってるんですか…。」


 話している中、次第に父親の体が光っているのが分かった。


「もう行ってしまうんですか?」


「ああ。そうだな…。」


「もう会えないなんてやだよ!」


「会えない何て悲しいこと言うな。ひょっとしたら、また会えるかもしれないじゃないか。そんな弱気じゃこれから先やっていけないぞ!頑張れよ!」


「親父…。」


「あなた…。」


 父親の体から、光が放たれ、一瞬まぶしくなり目を瞑ってしまった。

 再び目を開けてしまうと、父親の姿は何処にもいなかった。


「親父…。」


「カトイ…。」


 数秒間、カトイと母親は父親が立っていた場所を見ていたが、すぐにアルド達の方に向いた。


「アルドさん、皆さん今回はありがとうございました。」


「本当になんとお礼を言ったらいいか。これで、夫も報われます。」


 二人の顔には、悲しさはなく笑顔に戻っていた。


―――――――――――――――――――


 アルド達はアクトゥールを後にし、ティレン湖道を歩いていた。


「イルルゥ、煉獄界には大司教の魂もいたと思うんだけど…。」

 

「ん~。そっちの魂は見当たらなかったんだよね~。多分、もうすでに亡くなってたけど、煉獄界にいた魂より長く現実世界にいたから、もういなくなっちゃったんだと思う。」


「そうか…。」


 新しい命としてこの世界のどこかで幸せな人生を歩んでいるのかもしれない。

 アルド達は、そう考えることにした。


「なあロゼッタ。」


「何ですか?アルドさん。」


「教団は解散したけど、多くの人や魔獣は、もとの体に戻ってないんだよな。何だか、俺たちがやったことは、正しいことだったのかなって思ってさ。」


 ロゼッタは、歩きながら何処か遠くを見ていた。


「私の持論ですと、本当に正しいことなどないかと思います。」


「本当の正しさなどない…。」


「異端審問官であれ、こちら側が異端だと思っても、相手が異端だと認めなければ、私たちも異端だと言えない。考え方は皆違います。今回、沢山の方が被害に合いました。ですが、不幸だと感じなかった人がいたのも事実です。」


「ああ。じゃあ俺達がやったことは、正しいことでもあり、間違ってもいるということか?」


「そういう可能性もあります。アルドさん……。矛盾しているようで成り立っている。それがこの世の中なのですよ。」


「そ、そうだよな…。」


「さて、しんみりする話はこれくらいにしましょう。」

とロゼッタは、アルド、ロキド、サイラス、イルルゥに言った。


カトイの家族は、離れ離れになっても、家族の絆は永遠につながってるはずだ。

それと同様に、俺たちの絆も永遠につながっている。

俺たちが今一緒にいるこの光景も永遠であってほしい。

そんなことを考えながらアルド達は、火の村ラトルへと向かった。






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永遠の命が幸福か? 枝林 志忠(えだばやし しただ) @Thimimoryo

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