解答
補佐官である獄卒が、タブレットで処理を行いながら、困ったように笑う。
「八重ぇ。今の人さぁ、当てられた?」
獄卒は人間の情はない。しかし、現在、目の前に映る死因には、同情するところがある。
” 植木鉢を落ちやすい位置に移動し、動物を見ると驚かせる癖のあるA太の前に、エサで猫を誘導。
植木鉢の下に被告が立ったところで声をかけて、植木鉢が落ちるまで足止めをし、事故に見せかけ殺害”
この裁判の判決が、八重の判断に委ねられているとはいえ、正直当てられるとは思えない内容だった。
「さぁな。ただ、実際に運が悪かったんだろう。もし、一緒に通えてたなら、恨みなんて持たれなかったかもしれない」
もし、雨が続けば、諦めてたかもしれない。
「うーん……いまいち学歴? っていうので、怨嗟が積もる理由がわかんなーい!」
「今回は学歴とは違うが……どちらかといえば、ライバルに自分じゃどうしようもない理由で、決定的に負けた」
「刺せばいいじゃん。私はそうしたよ?」
「そうだな。そうだった」
無邪気に首を傾げる彼女に、八重はかつてのことを思い出しては、微笑み、
「後ろで”クモの糸作戦”とか言って這い上がってきてるやつら、叩き落せ」
「はぁい」
真顔で仕事に戻った。
生前裁判 廿楽 亜久 @tudura
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