40話:助手ニナ
悠利「今日は医者のニナ先生に来て貰っていますー!ニナさん、よろしくお願いします」
ニナ「はい、よろしくお願いします」
悠利「突然こんなことを頼んでしまってすみません」
ニナ「あら、全然構わないのよ。いつもと違った感じで楽しいわ」
悠利「ニナさん、超優しい……」
ニナ「どうかしたの?」
ニナ「それに、今回は私の仕事に付き合って貰ったときのお話でしょう?」
悠利「はい、僕が健康診断の予約のお手伝いをしたときのお話です」
ニナ「それだったらやっぱり、私が適任じゃないかしら」
悠利「ニナさんが優しすぎる……」
ニナ「さっきから、どうしたの?」
悠利「皆は面倒くさがるんで」
ニナ「あらあら、まるで健康診断を嫌がる皆さんみたいね」
悠利「あははは、ニナさん上手ですねー」
ニナ「笑い事じゃないのよ、ユーリくん。健康診断はちゃんと受けてもらわないと……」
悠利「まぁ、そうですねぇ。悪くなってから医療のお世話になるよりは、悪くなる前に防ぐ方が良いですし」
ニナ「でも本当に、ユーリくんのお陰で助かったわ」
悠利「僕はちょこっと鑑定をしてるだけなので。説得してるのはニナさんですし」
ニナ「あら、その鑑定結果が説得の決め手だもの。ユーリくんのお手柄よ」
悠利「わーい、褒められたー」
ニナ「うふふ」
悠利「健康チェックは得意ですよ!」
ニナ「あら、どうして得意なの?」
悠利「皆が発熱してないかとか、疲労が蓄積してないかとかを定期的にチェックしてるので」
ニナ「……私が言うことではないけれど、多分それ、鑑定の使い方としてはかなり異質よ、ユーリくん」
悠利「だって、皆、怪我はともかく熱とか疲労は隠すんですもん」
悠利「アリーさんも、元が頑丈だからって根を詰めすぎることあるんですよ。だから、僕がチェックするぐらいで丁度良いです」
ニナ「アリーさん、具合でも悪かったんですか?」
悠利「単なる過労でした。アリーさんも色々背負い込んじゃうからなぁ……」
ニナ(原因の一つは貴方じゃないかしら……)
悠利「普段はブルックさんとかレオーネさんが気付いてくれるみたいなんですけどねぇ。今回は僕の方が早かったみたいです」
ニナ「お二人は流石ねぇ……」
悠利「伊達に元パーティーメンバーじゃないってことですねー」
ニナ「レオーネさんは薬師としても優秀な方ですからね」
悠利「ですねー」
悠利「職人さんたちのお家の辺りは時々行くので、僕にもなじみ深い場所です」
ニナ「ブライトさんのところとか?」
悠利「グルガルさんは錬金釜の調整でお世話になりますし、ブライトさんのところは遊びに行きます。他の工房も時々」
ニナ「楽しそうですね」
悠利「気分転換のお出かけなので」
ニナ「グルガルさんは話も聞いてくださるし、予約もすぐに取ってくださる素敵な方です」
悠利「ニナさん、嬢って呼ばれてるんですね」
ニナ「孫みたいな感覚らしいですよ」
悠利「となると、僕はひ孫ぐらいかな……。そりゃひよっこになるか」
ニナ「ひよっこも可愛いですよ」
悠利「えへへ」
悠利「グルガルさん、ブライトさんのことを的確に見抜いてましたよね」
ニナ「同じ職人として接することも多いからかしら」
悠利「僕、ブライトさんは小童なんだなぁって思いました」
ニナ「ユーリくん?」
悠利「アリーさんは坊だったんで、違うのが面白かったです」
ニナ「ユーリくんったら」
悠利「ちなみに、ブライトさんが頑固な理由って?」
ニナ「彼、一人でお仕事をしているから、納期の関係がどうのっていつも言うのよね」
悠利「あー、複数人いる工房だとスケジュールに余裕が出来ますもんね……」
ニナ「あと、目に見えて悪いところがないからじゃないかしら」
