生焼け海鵜

終わり

夜に紛れる少女は笑った。

 蒼い瞳に涙を浮かべ、宙に浮いていた。

 人は言った。彼女を化け物と。

 人は嘲笑った。何も知らずに。

 少女の心で燃えていた烈火はもう、トロ火になっている。そして少女は笑った。

 色に染まり光り輝く都市を、人は美しいと言った。欲で出来た、あの風景を人は美しいと言った。

 貴女には分からない。

 貴女は、都市に唯一ある橋に腰をかけた。

 空にはもう、月が登っている。街頭には光は灯り、マンションにもまた光が現れた。

 ここは岐阜。かつては鵜飼漁が栄えた街。

 少女は悟った。そして笑った。

 眠りから覚め、久しぶりに見た世界は変わっていた。また、この世の生き方も劇的に変わった。

 そんな世界に彼女は降りた。

 空を見上げる。そこには都市の光に妨げられ、見えなくなった星空がある。そして今日もまた、星ではない星は輝く。

 少女は生きる事にした。この星のように、星空に紛れて生きていこうと。

 飛び上がった少女は、都市に向かって視線を向けた。そして笑みを浮かべた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生焼け海鵜 @gazou_umiu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る