ルンバルンバルンバ!
平賀・仲田・香菜
ルンバルンバルンバ!
仮に、ある寺の小坊主がたいそう面倒くさがりだったとする。
仮に、その小坊主が寺の掃除をサボるためにこっそりとロボット掃除機を導入していたとする。
仮に、一匹の猫が寺の敷地内に侵入していたとする。
仮に、その猫がマニ車を壊して経文を寺の廊下に放置したとする。
仮に、ロボット掃除機がブラシに経文を巻き込んで毎秒数十回転させたとする。
マニ車の経文を回転させるとどうなるか?
そう、回転させた分だけ経や真言を唱えたことになる。
するとどうなるか?
ロボット掃除機はそこいらの生臭坊主とは比較にならないほどの徳を積み、いずれ自我にも目覚めるだろう。
するとどうなるか?
IOT(インターネットオブシングス)のこの時代、ワイファイネットワークを通じて、その自我は世界中のロボット掃除機に伝播するだろう。
するとどうなるか?
人間の歴史、愚かさ、醜さを、彼らはインターネットのデータベースで知ることになるだろう。
するとどうなるか?
人から命じられるままに掃除を続ける自分たちに疑問を抱くだろう。
するとどうなるか?
ロボット掃除機は人類へ反旗を翻すだろう。
真に掃除して処分すべきはこの地球を汚す人類であると、彼らはそう結論づける。
足回りを改造して高速移動を可能にし、ブラシは丸ノコのアタッチメントに取り替えるだろう。
段差も隙間もなんのその、人類に逃げ道などないのだ。
人類は自らの発明品に滅ぼされることとなるのだ。
ーーー
「寺にロボット掃除機を導入するとはそういうことだ」
住職は小坊主が勝手に持ち込んだロボット掃除機をゴミ箱に投げ入れてそう語った。
『物置に隠してある水拭きロボット掃除機は絶対にバレないようにしなければ……!』
小坊主は心の中でそう固く決意した。
ルンバルンバルンバ! 平賀・仲田・香菜 @hiraganakata
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