『秀吉豊臣のすべらない話』すべると打ち首獄門やて。

68.おもんないオマケの話。

　　　　　　・・・・聞こえますか・・・聞こえますか・・・

　私は今、あなたの脳内に直接語りかけている。天界より直接語りかけている。天界より直接脳内に語りかける無礼を、どうかお許しいただきたい。

　私の名前は、小早川（こばやかわ）景隆（たかかげ）。毛利元就（もうりもとなり）の三男、今は天界にて隠居（いんきょ）を決め込んでいる。

　私が今、あなたの脳内に直接語りかけているのは、戦国時代、そしてその後訪れる、桃山（ももやま）時代、そしてそのまた後に訪れる、ソロリちゃんが全く興味を示さない、日本近代史について説明するためだ。桃山（ももやま）以降の歴史のIFを説明するためだ。

　私の奸計（かんけい）は、どうやら三成（みつなり）殿には大層評価されたらしい。とは言え、結果的には失敗に終わっていると、私は評価している。

　何故か？　私は、ソロリちゃんに二百年以上続くと教えられた江戸時代には権謀（けんぼう）を廻らせたが、ソロリちゃんは、干支（かんし）七度廻る未来より来たのだ。

　本来ならば、干支（かんし）七度廻る未来にまで、権謀（けんぼう）を廻（めぐ）らす必要があった。天下一の知恵もの、長兄、毛利（もうり）隆元（たかもと）なら、そこに抜かりはなかったはずだ。

　私は、迂闊（うかつ）だった。長兄、隆元（たかもと）の奸計、一日一力一心（ひゃくまんいっしん）の威力を軽んじていた。毛利（もうり）方、国衆（くにしゅう）の一日一力一心（ひゃくまんいっしん）を軽んじていた。

　本来、私は、何もしなくてもよかったのだ。江戸時代が二百年以上つづいたその後、本当ならば、一日一力一心（ひゃくまんいっしん）の意思を継ぐ、長州（ちょうしゅう）の志士が、薩摩（さつま）と手を結び、薩長同盟（さっちょうどうめい）により明治維新（めいじいしん）を成し遂げていたのだ。

　だが、結果はどうだ。天下分け目にて、徳川方に着いた外様大名（とざまだいみょう）の意思を継ぐ、下野（しもの）の志士が、薩摩（さつま）と手を結び、薩下同盟（さつしもどうめい）により明治維新（めいじいしん）を成し遂げていたのだ。

　この日本の総理大臣の排出は、下野（しもの）のあった栃木県が９人とダントツだ。対して長州（ちょうしゅう）があった山口県はたったの１人だ。

　本来、私は、何もしなくてよかったのだ、余計なことをしたため、毛利（もうり）の一日一力一心（ひゃくまんいっしん）を桃山（ももやま）時代で立ち消えにしてしまったのだ。

「はぁあああ・・・」

　いや、過ぎた話はよそう。後悔しても時は戻らない。私は、今こそ毛利（もうり）に伝わる乾坤一擲（こんてんいってき）を放たねばならない。

　乾坤一擲（こんてんいってき）にて、この物語のキャッチコピー詐欺（サギ）を回避しなければならない。

　この物語のキャッチコピーは、

【「本当は怖い戦国時代のおとぎ話」に、令和のアイドルが紛れ込みました。】

　だが、ソロリちゃんは『平成の世』から紛れ込んだアイドルだ。このままではキャッチコピー詐欺（サギ）だ。キャッチコピー詐欺（サギ）だけは看過できない。なんとしてでも回避しなければならない。

　私は、キャッチコピー詐欺（サギ）を回避するために、つい今し方、天界に訪れた貴人に頭（こうべ）を垂（た）れた。

　貴人は私にこういった。

「YOU！　デビューしちゃいなよ」

　私は閃いた。私がアイドルになれば良いのだ。私がデビューしちゃえば良いのだ。生まれ変わって、貴人作りし有名な男性アイドル事務所に入り、この私が令和のアイドルになれば良いのだ。

　ここから始まる。私の乾坤一擲（こんてんいってき）は、今、ここから始まろうとしているのだ。

　時間はかかるかもしれない。だが、なんとしても達成しなくてはならない。私は、キャッチコピー詐欺（サギ）を何としてでも回避しなければならない。前世の過ちをなんとしてでも回避しなければならない。

　一度潰えた、毛利（もうり）の一日一力一心（ひゃくまんいっしん）を令和の世に復活させるのだ。

！！

　そうだ！　お国（くに）殿を巻き込もう。私より二ヶ月程前に生まれた、前世ではお国（くに）殿と呼ばれておられた歴史的トップスターを巻き込もう！！

　令和最初の日に男児として転生した、歴史的トップスターを巻き込もう！

　おもしろき、こともなき世を面白く、歴史的トップスターと共に世界に光を照らそう！

　ここから始まる。私の乾坤一擲（こんてんいってき）は、今、ここから始まろうとしているのだ。

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　『「秀吉豊臣のすべらない話」すべると打ち首獄門やて。』

　　「終わるよ・・・！

　　　終わるよ・・・！！

　　　絶っっっっっっ対に、終わるよ・・・！！！」