悠利「若者あるある」
ニナ「ところでユーリくん、聞いても良いかしら」
悠利「なんでしょうか?」
ニナ「何でブライトさんの鑑定の時は圧が凄いのかしら」
悠利「圧をかけた方が危機感が煽れるかなって」
ニナ「そういうことも考えるのね……?」
悠利「たまに真顔でやったりすると効果抜群なんですよねー」
ニナ「確かに」
ニナ「ユーリくんとルークスくんの二人がかりだと、ブライトさんも素直ですね」
悠利「ルーちゃんはブライトさんが大好きなんですよねー。何せ、お気に入りの王冠を作ってくれた人ですから」
ニナ「お気に入りなんですか?」
悠利「お気に入りですよ。汚れたらすぐ磨くぐらいに」
ニナ「あら可愛い」
ニナ「ところで、この過保護集団にレオーネさんが入っているのはどうしてかしら?クランの皆さんじゃないの?」
悠利「ブライトさんに身近な人ってことじゃないかなーと」
ニナ「確かに、一緒に仕事をされてますしね」
悠利「仲良しだけに、容赦がないらしいです」
ニナ「……目に浮かびますね」
悠利「皆さんが未病の概念を理解してくれたら、お医者さんの仕事も減ると思うんですけどねぇ……」
ニナ「なかなか難しいんですよね」
悠利「でもだからこそ、定期的な健康診断って大事ですよね」
ニナ「えぇ。悪くなる前に見つけることが出来れば、早く治療が出来ますからね」
悠利「大事です」
悠利「……シーラさんって、お父さんに容赦が無いですよね」
ニナ「私の知る限り、息子より娘の方が父親に容赦が無い家庭の方が多いですね」
悠利「あ、そうなんですね」
ニナ「シーラさんの場合は、普段から一緒に仕事をしているのもあるかと思いますけど」
悠利「なるほど、確かにありえますね」
悠利「僕の経験上、前衛系で肉体の頑丈さに自信がある人ほど、健康に自信を持ってるんですよね」
ニナ「とても説得力があるわ、ユーリくん……」
悠利「あと、寝たら回復する若者枠も」
ニナ「説得力しかないわ、ユーリくん……」
悠利「……いつも苦労してるんですね、ニナさん」
ニナ「えぇ……」
悠利「両サイドからお父さんを捕まえる兄妹の構図、仲良し家族って感じですね!」
ニナ「そこで仲良し家族になるの?」
悠利「え?だって、仲が悪かったら接触しないじゃないですか。お父さんを心配して健康診断に放り込もうとする優しい子供の図ですよね?」
ニナ「確かにそうではあるけれど……」
ニナ「でも、最終的に折れさせたのはユーリくんなのよねぇ……」
悠利「え?」
ニナ「皆さん、貴方には妙に甘いのよ」
悠利「何でですかねぇ?」
ニナ「何でかしらねぇ(多分、物凄く子供に見える雰囲気で罪悪感があるんでしょうけど)」
悠利「ニナさん?」
ニナ「何でもないわ」
悠利「と、いうわけで、今回はこんな感じでした!」
ニナ「お手伝いありがとう。またよろしくお願いね」
悠利「任せてくださいー」
ニナ「あと、ユーリくんも無理は禁物よ?」
悠利「あ、それは大丈夫です。僕、強制的に休暇に放り込まれるので」
ニナ「……皆さん、学習したのね……」
悠利「それでは、今回はこの辺で。ニナさんもありがとうございました」
ニナ「いいえ、こちらこそ」
悠利「また縁があったら呼んでも大丈夫ですか?」
ニナ「えぇ、大丈夫よ」
悠利「ありがとうございます!」
(終)
最強の鑑定士コミカライズ実況解説コント 港瀬つかさ @minatose
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。最強の鑑定士コミカライズ実況解説コントの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます