03-07. ここがゼロのスタートライン
高度3000m。
数字だけみれば高く感じるが、距離3kmと書けば短い気がする。
それでも
上昇を終えて、自由落下に入ったアルス・ノヴァが地上を見る。
視界いっぱいに青い水の惑星が広がった。
横に顔を向ければ見渡す限りの水平線。
この空だ。
自分はこの広大なレース場を飛んでいたんだ。
ああ、AFで空を飛ぶのは楽しいな。
ラフィーはからっぽの頭で、そう思った。
着陸合流地点、海抜0m。
先に降りていた美波彩音の横にラフィーのアルス・ノヴァが着地した。
彩音は少し
「優勝おめでとう。でも、次は負けないわよ」
驚いた。
レース前にこちらから挨拶した時には驚き引いたのに、今度は向こうから祝いの言葉を出したからだ。
ここは素直に受け取ろう。
「ありがとう。次だってわたしが勝ってみせるわ」
少しだけ顔を見合わせ、2人で笑い合う。
だって、一緒に空を飛んだ仲なのだ。
これぐらいのじゃれ合いは当然だ。
リバースダイバーのライブステージ。
優勝者の特典であるウィニングライブの会場だ。
観客たちが、今か今かと始まるのを待ちわびる。
ゆっくりと登壇したのは、レーシングスーツを着たままのラフィーだった。
観客席がざわめく。
一体どうしたんだ。
ライブドレスを持っていないのか?
曲が流れ出した時、誰じゃがあっと声を出した。
再びざわめく会場。
構わずに歌い出すラフィー。
『きっと叶うよ。未来を見つめて。
泣き出しそうな時も、一緒にいるよ』
これはだれもが知っている歌。
初代『
ひとまず状態にチーム・マッハマンのクルーたちは安堵する。
『怖がらないで、ゆっくりと
前を向いて、足を出して、ほら』
歌詞の継ぎ目で、ラフィーが腕を広げて一回転。
レーシングスーツの上からホロドレスが被さり衣装替えする。
風の妖精から、歌の妖精へ。
ちょっとした演出に、おぉと客席から感嘆が漏れた。
『夢の続きは、どこにでもある。
優しさに、嬉しさに、涙は散る』
ここが、このステージが、ラフィーにとってようやく
今はまだ『
亡き曾祖母との果たせない約束。譲れない願いを叶えるのだと。
とても言える場所に立っていない。
でもいつか『天空の乙女』になろうと、そっと心に決意を秘めた。
ライブの最後は万雷の拍手で閉じられた。
Act03. Fin
次回予告
Act.04 絢爛舞踏会異常あり
ついに始まった『
ラフィーはヴィクトリア王女たちから招待券が送られてきたが、自前でチケットを用意し観戦することにした。
風の乙女たちによる、戦い、闘い、
二つ名持ちばかりではなく様々なエアリエルが戦い合う。
連戦、激戦、超烈戦!
涙、悔しさ、喜び、怒り、全ての感情と技巧が交錯する大空の戦場。
果たして、勝利の栄冠は誰の手に渡るのか!
エリアル ザ スカイ フォーミュラ 石狩晴海 @akihato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます